草薙の剣と消えた神剣の謎
日本神話最強の剣
愛知県名古屋市にある熱田神宮には、日本神話最強の剣であり、三種の神器の1つ草薙の剣が祭られています。
勾玉や八咫鏡など、日本神話には様々なアイテムが登場しますが、その中でも草薙の剣は強力な力を持ちつつも、ドラマチックな物語がたくさんあります。
今回はそんな草薙の剣のお話を紹介していきたいと思います。
皆様の神社参拝がより楽しくなる記事を目指していくので、よかったら最後お付き合いしてください。
それでは、私といっしょに草薙の剣の物語を見ていきましょう。
草薙の剣の登場
草薙の剣が登場するのは、古事記の上巻で、長い日本神話の中でも最初の方です。
天の世界で悪さばかりしていた須佐之男神《すさのおのかみ》が、地上へ追放された時。
地上へと降り立ったスサノオがあてもなく歩いていると、泣いている夫婦と若い娘がいました。
スサノオが「なぜ泣いているのか?」と事情を聞くと、ヤマタノオロチという怪物がやって来て、娘を食べてしまうとのこと
娘の名前は櫛名田姫《くしなだひめ》という、美しい女神でした。
そんなクシナダ姫に惚れた、スサノオは彼女と結婚するのを約束して、ヤマタノオロチと倒すことを決意しました。
そして、見事ヤマタノオロチを倒したスサノオは、ヤマタノオロチの体内から見事な剣を見つけます。
スサノオはこの時、現れた剣に天叢雲剣《あめのむらくものつるぎ》と名付けました。
スサノオは、姉である天照大御神《あまてらすおおみかみ》に天叢雲剣を献上して三種の神器に加わりました。
「あれ? この記事って草薙の剣のお話だよね? なんで天叢雲剣が出てくるの?」と思った方もいるかもしれませんが、天叢雲剣と草薙の剣は同じ剣だといわれています。
天叢雲剣が草薙の剣と呼ばれるのは、もっと後の事になります。
草薙の剣の名前の由来
天叢雲剣が再び登場するのは、時間が経過した古事記の中巻あたりです。
この頃になると、天皇家が奈良県を中心に日本を支配していました。
しかし、東の方はまだ天皇家に従わない部族や悪神がいました。
つまり、昔の関東方面は外国みたいなもので、当時の日本は北海道から沖縄まで治めている、現代のような形をしていなかったんですね。
天皇は自分の息子であるヤマトタケルに、東にいる悪神や部族を倒してくるように命令します。
この出来事は日本神話で『ヤマトタケルの東征』と呼ばれていますが、天皇の目的は東の統治ではありませんでした。
ヤマトタケルはとても強い力を持っていました。
あまりにも強いから天皇は「いつか自分がやられるんじゃないか」と恐れていました。
そこで、ヤマトタケルには強い者と戦わせて、死んでもらおうと考えます。
つまり、『ヤマトタケルの東征』の本当の目的は、遠回しな暗殺計画だったのです。
命令に従ったヤマトタケルでしたが、実は天皇の本当の目的は勘付いていました。
しかしヤマトタケルは天皇に忠実で反逆することもできず、不安で進む足取りは重たくなります。
そこでヤマトタケルは、まず三重県の伊勢神宮に行きました。
伊勢神宮には、ヤマトタケルの叔母であり巫女をしていた、ヤマト姫という人物がいました。
ヤマトタケルはヤマト姫に、不安な心情を打ち明けました。
すると、ヤマト姫は伊勢神宮で祭られていた一本の剣を授けます。
その剣こそ、三種の神器の1つである、天叢雲剣でした。
神剣である天叢雲剣を手に入れたヤマトタケルの足取りは軽くなり、どんどん東へ進んでいきます。
そして、現代の愛知県名古屋市まで来た時、宮簀媛命《みやずみめのみこと》という美女と出会います。
ヤマトタケルとミヤズヒメは、お互い恋に落ちます。
そして東の統治が終わったら結婚することを約束してヤマトタケルは、東へ進んでいきました。
そして、ヤマトタケルが神奈川県あたりまで来た時、敵のだましうちを受けてしまい、野原にいる時に火を放たれてしまいました。
野原で燃え盛る炎に囲まれてしまい、万事休すかと思いきや、ヤマトタケルは周囲の草を天叢雲剣で薙ぎ払いました。
そして、薙ぎ払った草に火をつけて、迫る炎を相殺してヤマトタケルは生き残りました。
ヤマトタケルが草を薙ぎ払って難を逃れたことから、天叢雲剣は草薙の剣と呼ばれるようになったのです。
熱田神宮の創立
ヤマトタケルはその後、千葉県まで攻めこんだところで、引きかえしていきます。
そして、愛知県まで戻ってきたところで、ミヤズヒメと再会して、約束通り結婚しました。
こうして最愛の女性と結ばれたヤマトタケルでしたが、慢心が生まれてしまいます。
名古屋の西側、位置的には岐阜県と滋賀県の間には伊吹山という山があります。
そこに潜む怪物を素手で倒してみせようと言って、ミヤズヒメの元に草薙の剣を置いて、出発してしまうのです。
女の子の前でカッコつけたかったのかもしれませんが、伊吹山の怪物に返り討ちにあってしまい、ヤマトタケルは命を落としてしまいます。
こうして、ヤマトタケルの忘れ形見である草薙の剣を祭ったのが、熱田神宮のはじまりだといわれています。
海に沈んだ草薙の剣の謎
草薙の剣の物語は、神話の中だけではありません。
ドラマは比較的現代に近い、平安時代の終わりにもあります。
ことの始まりは、有名な源平合戦でした
当時、平清盛というサムライが天皇家を支配するほど、絶大な力を持っていました。
なぜ、これほどの権力を持っていたのかというと、平清盛はまず自分の娘を天皇の嫁にします。
そして、娘に男の子を生ませて、その子供を強引に天皇に即位させたのです。
つまり、清盛は「俺は天皇はおじいちゃんだぞ! 文句あるのかコノヤロー」と言って、権力を振るっていたのです。
一方、清盛によって強引に天皇にさせられたのは安徳天皇といって、まだ1歳くらいの赤ちゃんでした。
ちなみに、安徳天皇は歴代天皇の中でも、最年少で即位したと言われています。
もちろん、赤ちゃんに政治なんてできないので、安徳天皇は清盛が自分の都合のいいように政治を動かすためのマリオネットだったのです。
こうして、絶大な権力を振るっていた平清盛でしたが、源頼朝や源義経が反旗をひるがえし源平合戦が起きました。
最初は平家が優位だったものの、絶大な力を持っていた平清盛が合戦の最中に死亡してしまい、平家は一気に劣勢となってしまいます。
そして、源氏軍が京都に攻め込んでくると、平家は安徳天皇と天皇の証である三種の神器を持って逃亡してしまいます。
安徳天皇は時代に翻弄された人物といえますね。
さて、その後は源義経《みなもとのよしつね》の猛攻によって、平家は敗退を重ね、本州と九州の間にある壇ノ浦で起きた壇ノ浦の戦いにて、平家は滅びました。
しかし、ただ滅んだわけではありません。
清盛の妻であり、安徳天皇にとってはおばあちゃんにあたる平時子が、安徳天皇を連れて海に飛び込んで入水してしまったのです。
安徳天皇を道連れにしただけでなく、この時平家の人々は、三種の神器までも海に投げ込んだと言われています。
幸いなことに八咫の鏡と勾玉は、木箱にはいっていたので、海の上をただよっていたところを、源氏軍によって回収されました。
しかし、草薙の剣だけは海に沈んでしまい、どうしても見つからなかったのです。
こうして、壇ノ浦では朝廷と源氏軍にっよて、草薙の剣の大捜索が行われました。
朝廷は海女さんを集めて、海底を探させましたが、草薙の剣はどうしても発見できなかったのです。
朝廷は陰陽師に頼んで、草薙の剣の在り処を占わせました。
その占いの内容というのが……
「8つ頭を持つ龍が草薙の剣をもっている。ヤマタノオロチに違いない。安徳天皇は過去に滅ぼされたヤマタノオロチの生まれ変わりだったのだ。そして、スサノオによって奪われた剣を取り返すために、源氏と平家を戦わせたのだ」
という、とんでもない結果が出たと、平家物語に書いてあるそうです。
結局、草薙の剣の剣は見つからず、現代でも海の底に沈んでいるといわれています。
もしかしたら、安徳天皇は本当にヤマタノオロチの生まれ変わりだったのかもしれませんね。
現存する草薙の剣の謎
現在、八咫の鏡は伊勢神宮、勾玉は皇居、そして草薙の剣は熱田神宮にて厳重に保管されています。
「あれ? 草薙の剣って壇ノ浦に沈んだんじゃないの?」と思った方もいるかと思います。
その通り、草薙の剣は確かに壇ノ浦に沈みました。
でも、なぜ今でも熱田神宮にあるのかというと、実は草薙の剣は2本あったのです。
というのも10代目天皇である崇神天皇《すじんてんのう》が、草薙の剣の形代《かたしろ》を作っていたからです。
草薙の剣の形代を簡単に言うと、レプリカみたいなものですね。
ヤマトタケルが使った1本目の草薙の剣は、ずっと熱田神宮にて祭られていました。
そして安徳天皇とともに、平家によって持ち出された草薙の剣は2本目の草薙の剣だったのです。
海に沈んだのはスサノオが見つけた本物の草薙の剣ではありませんでしたが、疑問が残ります。
源平合戦あとも、朝廷は数十年にもわたり、壇ノ浦にて草薙の剣の捜索を続けていました。
形代とはいえ、神話時代から受け継がれてきた神剣なので、放って置くことはできなかったのかもしれません。
しかし、安徳天皇の後に即位した後鳥羽天皇は、本物が熱田神宮にあるにも関わらず、草薙の剣がかけたまま、即位の儀式をおこなったそうです。
このような点から、「壇ノ浦に沈んだのは本物の草薙の剣だったのでは?」と考える人もいるそうです。
真実は熱田神宮と壇ノ浦に眠っています。
最後まで読んでくれてありがとうございま
謎とロマンあふれる草薙の剣の魅力がわかってくれたら、嬉しいです。
今回はこんな感じですが、皆様の神社参拝や御朱印集めがもっと楽しくなる記事を書いていくので、興味がある方はぜひフォローお願いします。
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