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起業のきっかけとなる価値観を育んだ、多様性のある場のこと

 こんにちは。あずさです。チアフル株式会社というのをやっています。
薬草・ハーブをつかって「余白の時間」をお届けする自社ブランド『jiwajiwa』(じわじわ)が主な事業です。奈良を拠点にしています。
 昨年末になりますが、とある発刊物に寄稿する機会を得て、エッセイのような想い出のような話を1500字程にわたり掲載してもらいました。はじめての寄稿で、しっくり来る言葉を紡ぐことが難しいかったのですが、ずっと書いてみたかった、価値観を育んでくれた幼少期の体験を書き起こすことができ、こちらでも投稿してみます。一部、noteのため修正しています。

 
 幼い頃、母と手を繋いで家の近所をしばしば歩いた。住宅街を通り抜け、背の高い木々がトンネルみたいになった坂道を登って向かった、目的地は「たんぽぽの家」という施設だった。もう30年も前のことだ。

たんぽぽの家」は奈良市にある福祉施設で、障がい者の方々が生活したり通所したりされている。現在は、福祉・アート・IoTをかけ合わせた先進的な取り組みをされていて、注目度も高い団体。数十年も前からコミュニティづくりに取り組まれていて、当時は絵本がたくさんある小さな図書室のような場所があった。
 
  近所の子ども達が集えるワークショップやイベントが開催されていて、母はわたしをそこに連れて行った。本の読み聞かせが上手なおばさま方が子どもの相手をしてくれたり、集まった人たちで世間話や情報交換したり、多世代の多様な人々がゆるやかに集う居心地のよい空間だった。

  わたしは、定期的に開催される季節ごとの飾りものや「飛び出す絵本」を作るイベントが好きだった。色紙などの素材を切りはりして部品を組み立て、完成見本はあるものの自分なりに工夫して仕上げる。正解をなぞるのではなく、個性を引き出してくれる時間と空間。独自にものをつくる面白みを知った。当時に体験したことが、今のわたしの価値観の基礎になっていると気づいたのは、随分と月日が経ったころだった。 

 わたしは現在、チアフル株式会社の代表をしている。チアフルは2016年に30歳で起業した小さな会社だ。奈良県産の薬草やハーブを原材料としたオリジナル入浴剤「お風呂のハーブ」や無添加石鹸、アロマスプレーなどセルフケアアイテムを扱う自社ブランド「jiwajiwa」(じわじわ)を運営している。使う人に良いことはもちろん、作る人や地域と未来に持続可能な事業の在り方を目指しての取り組みだ。

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▲jiwajiwaの代表的な「お風呂のハーブ」「無添加石鹸」「アロマスプレー」

 地域の農林業者の方から、柿の葉やドクダミ等の原材料を預かり、製造には障がい者や要介護高齢者、生産管理や情報発信には在宅ワークの子育て女性が携わっていて、働きにくい人たちを含めた多様な方と一緒に事業活動をしている。創業当初から全員がリモートワークで、新しい働き方のかたちを模索中だ。起業から5年半が過ぎ、たくさん課題もあるが、品物を使ってくれる人、手を貸してくれる人、応援してくれる人、助言してくれる人がだんだん増えて、取り組みがじわじわと広がってきている。

 
  起業前は大学卒業後に就職した大手企業に勤務していた。ものづくりが好きだったのもあって建築系の製造会社で、終身雇用で働くつもりだった。仕事はやりがいがあったが、あるとき大きな仕組みで効率化が追求されたものづくりでは出来ない在り方に関心を持ちはじめた自分に気づいた。きっかけは、本社にいた際の視察業務で、日本全国の地方都市を出張したことだった。どこの都市に行っても、目抜き通りは当時の会社が建築したようなチェーン店が軒を連ね、画一的で効率化された様はどこも同じ顔をしている個性のない街に見えた。また、一方で、まだまだ元気に働けるのに定年退職になる上司や、出産がきっかけで任される仕事の幅が狭くなっている先輩など、効率よく働けなくなった人たちは仕組みから外れていく在り方なのだと感じた場面にも遭遇した。大規模で効率的な仕組みを作り上げるほど、そこから零れ落ちる人たちは、ともに過ごすことが出来ないのだと思ったのだ。

 多種多様な人たちと共にいる心地よさや、自分なりに工夫して創り上げるものづくりの楽しさとは、逆の感覚が、そこにあったように思う。自身の感性を尊重したいと感じたとき、紆余曲折を経たが、結果的に起業するいう考えに至った。

 幼少期に「たんぽぽの家」で過ごしたことで感じた心地よさを、働き方や生き方でも実践したいと思ったのかもしれない。それで自社ブランド「jiwajiwa」は、地域の素材を使ったアイテムを製造して、障がい者や高齢者、在宅ワークの子育て女性などが関わっているというわけだ。

 この寄稿のきっかけとなったのも、「たんぽぽの家」からのご縁だ。
わたしの人生を感化してくた出合いに、改めて感謝を申し上げたい。

そんな、jiwajiwaのきっかけです。今はものづくりが主な取り組みですが、ものに限らず、多様性と創造性のある機会をつくっていけたらといいなぁと、この春から奈良・吉野に「jiwajiwaな、おうち」という場を開きます。
詳しくは、こちらからhttps://www.instagram.com/jiwajiwanaouchi/?hl=ja


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