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【エッセイ】さりげないおしゃれ

さりげないおしゃれ、という言葉になんかもやっとしてしまうのは私だけだろうか。

なぜかというと、さりげないおしゃれ、という言葉を聞くたびに私は、さりげないおしゃれをしているさりげないじぶんにニヤニヤしているオレ、のイメージがぱっと浮かぶからで、あなたそれって全然さりげなくないじゃん、めっちゃじぶん意識してるじゃん、とひとり思ってしまうからである。

さりげないおしゃれと言うからには、「さりげない」の語義および精神に則って、まるで偶然たまさか、じぶんでもまったく気づかないうちにあれれ、おしゃれしちゃいました、といったように振る舞い、ゆえに周りにも気づかれないことが理想であり真髄であり、目指すべきところだと思うのだけれど、そもそも自分自身に対する意識的な行為であって、いわば「じぶんレベル」をちょっぴり上げるために成される「おしゃれ」を「さりげなく」行うことは、水と油を混ぜ合わせるようなたぐいの、決して解けない矛盾を孕んでいるような気がしてならない。

しかるに世の中に目を向ければ、そこには「さりげない目元」やら「さりげないマツエク」やら、「さりげないほにゃらら」といった虚栄心を刺激するフレーズが氾濫している。

さりげないおしゃれって可能なのだろうか。

さりげなくおしゃれをするならまず、おしゃれの下にある自意識を消し去らないといけない。それはすなわち無私の考えであり、禅の境地である。そんな境地で成されたおしゃれ、例えば虚無僧スタイルなどであれば、なるほど、さりげないおしゃれと呼ぶに相応しかろうが(おしゃれなのか?)、たいていのおしゃれは俗っぽい念に後押しされているはずで、そうした煩悩をすっぱり消し去るには、仏門に入るような覚悟と精神的鍛錬が求められるのでなかろうか。

といったことをクリスマスイブの夜に悶々と考えているのはきっと、地球上でも私くらいなものだろう。

ともあれメリークリスマス。

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