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【ギャラリーマザーツリー】「酒井慶二郎 絵画展」を見に行く

はじめに

 今年の夏、原村の八ヶ岳美術館にて偶然目にした酒井慶二郎氏の作品でしたが、その後も精力的に活動されているようで、筆者のもとへも個展の案内状をいただきました。
 10月の3連休の初日、茅野市にある倶楽部ギャラリーマザーツリー「酒井慶二郎絵画展」(2023.10.7~10.10)へ足を運んでまいりました。

倶楽部ギャラリーマザーツリー

 八ヶ岳美術館で行われた作品展の様子はこちらをご覧ください。


倶楽部ギャラリーマザーツリー

 倶楽部ギャラリーマザーツリーは、茅野市の諏訪インターに近い道路沿いにある小さなギャラリーです。オーナーが陶芸教室のために作られたそうで、さまざまさ展示に貸し出しているそうです。隣は「青りんごの樹」というパン屋になっていて直結しています。
 バラの庭園が有名で、ギャラリーと外の庭園が一体になった感じです。6月には庭園を無料開放するオープンガーデンの期間があるそうです。

奥の入り口はパン屋さん
バラを中心とした庭園
建物の裏へ続く庭園

酒井慶二郎 絵画展

 さて「酒井慶二郎 絵画展」ですが、ギャラリーマザーツリーでの個展は17回目だといいます。
 酒井慶二郎氏は1989年生まれ、諏訪市在住で農園勤めのかたわら絵筆を走らせるといいます。さまざまな和紙にアクリル絵の具で描くのが特徴で、はじめは油彩でその後独学でアクリル絵の具による作品を描くようになったそうです。

案内状ハガキの両面(宛名部分は加工)

 訪れてまず驚いたのは、1点を除いてすべて新作ということです。原村の八ヶ岳美術館では9月まで展示されていたましたが、またその1点も額装を入れ変えてあるとのことで、すべて同じものはないということになります。
 伺ったところ慶二郎さん(みなさんそう呼んでいます)は年間およそ50点の作品を描くそうで、購入希望も多く個展はほぼ新作になるそうです。

ギャラリーの概観

 個展のスケジュールを伺ったところ、今回の茅野のマザーツリーのほか、東京日本橋の小津和紙(小津ギャラリー)、神戸の南天荘画廊、東京紀尾井町の文春ギャラリーで毎年個展を開いているそうです。リピーターがたいへん多いのも特徴だといいます。筆者が鑑賞している間にも次から次へと来館者がまいります。

窓からは庭園が見える
《白いフレームに入れた赤のバラ》2023
《どこの庭にも咲くおにゆり》2023
《Liveで描いた花たち》2023
《琵琶》2023
《ケイトウ》2023
《ヤマボウシ》2023

 額装のみ入れ替えたというのがこちらの作品です。白い額に鮮やかな赤で描かれた《クジャクサボテン》です。

《クジャクサボテン》2023

 下記が八ヶ岳美術館の時の画像です。確かに額が違うだけで印象が大きく異なります。また、時間の都合で裏打ちがされていなかったため、少し波打っているといいます。

《クジャクサボテン》2023  八ヶ岳美術館にて

 ギャラリー内には、随所に花が置かれています。こちらの大輪の菊は、八ヶ岳美術館でメインビジュアルであった作品を思い出します。

大輪の菊
《五輪の菊》2020  八ヶ岳美術館にて

原村・八ヶ岳美術館で描いた作品

 八ヶ岳美術館では、Liveとして慶二郎さんが在館し作品を描くことを行いました。次の3点が八ヶ岳美術館で描かれた作品です。
 また、マザーツリーの会場でも椅子に座り黙々と和紙に向かう慶二郎さんがいました。こうして個展の会場でも次回の作品が生まれるのです。

《Liveで描いた花たち》2023
《オーナメントのカボチャ》2023
《シマウリ》2023

 《カボチャ》より《シマウリ》のほうが、紙質が薄いといいます。《シマウリ》はパラフィンのように薄く透き通った和紙で作品には若干にじみがあります。普段から紙質に合わせて絵の具の濃さなどを調整しているのだといいます。

 また、八ヶ岳美術館に在館中、初めてデッサンに挑戦したとのこと。デッサン画も和紙に描いています。美術雑誌から模写したとのことですが、すべて元絵に忠実に描かれているそうです。五重塔がありますが、塔がぎくしゃくと傾いているのですが、実は模写した元画像が曲がっていてものを忠実に写し取ったということです。

和紙に描いたデッサン
八ヶ岳美術館にて

余白の魅力

 慶二郎さんは、すべて和紙にアクリル絵の具で描いています。和紙は日本各地から取り寄せた和紙です。
 ふと、よくみると背景のある作品というのが無かったのですが、余白が和紙の素材や質感を見せているのでした。そうすると余白も作品の一部であり、和紙の色や質から描く題材を決めているのだといいます。使用した和紙の中にはふすまに使う厚地の和紙もあるそうです。

よく見ると細かい繊維が
こちらは和紙そのものが厚そうです
原料がはっきり残っています
こちらも繊維が残る和紙

 慶二郎さんの作品は1点1点がたいへん大きいのも特徴です。下記画像にある竜は狩野幽の模写で、他の作品よりもさらでさらに大きい作品です。手すき和紙の大きさは職人さんが使う簀桁すけたという道具で決まるのですが、大型の作品は漉いた和紙の大きさそのものを使っていることも少なすないといいます。

壁には大型の作品が並ぶ

 竜は、京都の妙心寺で見た狩野幽作の雲竜図の模写とのこと。

《妙心寺の天井絵》2023

 また、八ヶ岳美術館滞在中に和紙の原料であるカジの葉に直接アクリル絵の具で絵を描くことも挑戦されたそうで新たな創作の始まりを思わせる展示です。

カジの葉にペイントした作品
見事なムーミン一家

写実主義

 また、花では完全に開いた満開の様子が描かれるところにも特徴があります。満開を想像して描いているのではなく、実際の花の姿を写しとっているといいます。そういう意味では写実主義の絵画です。
 ひとつの作品の完成まで4日ほどかかるそうです。その間に花が開花していくのだといいます。
 数日という時間経過の中で鮮やかに咲いてるシーンだけを一枚の中に残しているのだと思いました。

赤い和紙に

グッズなど

 缶バッジや似顔絵のポーチがあります。また、B5サイズにプリントした作品があります。

缶バッジなどのグッズ
B5サイズの作品、サイン入り

 さらにオリジナルラスクが恒例のアイテムだそうで、酒井慶二郎コラボレーションパッケージとなっていて3種のラスクと慶二郎さんのB5サイズの作品が入っています。作品の絵柄は数種類の中から選べます。筆者も購入して帰りました。ラスクは薄くやわらかめでおいしかったです。

オリジナルラスク

おわりに

 こちらは初めて訪れたギャラリーでしたが、ふたたび慶二郎さんの作品に会えて行った甲斐がありました。庭がよく見え、花や野菜などのテーマとぴったりでつい長居してしまいました。忙しい合間に丁寧に説明くださった慶二郎さんのご両親に感謝いたします。

賑わうギャラリー


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