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高校生の私が、先生と付き合った話10

それからも職員室に通ってみたり、積極的に話しかけてみたりしていました。
ファンということを公言しているとはいえ(もちろん本人も知っている)、かなりの出現率だったと思います。

いま先生の立場になって考えると、「こんな生徒いたら怖いわ・・・」と思ってしまいますが、当時はまだ子供すぎたのでそんなことは思いつきもしなかったです。

鈴木先生も嫌な素振りは一切なかったし(それも仕事のうちだったろうし)、いつだって優しかったからよけい気づけなかったのかもしれません。



梅雨が明けた7月。

もう少しで夏休みになるので、周りの友達は心を躍らせていましたが、わたしは到底楽しみだとは思えませんでした。

『学校がないと鈴木先生に会えない』

夏休みなんていらない。
学校に来て鈴木先生に少しでも会えるのなら、補習でも夏期講習でも喜んで受けるのに。
どうにかして会える回数を増やしたい。



「あ!」
またもや突然ひらめいて、すぐに担任の林先生のところを訪ね、夏休みにピアノ練習室の使用許可を取ることができました。
「家にもピアノあるんじゃないの?これから暑くなるし、来るのめんどくさくない?」と不思議に思われましたが、「学校のほうが集中できる」と伝えると納得してくれました。
(学校のほうが練習に集中できたのは本当だったしね)


同じ日。
授業が終わり、いつものように美香子との帰り道。

「あずみは夏休みなんか予定あるのー?」
「うーん、これといってないかな。ほとんど学校行くと思うし」
「え、なんで?補習とか?」
「ううん、ピアノの練習とか卒業公演の準備とかしようかなって」
「・・・とか言っちゃってるけどさぁ」
美香子はニヤニヤしながら小突いてきました。

「なんでニヤニヤしてんのさ?」
「あずみホント分かりやすいよねー」
「どういうこと?」
「鈴木先生が好きだから、夏休みも会いたいんでしょ?」
「・・・やっぱり気づいてた?」

「当たり前じゃん!分かりやすかったもん」と美香子は笑い、
「うん、鈴木先生ならいいんじゃない?あと半年くらいで卒業だし、あきらめずにアプローチしてみなよ。在学中は無理だろうけど、卒業後ならもしかしたらいけるかもしれないよ」

美香子の言葉に、わたしの心は一気に軽くなりました。

誰かにやめときなよって言われてしまうことが怖くもあったので、相談できたり背中を押してくれる友達がいるのはやっぱり心強かったです。


「知ってるだろうけどさ、1学期終業式の日って鈴木先生の誕生日だったはずだよ。なにかするの?」
「迷い中。普通にお菓子でも作って渡そうかなぁ~。引かれちゃうかな」
「いいと思うよ。体育会系にはベタなほうがウケそうじゃない?」
「そういうもん?(笑)」

そのあとは駅で別れるまで、「いつから好きになったの、誰はこのこと知ってるの」と質問攻めで、楽しい帰り道となりました。



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