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弁理士業の魅力 意匠登録出願への挑戦

こんにちは、40代弁理士の石川です。今日は、意匠登録出願への挑戦と題して、弁理士業の魅力について語りたいと思います。

いま、知財業界で最も熱いといえば、何といっても意匠法改正およびそれを活用した意匠登録出願でしょう。令和元年改正意匠法(令和2年4月1日施行)は、施行から2年が経ちましたが、依然としてブームが継続しており、話題の中心にいるのではないでしょうか。何が熱いかという点について順番にお話ししたいと思います。

1.特許出願よりも登録を受けやすい

意匠法は、デザインを保護するものです。意匠の実務をしながら思うことは、特許よりも登録されやすいということです。

例えば、自動車について何か新たに権利を取りたい場合に、自動車のエンジンに関して言えば、かなり成熟した分野の技術になりますから、エンジンについて新しく特許を取得したいと思った場合には、相当に高度な技術であったり、あるいは重箱の隅をつつくような細部の改良にスポットを当てて、権利を取りに行く、そのようなやり方になると思います。

一方、意匠での権利化は非常に単純で、自動車について権利を取りたい場合に、自動車の外観に関するデザインが新しければ登録になります。

上記自動車のエンジンのように、技術が成熟した分野で、特許での権利化はかなりハードルが高いように見受けられます。しかしながら、自動車の外観のデザインであれば、新しく且つ創作容易でもなければ意匠登録の対象になるということで、メーカーサイドから見て、とても権利を取得しやすい、ということになります。

実務を行っている弁理士の実感としても、意匠は登録を受けやすいように感じています。

2.無効になりにくい

意匠のよいところは、係争に強いということがあります。特許での訴訟で、一番のウィークポイントとなるのは、特許無効に関することです。特許無効で争われる一番の論点は、進歩性です。

意匠についていえば、進歩性はありません。驚くべきことですが、特許で一番の弱点となる進歩性の議論が、意匠ではできないのです。創作容易性の議論はできると思いますが、特許の進歩性の議論よりも狭い議論しかできないことは、意匠審査基準を見れば明らかです。創作容易といえるのは、公知意匠の単なる組み合わせ、置き換え、構成の一部省略、等です。

従いまして、意匠は、無効になりにくく、係争に強いということがいえます。

3.意匠権の存続期間は、特許権よりも長い

意匠権の存続期間は、意匠登録出願の日から25年です。一方、特許権の存続期間は、特許出願の日から20年です。特許よりも5年長いのです。したがって、特に、ロングライフ製品の場合には、特許権よりも意匠権での保護のほうが適切な場合があります。

4.結論が出るのも早い

意匠の審査は、2020年度の実績で、一次審査通知までの期間(FA期間)は平均6.3月であり、出願から権利化までの期間は平均7.1月です(出典 特許行政年次報告書2021年版〈本編〉)。

我々弁理士の実感としても、最終結論が出るのが早いと感じます。むしろ、早すぎます。特許に比して、審査請求費用もかかりませんので、ユーザーフレンドリー過ぎます。

一方、特許の審査は、2020年度の実績で、一次審査通知までの期間(FA期間)は平均10.2月であり、出願から権利化までの期間は平均15.0月です(出典 特許行政年次報告書2021年版〈本編〉)。

実務においては、一つの製品について、特許出願と意匠登録出願をパラレルで出願することも多いです。そうすると、意匠の方は、出願から7か月程度でさっさと登録になるのに対して、同時期に出願した特許の方は、まだ審査請求すらしていない、このような状況になります。

これまで特許メインでやってきた弁理士としては、「なんだかなー、特許だめだめじゃん。」とか思ってしまいます。

5.意匠登録の対象も増えた

意匠登録を受けられる対象が増えたことは、周知の通りです。これまで多くの方が説明していますので、多くは繰り返しませんが、画像デザインが登録できるようになったり、内装の意匠が登録を受けられるようになったり、建築物も登録を受けられるようになったりして、裾野も広くなりました。

さらに、画像デザイン、内装、建築物の部分意匠についても権利化できることとなり、権利の取り方によっては、自社に有利な、他社からみると非常にやっかいな権利の取り方もできるようになりました。

6.関連意匠の後出しもできるようになった

これも周知のことですが、関連意匠が10年間、後出しできるようになったことは、ものすごいメリットであると思います。特許でいうと、国内優先出願が10年間できるのと同じようなイメージでしょうか。そうだとすると、とんでもなくすごい改正です。これもユーザーフレンドリー過ぎます。

7.スピーディーな出願が可能

特許と違って、明細書を作成する必要がありませんから、六面図を揃えて、スピーディーに出願をすることができます。これも意匠の大きなメリットでしょう。いわゆる緊急を要する出願に強いのです。

8.特許メインの弁理士として、意匠の魅力とは

小職、これまで特許をメインに扱ってきました。最近では、小規模の事務所に移籍したこともあり、意匠に参入する機会にも恵まれています。

意匠については、私の経験が少ないということもありますが、とにかく、すべてが新しく、面白いということです。特許の世界ではありえないことが沢山起こるので、毎日飽きません。

我々弁理士も頭を柔らかくして、いろいろな権利の取り方を考えないといけません。依頼者の利益に直結するのですから。特許だけでなく、意匠、商標での権利化を含めた知財ミックスを大いに検討すべきです。

改正意匠法、凄すぎます!!

9.まとめ

いいことずくめの改正意匠法は、企業の出願戦略にぜひとも取り入れたいものです。権利範囲の広さで特許よりも劣るものの、その点も関連意匠制度を利用することで補うことができますし、シチュエーションによっては、特許で保護するよりも適切なケースも多々あると思われます。

個人的には、意匠がこれだけ使いやすくなったのですから、実用新案についても、中国の例を参考に、もう少しユーザーフレンドリーになるように法改正をお願いしたいところです。


弁理士の石川真一のフェイスブック
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