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ゲーム屋さんとコモングラウンドと電脳コイル

電脳コイルって作品はどのくらいメジャーなんだろ?コモングラウンドの方はほとんど知られてはいないはず。でもどっちも知らんって人も眺めて行って下さい。きっとワクワクしてくるから。

僕はゲームのリアルタイムレンダリングを〜に転用するとかゲームの分野からはみ出るのが好きだ。むしろ今後はそっちに力を入れて行きたいと思ってるくらい。

それは慣れ親しんだゲームのプレイ体験とは違うだろう。でもやっぱり結局遊び方が広がるだけでゲームの形にはなってくるはず。
だからゲームの枠から出て行くのではなくて枠を広げて行く気持ちで見ている。

■ゲームエンジンが鍵

まず、電脳コイルやコモングラウンドを語る前にゲームエンジンに触れておきたい。実はこれが起点になるからだ。
ゲームエンジンとは、ゲームを開発するのに使われる統合環境。ゲームが作れるアプリケーションと思ってくれればいい。

●ゲームと開発環境の変化

20年くらい前の映像業界でダメなCGは決まってこう言われた。
「ゲームみたい」とか「ゲームムービー」と。
ゲームムービーは当時フルCGだからその例え間違ってるけどね!って今になって思い返すと若干イラッともする。

でも今はどうだろう?
そんなこと言ってた人達もUnrealを使ってる。
日曜朝の特撮番組もUnrealとLEDスクリーン撮影を数年前からやっている。作法と描画手段が少し異なるだけで同じCGってくくりにして良い時代が来た。

●ゲームエンジンの自由化

僕がUnreal Engineを触りだした頃は限られた開発会社でしか触れなかった。Unreal Engine3世代の話しだ。
でも4が出てからは誰もが自由にダウンロードできるようになった。

今のUnrealさん(貼るまでもないか…)

自分の感覚ではラピュタの雲が消えた感じに似ている。それまでは開発者しか知らない雲の中の存在だった。それももう昔の話し。
公開された当時はちょっとジェラシーを感じたけど…
今はそのラピュタの英知を誰もが使えるようになったってことだ。

そこから一気に加速して建築、都市計画、車産業、医療、映像、コミックなど広範囲に渡って活用されるようになってきた。

■そしてやっとコモングラウンド

ちょっと古い動画だが豊田氏ご本人が説明してくれているので掲載。
要は、モノ(フィジカル)と情報(デジタル)を繋ぐ「共通基盤」がコモングラウンド。って要約したらよけいに小難しい。何かいい例えが無いものか…

■例えばルンバ(お掃除ロボット)

お掃除ロボット、最近のは部屋の間取りや掃除ルートを考えたり色々改良されてるらしい。将来的にはWALL-Eみたいに手の生えた賢いロボットに進化して行く想定みたいだ。スケール感を部屋の中くらいにした方が想像しやすい。

1.僕らのいる物理空間

部屋を3Dスキャンして、コモングラウンドの情報に置き換えておく。物理空間は特にいじる必要は無いが、できたら建築図面や建具も含めたCADデータも欲しい。
問題はそれをどうやってデータ化するかだ。

2.AIが認識するデジタル空間

ルンバの頭脳(AI)に特化したデジタル空間があれば話しが早い。デジタル空間の素はコモングラウンドだ。
毎回カメラで空間を把握、現在地の割りだりなんかの計算をしなくてもいい。
3Dの地図が予めあるのと無いのとではだいぶ違うだろう。ルンバに追加で何か指示を出したい場合は、このデジタル空間側に書けばいい。ここを重点的にお願いとか。

3.コモングラウンド(1と2を繋ぐ中間)

基本的には1.の現実空間をスキャンしたデジタルツインに似たもの。
でもそこには視覚的な情報だけで無く、建物の寸法、建具や壁紙の型番、家具や小物の型番、それらの材質に至るまでディテールからは分からない情報を沢山持っている。
さながらマトリックスだ。

視覚情報以上の情報を取り込むことでAIが見るデジタル空間と連動して、ロボットのAIが人間と共存できる基盤を作ろうという試みだ。

これをUnreal Engineに持って来るって考えると途方も無い。だから予めデータが用意された状態が好ましい。
これから作られる予定の都市。万博なんかはスケール的にも実証実験にうってつけなのだ。

■ポケモンGoに感じた残念さ

ポケモンGoが出た時、僕は勝手に電脳コイルを想像してしまってガッカリした記憶がある。ゲームの出来がどうこうではなく、勝手に期待を膨らませてしまったのが悪いのだ。
携帯画面を通してではあるが、やっぱり現実世界の上に地に足の着いた形で登場して欲しかった。

できることなら"Magic Leap"のデモのようにその場に描画されて欲しかった…

■いよいよ電脳コイルできるかも

●電脳コイルとは?

AmazonやNETFLIXで視聴できる。(↑はPrime Videoのリンク)

【舞台設定】
時は202X年、今よりもちょっと未来。子供達の間で“電脳メガネ”が大流行していた。この“電脳メガネ”は、街のどこからでもネットに接続し様々な情報を表示する機能を備えた、子供たちになくてはならないアイテムだ。現代の携帯電話のように普及し、ほぼ全ての子供が持っている。舞台は由緒ある神社仏閣が建ち並ぶ古都でありながら、最新の電脳インフラを擁する地方都市「大黒市」。

Amazon Prime Videoより

この世界には現実の世界とリンクした”電脳空間”が存在する。”電脳メガネ”(MRデバイスみたいなもの)をかけることで、物理世界と電脳空間を重ね合わせて見ることができる。様々な”電脳アイテム”でそこに関与することもできる。SF設定でありながら寺社仏閣や妖怪、都市伝説的な要素も入り混じって懐かしさも感じる一風変わった作品。

物理世界と関係なく電脳空間が存在しているわけではなく、表裏一体という感じだ。「レディ・プレイヤー1」のようにVRの別空間にはなっていない。

ある意味、電脳インフラ

この世界で描かれている”電脳インフラ”にあたるものがコモングラウンドの考え方に近いように思う。

■ゲーム業界の人も興味を持ってほしい

ゲーム以外のコンテンツ産業。映像制作あたりまではゲーム業界の人(自分もだけど)も興味を示してくれる。
だけど一見、エンタメじゃない分野を敬遠しがちな人が多い。そりゃゲーム作りたいって気持ちで業界に飛び込んだのだから気持ちは分かる。

コモングラウンドはインフラの仕事だからコンテンツ屋さんの仕事じゃない。って見るのは勿体ないと思うのだ。だってその先に”電脳コイル”の世界が待っているかもしれないのに。しかも”Unreal Engine”という我々ゲーム屋さんの技術でインフラの世界に関わることができる。そんな機会って滅多にないと思う。

会社でもこの話しをしても興味を持ってくれる人は少ない。

未来のゲーム体験はゲーム機に依存しない。ゲームと呼べるものだけがゲーム体験とは限らない。そんな未来はもう見えてる。
ゲーム会社はもっと広義にゲームを捉えないといつか終わると思う。
遊びを作る仕事なんだからゲームの枠になんかハマってないで。

もっと面白いことやろうぜ…
"ぜ"ってあまり言わないけど今日は言っちゃったぜ。

って一人、ゲーム開発会社で思ったのでした。

■WIRED COMMON GROUND CHALLENGE

↑WIREDがコモングラウンドチャレンジなるものを開催している。
実は知らなかった…

でも今月いっぱい使えるゾ!
興味がある人はこの機会に何か考えてみよう!

~たぶん、つづく~

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