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マンション管理組合の理事長になった話の続き

前回、理事長になってしまった私の体験から、マンションの管理とお金に関する住人の合意の難しさについてお伝えしましたが、これは日本中のどのマンションでも起こり得る問題だと思います。

私がいたマンションは、決して治安が悪いわけでも高齢化で困っているわけでもない平和な物件です。

しかし普段は温和で優しい人々でも、それぞれの家庭が抱えている事情や将来的なライフプランはすべて異なり、特に何らかの不利益を伴う合意形成は非常に難しく、今後さらにそれは加速していく一方だろうと感じました。

そして私はそれをより確信に近づけるようなある「事件」に遭遇しました。


どんな場所でもトラブルは起こりうる


管理会社の担当者からある日、住民内でちょっと困った問題が起きていると相談がありました。

それは、ある階の住人がその隣の部屋から漏れる振動や明かりなどで困っているので、上の方に事情を聴いてほしいというものでした。
管理会社はあくまで部外者なので、管理組合がマンション内の住人の問題に対処することになっています。

私はその部屋の持ち主にそういった苦情が出ているので確認してほしいというメッセージを送りましたが、その部屋は賃貸に出されていて、遠方に住んでいるオーナーさんは今の状況を詳しく知りませんでした。

なので仕方なく、その部屋に今住んでいる人に直接声をかけて確認しようとしましたが、いつ行っても不在または居留守を使われてしまい、まともに話ができないのです。
その段階で異変に気づくべきだった、と今なら理解できます。


そうこうしているうちにその相談者の方から、「何とかできないなら自分が直接乗り込んで文句を言いたい」と切迫した口調で言われ、在宅時間は把握しているから居留守を使われようがいけるはず、という話までされてしまいました。

住人同士の騒動に発展するのはさすがにまずいので、私は理事長の立場で遠方のオーナーさんへ、隣の住人さんが非常に困っているので出来るだけ早く賃貸の方に対し事情を聞いて原因をつかみ対処してください、オーナーとしてその義務がありますよ、と再度メッセージを送りました。

するとさすがにそのオーナーさんも真剣に取り組むと約束してくれました。
その後困っていた住人の方からの相談もなくなり、この問題は何とかフェードアウトできたと思いました。
でも、そんなに甘くはありませんでした。


少し時間が経ったある日、例の賃貸の部屋の方が引越しするらしいという話を聞きました。
そしてその日の夕方くらいでしょうか、駐車場にトラックが来て業者さんが荷物を積み終え走り去った翌日、管理人さんがある異変に気づきました。

マンション設備のいくつかがどうやら人力で破壊されていたようなのです。
(かなり前の話ですが、念のため具体的な説明は省かせていただきます)

しかし管理会社の方と私だけはその部屋をめぐる以前のトラブルを知っていたので、この人力による破壊の原因をすぐに察し、被害届などは出さずにこっそりとこの事件を処理することに決めました。


得られた教訓


この事件のような問題はそうそう起こらないと思いますが、物理的に施設を共有しているマンションでは、戸建て以上に近隣の人との信頼関係が必要な場面が多いかもしれません。

逆に言うと、今回のケースのように住人同士の話さえできないような状態では、ひとたびこじれたら自力での解決は難しく、結局弱い立場の人が泣き寝入りという可能性も十分にあると思います。

さらに問題なのは、こういった実際に起きている問題とそれにより考えられるリスクがマンション購入検討から契約に至る人々にほとんど共有されていない、という現状にあります。


確かに不動産業者にとってこのようなネガティブな情報は販売の妨げにしかなりませんし、すでにマンションに住んでいる人も、自分のマンションの潜在的な評価を落としたくないので積極的に触れる人はまずいません。

しかし「立場のそれぞれ違う大人が高価な資産を共有する」という非常に難しい条件のもと共同住宅の購入契約をするのであれば、本来はそれと同時に、相互の信頼関係を確実にするための手続きが必要だと思います。

会社に入る際はその一員となるための誓約を行うのが普通ですし、学校も試験があり適格な人だけが入れます。
でもマンションはあまりに無条件と言えるのではないでしょうか。
(富裕層向けなら何らかの審査があるのかもしれませんが)


私は管理組合の理事長という面倒な役目を1年だけですがやってみて、結局住人同士の信頼関係がとても大事なんだと理解しました。

買う前や買った後に、どうやったらその信頼関係について調べることができるかは分かりませんが、本当に大事なことなので、これから買われる方はぜひ心にとめておいていただければと思います。



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