【山梨県立文学館】企画展「ふしぎ駄菓子屋銭天堂へようこそ」を見に行く
はじめに
小学生を中心に人気の読み物「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」が、山梨県立文学館へやってきました。企画展「ふしぎ駄菓子屋銭天堂へようこそ」(2023.7.15~9.24)では、銭天堂シリーズの世界観を再現してたセットやエピソードに登場する駄菓子の造形や表紙や挿絵のイラストなど、小学生と家族、また、かつての小学生も楽しめる銭天堂の世界が広がります。
この展示は全国巡回されており、山梨は4館目の展示会場となります。
銭天堂とは
「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」は小学生に絶大な人気をほこる読み物シリーズです。廣島玲子作、jyajya絵、偕成社刊で2013年より刊行され現在19巻、2023年9月には20巻が発刊されます。Eテレでアニメ化もされています。
「 小学生がえらぶ!“こどもの本” 総選挙」で昨年『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』第1巻が1位に輝きました。これまでの1位は『ざんねんな生き物事典』です。
ストーリーは「幸運な人だけがたどり着ける駄菓子屋」銭天堂で売ってくれるどこか怪しげだけど魅力的な駄菓子、客の願いがこれでかなうのです。でも、食べ方や使い方を間違えるとたいへんなトラブルになってしまうのです。知らない年代では「笑ゥせぇるすまん」のテイストで小学生向けだと思えばよいと思います。願いをかなえる駄菓子は「ドラえもん」の秘密道具にも似ています。
1冊は、短編オムニバス形式で5話から6話のエピソードで構成されています。ストーリーも1話か前編後編の2話完結、なのでちょっとした時間でも読めるのも、子供たちに人気の秘密でしょう。
屋外の気になるもの
これまで芸術の森公園内にある、屋外アート作品を紹介してまいりましたが、今回は、作品に登場する「金色の招き猫」たちです。一緒に撮影できるフォトスポットとして園内には10匹の招き猫たちが配置されているそうです。残念ならが確認できたのは6匹です。どれもかわいらしいです。
ふしぎ駄菓子屋銭天堂へようこそ
エントランスロビーのチケットカウンタの前から階段を進みます。展示室のある2階へ進む階段にはイラストがデザインされています。
企画展示室の入り口です。店主の紅子さんの着物と同じ古銭柄のゲートに「いらっしゃいませ、幸運のお客様」とあります。進んでみましょう。
ちなみに展示は一部のイラストを除き撮影可能となっています。
銭天堂現る
登場人物の相関図などがあり、商店街の路地裏に再現された順路を進みます。お話を読んだことがない人もここで「登場人物相関図」を見ればだいたい大丈夫です。
路地裏を抜けると目の前に銭天堂が現れ、紅店主の子さんがいました。
「いらっしゃいませ、幸運のお客さま。」「さあ、どんなものをおのぞみでござんしょう。」
紅子さんに会えたということは、筆者もきっと幸運なのでしょう。
先の展示に銭天堂の建物内部の解説ボードがあります。古い昭和テイストな木造2階建てです。しかし、地下があり、駄菓子の工房になっているのです。そこでは金色の招き猫たちがふしぎな駄菓子をこしらえているのです。
基本昭和レトロな和室の住宅ですね。玄関はお店とは別に裏にあります。
工房をメインとしていますが、ロッカールームに風呂や和室があるのが面白いです。
銭天堂の歴史がアイテムとともに紹介されています。なんと、戦国時代から江戸時代、明治、大正、昭和、バブル景気の時代も駄菓子を売り続けているとか。店主の紅子さんは何者でしょう。第18巻で明かされているそうです。
もっとも紅子さんの販売スタイルは行商から始まって現在の駄菓子屋へと推移しているのですね。あとは駄菓子が出来る様子も紹介されています。企画立案を金色の招き猫たちがしているのがおかしすぎます。
お店には看板猫「墨丸」がいます。こちらは、「銭天堂」の名前の由来と看板猫「墨丸」との出会いについて紹介です。
金色の招き猫たちの紹介です。まさに猫の手を借りながら銭天堂では地下で駄菓子を作っているのですがそれぞれ担当が決まっています。工房長はこがねです。微妙に顔つきや顔の模様が違うのですが、左下のきなことまろは双子なので顔の模様が同じです。
魅力的なイラスト
jyajyaによるカバー絵や挿絵も銭天堂の世界観には欠かせないでしょう。そうしたイラスト作品が展示されています。
記念すべき第1巻のカバー絵です。よーく見ると第1巻に登場する駄菓子がみんな絵の中に入っています。
挿絵の数々とラフスケッチです。
駄菓子
左は駄菓子の企画書です。金色のまねき猫たちによるものです。
「食べるとしわが消え肌つやがよくなる」しわとり梅干しはと書いてあります。
「食べるとアイディアがとんどんでてくる」アイディアあんこ
駄菓子を作る工房と金色の招き猫に関する展示です。
ざる、しゃもじ、お菓子の木型など、金色の招き猫たちが使っている道具が並んでいます。古風な道具で猫たちが手作りしているのです。
お菓子作りにはげむ金色の招き猫たち。そ
山梨展で初お披露目となった「祝福の招き猫」、地下の工房で作られた商品は、この祝福の招き猫に奉納されることで初めて祝福を受けるのです。
駄菓子の企画書があります。金色のまねき猫たちによるものです。
「食べるとしわが消え肌つやがよくなる、しわとり梅干し」と書いてあります。その隣には「食べるとアイディアがとんどんでてくる、アイディアあんこ」です。
菓子帳は紅子さんの駄菓子目録。
紅子さんのかんざしです。となりの黒い生き物は「名もなきもの」と呼ばれるゼリーみたいな生き物たち。
こちらは帯飾りです。紅子さんの帯飾り(右)とライバル店たたりめ堂のよどみの帯飾り(左)です。こちらにも黒い生き物「名もなきもの」がいます。
駄菓子ランキングベスト10
駄菓子ランキングがありました。
10位「獏ばくもなか」、9位「ドリームドーム」です。
「獏ばくもなか」は悪夢に襲われたとき夢をみなくさせるもなかです。
「ドリームドーム」はミニチュアの世界が作れます。「チヂミントガム」を食べれば、自分もその世界に入れます。
8位「タイムライム」、7位「おもてなしティー」、6位「釣りたいやき」と続きます。
「タイムライム」は、時間を早めたり、遅おそくしたり時間を自由に操れる。
「おもてなしティー」は、その茶葉で紅茶を注ぐと、孤独をいやす友があらわれます。
「釣りたい焼き」は、附属のバケツで鯛焼きをつりあげてます。釣りと鯛焼きが同時に楽しめるすぐれもの。
5位「クッキングツリー」、4位「ドクターラムネキット」です。
「クッキングツリー」はお鍋の中でなんでも料理が出てるく不思議な木、でも「いただきます」「ごちそうさま」を言わないと食べられてしまいます。
「ドクターラムネキット」はお医者さんになれる眼鏡と白衣がセットです。お薬のラムネを渡すとみんな病気が治ってしまいます。
第3位「ホーンテッドアイス」です。「ひんやり感抜群」で半分残すと家がポルターガイストで呪われるという夏のこわいアイテムです。
堂々の1位と2位は、「虹色水あめ」「型ぬき人魚ぐみ」です。「虹色水あめ」は心が彩られやさしい心が持てるようになります。まさに1位にふさわしいアイテムです。「型ぬき人魚ぐみ」は記念すべき第1巻の第1話ですね。食べ方を間違えるとそのまま人魚になってしまいます。
とにか夢のようなアイテムばかりですが、使い方があってそこに教訓のようなものがあるわけです。
作者のコーナー
作者廣島玲子氏、作画jyajya氏のコーナーです。
招き猫たちとの座談会形式でこぼれ話、裏話のほかに、「児童文学の豊かさ」をテーマに語っています。
たたりめ堂へようこそ
銭天堂をライバル視するお店があります。その名も「たたりめ堂」。たたりめ堂のコーナーがあります。
のれんをくぐり中に入ると、銭天童と同じように店主のよどみがいます。よどみは7歳くらい女の子の姿をしています。黒地に真っ赤な彼岸花の模様の着物を着ています。ただ、よどみは人間の持つ悪の心が大好きです。そういう悪い心に漬け込み、たたりめ堂の駄菓子を売り、相手を不幸にしてしまうのです。
たたりめ堂やよどみたちの解説パネルがあります。
なぞの男「怪童」が経営する遊園地が「天獄園」です。スピンオフ作品「あやし、おそろし、天獄園」まで出ている天獄園について解説。
たたりめ堂のアイテムです。
不幸虫の瓶が入った千両箱やら、虫歯あられ、スリスリリンゴが展示されています。
こちらでも駄菓子ランキングです。おすすめランキングなので店主のよどみが決めたのでしょうか。
①悪魔あめ②貧乏神ガム③ひきさきイカ④横取りゼリー⑤シェフ・ショコラ、以下、虫歯あられ、おもてナシ、餓鬼ニッキ、先頭糖、スリスリリンゴ
山梨県立文学館と同じ時期にさいたま文学館では「番外編たたりめ堂へようこそ」(2023.7.26~9.24)を開催中です。こちら山梨県立文学館の「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂へようこそ」の観覧チケットの提示で無料で観覧できるそうです。
おわりに
夏休み中だったこともあり、家族連れが多く、普段の文学館では考えられないくらい賑わっていました。おそるべし「銭天堂」です。
町から書店が消えていく世の中ですが、子どもたちには絵本から始まり、読み物にふれていってもらいたいものです。
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