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月とスカイツリーとキャスターホワイト

やるせない気持ちになったり、どうしようもなく不安が押し寄せてきた時に吸っていたタバコがついに空になった。
私の行き場のない感情はついに20個目に到達したらしい。

私の部屋のベランダからは、月とスカイツリーがよく見える。

去年の秋に都内に引っ越してきて、初めての夏がきた。

前の家に住んでいた時から、夏はベランダでアイスを食べるのが定番になっていたので、今年も去年と違う景色を見ながらベランダでアイスを食べている。
ベランダにでて、アイスを食べていて気づいたことがある。
案外、満月じゃなくても月は綺麗だ。


最高気温39℃という夏真っ只中の気温を叩き出した今日は、月が言葉じゃ表現できないくらいに綺麗で、なんだかアイスじゃなくてタバコを吸いたい気持ちになった。

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私はどうしてもやるせない気持ちになってそれを消化できない時、少しだけ自分を傷つけたくなる。

誰しもが無条件に甘えられる存在が近くにいるわけではない。
不安になった時、ストレスが溜まってどうしようもない時、感情をぶつける場所や人がいない場合はどうしても感情の矛先が自分になってしまうのは仕方のないことだと思う。

だからと言って見える部分にあからさまに傷をつけることはしない。
どのくらい自分が傷ついたのか目に見えて知りたいわけではないからだ。
それに、自らの体に傷をつけるほど私は勇気がない。

ただ目には見えないが、じんわりゆっくり体を侵食する毒のように不安やストレスによって生まれた感情が溶けて、自分自身にどのくらい影響を与えたのかを死ぬ間際に知ることができればそれでいい。

だから私はやるせない気持ちを消化できない時、記憶をなくすほどお酒を飲んでみたり、タバコを吸ってみたりする。

タバコを始めたきっかけは単純に、どうしようもないストレスで行き場のない感情を少しでも緩和させたいと思ったからだ。
のぞみ虚しく、タバコを吸ったからと言って現状は変わるわけではなかったが、気分は少しだけマシになった。
いまだにタバコの何がいいかはわからない。
ただ、タバコを吸っている間は全てがどうでも良く感じて、すこしだけ現実から逃れることができる。
わたしは5分間だけでも現実から逃れるためにタバコを吸っているのだと思う。



タバコなんて絶対に吸いたくないし、吸うつもりもないって少し前までは思っていた。結婚相手も絶対に絶対に非喫煙者がいいって。喫煙者になったっていいこと一つもないって。
タバコを吸うことは悪で、タバコを吸わないことは正義だと思っていた。
自分が喫煙者になるまでは。


どうもこの世の中はお酒で全て解決できるほど甘くないようだ。
挑戦して失敗して、うまくいったとしてもまた目の前に壁ができる。
ずっと挑戦し続けてもまた壁にぶち当たる。
挑戦し続けることは大事だ。それが成功への道だということもわかっているつもり。
でも壁に当たり続けているとその分、傷も増えてくる。
そんな自分の傷を癒す方法がお酒とタバコだっただけ。

今の自分を癒すために将来の自分を傷つけるなんておかしい話だ。

それでも、今日も私は現実から逃れるために特に吸いたくもないタバコに火をつける。




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