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サッカーと戦争はよく似ている

サッカーワールドカップが2022年11月からカタールで開催されます。

日本代表は今までW杯に6回連続出場という素晴らしい戦績を残していますが、残念ながら参加国中ベスト16までしか進出したことがなく、決して世界の強豪といえる成績は残せていません。

今回日本が戦う予選グループ4チーム中には、優勝経験があり世界の強豪であるドイツとスペインがいます。
日本の予選突破はかなり厳しい状況で、もちろん応援はしていますがかなりの運を期待しなければいけないと思います。

しかし初戦のドイツに対して幸運な勝ち星を得られれば一気に流れが日本に傾く可能性があり、そこが一番の注目です。


ところで、日本のサッカーが世界であまり良い成績を収められないのは、私が思うに、サッカーという競技の特性があまり日本選手の特徴と合わないからではないかと思います。

そもそも日本が世界でよい成績を収めている団体の球技は多くありません。
バレーボール、野球、女子サッカー、女子ソフトボール・・・くらいでしょうか。
日本人は人種的に体格が小さいので、チームスポーツは非常に不利です。

ただ、サッカーは比較的体格差をカバーしやすい競技で、身長が非常に高い北欧、体格と瞬発力を備えたアフリカなどより、比較的小柄なラテン系の人が多い国が非常に強いです。


日本にはないものとは何か?


強豪国と言われる国はサッカーの長い歴史があり競技者も多いというアドバンテージがありますが、日本もJリーグが出来て約30年が経ち、他の国より歴史がなく普及度が低いというわけではありません。

また最近はヨーロッパの強豪チームで活躍する日本人選手が多く、海外勢だけでチームが組めるほど充実してきています。
その意味で、日本人選手のレベルは確実に上がっています。


しかし私は、よく言われる「日本人は犠牲的精神で戦うから強い」というイメージとは異なり、「チームとして戦う」という面での日本の弱さを何度も目にしてきました。

戦力差がそれほどなく個人の局面では勝っているような場合でも勝負弱さが目立ちます。
前回W杯でのベルギー戦、2点差をひっくり返されたのが印象的です。
勝てないのは仕方ないですが引き分けに持ち込むことはできたと思います。

強豪国は、仮に戦力の差があって負けそうでもしぶとく引き分けるし、一瞬のスキをついて僅差で勝つ、という強さがあります。
そしてその違いは、サッカーのルールやコンセプト自体にその理由の一部があるような気がしています。


① ルール無視のぶつかり合い


サッカーは基本的に、(言い方は悪いですが)審判にバレなければOKという精神が貫かれています。

ブラジルのネイマールが盛んに転んだ演技をして顰蹙を買っていたのは有名で、あればさすがにやり過ぎと思いますが、実際は多くの選手がほぼ同じことをしています。

VAR(ビデオによるジャッジの確認)によって悪質な演技は減ったように見えますが、合法な範囲で相手をあざむく、いらつかせる、じゃまをするのは、サッカーでは賞賛される正しい行為です。

日本なら「あんなプレーはふさわしくない」という非難が出るでしょうが・・・


またヨーロッパに行った日本選手が必ず言うのが、「体の当たる激しさが比ではない」ということで、相当な激しいタックルや押し合いも許容されていて、ちょっとした衝突ですぐにファールを取る日本とはまったく違います。
海外サッカーを見ていたら誰でも分かると思います。

これは良し悪しではなく文化の違いで、許される限り全力で激しくぶつかり合うことが望まれる国と、それはやり過ぎと非難されてしまう国では勝負になりません。


② 合理的ではない全力の消耗戦


日本人やアメリカ人は、スポーツに合理性を持ち込みたい人々ではないかと思う時があります。

野球やアメフトのような攻撃と守備が専門の人ごとに分かれる競技が人気で、さらに、プレーが短い時間で区切られて断続的に進むというところも似ています。

これは、同じメンバーで長時間戦いを続けるよりも、各人の得意分野や持久力が保てる時間で分け、得点と失点を明確化し、局面ごとの勝ち負けを判断しやすくした競技が好まれるからだろうと思います。


しかしサッカーはそういった要素分解を好まないスポーツです。

敵味方が常に入り乱れ、選手の大半は一度も交代せず、休憩は1回(暑い時のみ2回追加)、なかなか得点が入らず、試合終盤は全員のパフォーマンスが非常に低下しますが、観客はその中で死力を尽くして最後に勝った方だけを賞賛します。

スポーツが分担制で、チームの勝敗だけでなく個人のパフォーマンスも評価する文化の国は、総力戦が大事で、最後に勝つことを最も評価する文化のスポーツとは相性が良くないと思います。


このように、人々が求めるスポーツの姿は各競技に強く反映されていて、サッカーはまるで国同士の戦争のように見えます。

ヨーロッパが歴史上、大陸内外の異民族も含んだ諸国が常に争って領土を得たり失ったりしていた(負けた国は皆殺しもありうる)ことが、もしかしたらサッカーという競技の勝敗の決め方に反映されているのかも知れません。

日本は外国と戦って、勝ったら相手を征服、負けたら自分たちが消滅という一対一の戦いをしたことがないように思います。
外国に一方的に攻め込むか、自国を侵略から守るかのどちらかです。

そういった歴史と文化の違いは興味深いですが、日本とヨーロッパの観客がサッカーという競技に対して求めるものの大きな違いを考えると、日本がそれを理解して世界に追いつくのはまだ相当先になりそうです。



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