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東京の不動産が恐ろしい

私はだいぶ前に家を買って都内に住んでいるのですが、最近家の近所の新築一戸建ての広告を見たところその値段に驚きました。

相場を覚えている10年以上前と比べて2倍近い値段となっていたのです。
思わず「嘘だろ…」とつぶやいてしまいました。

最近不動産を探していたり売買をされた方はすでにご存じだと思いますが、私はニュースなどで不動産の高騰は知っていたものの、家の近くの具体的な相場は知りませんでした。

そういった状況でいきなり驚きの金額が書かれているチラシを見たので、初めは誤植かと疑ってしまい、そうでないとしてもこれはきっと悪徳不動産屋の仕業に違いない、と思い込んでしまうくらいの衝撃がありました。


もう普通の人には手が届かない新築


下記は2006年を1とした東京23区の中古マンション価格の推移です。
2012年からずっと上昇し続け、2021年には2倍に達しています。
今年はさらに上がっているでしょう。

一戸建てはこのグラフに比べたら上昇が穏やかですが、2020年から明らかに上昇度合いが大きくなっています。
10年で2倍はいかないにしても、徐々に近づいている状態です。

ちなみに言うまでもありませんが、新築はもっと上がっています。

都心や人気エリアであればそれだけ値段が高騰するのは当然ですが、最近は駅から離れた交通の便が整っていないエリアでも明らかに上がっていて、これは東京全域+神奈川の都市部で多く見られる傾向です。


何より驚くのは、サイトで一般家庭向けの普通のマンションや戸建てを検索した際、「億」という単位で表示される物件が少なくないということです。

もちろん大半の物件はそうではありませんが、ちょっと駅に近いほう、ちょっと人気の街のほう、と検索条件を設定すると急に億越えの物件が並び、自分が思い浮かべるかつての億物件の豪華さ、特別さとの違いに戸惑います。

バブル期も金額的には同じだったと推測しますが、当時はあっという間に上がってすぐ下がってという状況だったので、現在のように10年以上かけてじわじわ上がったのとは違います。

決して景気は良くないしこの10年で経済が倍に成長したわけでもないのに、という不思議さが一番強いです。


格差社会の具体的な姿


そうして考えていくうちにある思いに至りました。
「格差社会はこうやってぬるっと姿を現すんだ」と。

私は格差社会というのはそれこそバブル崩壊のような「事件」が起こり雪崩的に貧富の差が拡大していく、という劇的なイメージがありました。
でも実際は知らず知らずのうちに茹で上がるカエルのようにじんわりと、しかし確実に変わっていくということに気づきました。

実際、不動産は景気とは関係なくいつの間にか高騰し、もう東京で新しい家に住むのは限られた人しかできない贅沢です。
また新築でなくても、10年前の常識では当たり前にできた利便性のある暮らしが今は倍近いお金を出さないとできません。

我が家がもし今住み替えのタイミングだったとしたら、いったいどんな場所のどんな家に住めたんだろうと考えると、今の不動産高騰の厳しさをまざまざと思い知らされます。


社会の不可逆的な変化


近所の新築にこれから引っ越してくるはずの新しい家族は、一見昔からいるご近所さんたちと同じでも、おそらく世帯年収やライフスタイルが大きく異なり、考え方もかなり違うと思います。

同じ地区に住んでいても容易に溶け合わないという住民の分断がそこに生まれるのは間違いありません。

私も同様のことがあったので分かりますが、わが子が通っていた保育園の子の親たちが、地区によって暮らし向きが大きく異なり、しつけの考え方やお金に関する対応などで折り合いがつかないことがよくありました。

話が平行線でまとまらない状況を見て私は、これはどちらが良い悪いではなく元々持っている「違い」なので解決できないと気づき、自然と疎遠になることで問題はなくなりました。


持てる者と持たざる者、ある立場と別のある立場の違いによる軋轢は、これからその差が大きくなるにつれいろんな場面で遭遇するようになります。

Gated Communityという言葉がありますが、柵で囲まれた富裕層だけが住む安全な街のことで、東京の主要部には地価や生活コストの高さ、それを賄えるだけの社会的属性という見えないゲートが既に存在しています。

その柵の中にいる人と外にいる人はもう話が合わないどころか、今後互いに攻撃しあう可能性も高いと思います。

社会というのはある程度の時間をかけて不可逆的に変化し常識が塗り替わるとそう簡単には元に戻らないようなので、次の変化が訪れるまでの当分の間、この格差社会に配慮して生きていく必要がありそうです。




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