知財ガイドラインの改定と危険負担の見直し、及び、知財・情報フェア&コンファレンス出展のお知らせ

1. はじめに

 2024年7月31日に中小企業庁からとある調査の結果が報告されました。それは知財Gメンによる知的財産取引に関する調査報告です。それを説明するために、中小企業を取り巻く状況から順に整理していきましょう。

2. 知財ガイドラインについて

 中小企業の取引に関する法律として中小企業「保護」を目的とする「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」が有名ですが、同法は主に親事業者(発注者)側の禁止行為を定めています。一方で下請法とは別に中小企業「振興」を目的とする「下請中小企業振興法」があります。同法は行政側に事業振興策の整備と実施を求めており、その一つとして同法第3条第1項に基づく「振興基準」では中小企業との理想的な取引関係を示しています。

 中小企業庁ではこれらの規制や指針に基づき中小企業を相手方とする取引の適正化を進めてきましたが、知財に関する契約に不適正な取引慣行が存在するとして2021年に「知的財産取引に関するガイドライン(知財ガイドライン)」を通達しました。この内容は振興基準を補う具体的な指針として運用されていますが、2022年の振興基準改定にあるように、後の振興基準に統合される可能性も有しています。また2022年に知的財産取引の問題に特化した「知財Gメン」を設置し、振興基準や知財ガイドラインを踏まえた調査を実施しています。

3. ガイドライン改正の動き

 知財ガイドラインでは知財リスクの危険負担に関して次のように示しています。

発注者の指示に基づく業務について、知的財産権上の責任を、中小企業等に一方的に転嫁してはならない。
発注者の指示に基づく業務について、仮に他社の知的財産権を侵害した場合、それを受注者側に一方的に転嫁させることや、その旨を契約に定めることは適正な取引とはいえない。

 しかし知財Gメンにより確認された危険負担には「下請事業者の一切の責任と負担」を求める条項もあったそうです。当該案件の事業者(発注者)に対しては既に改善要請を実施したとの事ですが、中小企業庁ではこうした対策の強化に向けガイドラインの改正を予定しています。

 ガイドラインの改正案についての具体例は次の通りです。

・ 第三者の知的財産権を侵害しないことに係る保証責任や、その保証に当たっての調査費用等の負担については、目的物の仕様決定において発注者・中小企業が果たした役割等に応じて適切に分担することとし、中小企業に例外なく一方的に転嫁してはならないこと。
・ 中小企業に帰責事由がないにもかかわらず、中小企業が第三者から訴えられた場合には、発注者は、中小企業からの、目的物の仕様決定に係る経緯等の開示要請や、第三者との間に生じた損害賠償についての求償等に応じるべきこと。


4. 危険負担の見直しによる責任範囲/業務範囲拡大への備え

 特にメーカー企業において、仕入れ先にどの程度の特許保証を求めるかというのは悩ましい点です。調査コストや人材確保の問題から、中小企業では幅広く十全な調査を実施する事が難しい場合が多く、かといって仕入れ元が際限無く調査を負担するのも難しいでしょう。

 上記改正案では取引の適正化に向けて一歩前進しているものの現行の要請を少し具体化した程度に留まっているように見受けられます。しかし今後、下請け事業者(中小企業)保護の観点から特許保証についても一定の要請、ひいては規制が更に強化されていくのであれば、仕入れ元の企業では特許クリアランスの範囲を見直す必要に迫られる可能性も出てくるでしょう。

 見直しの結果、新たな対応に向けて社内体制の拡充を見越しておく必要が出てくるかもしれません。その際には社内だけではなく外部のリソースも選択肢として有効です。アズテックを始めとする調査会社ではスポットの調査依頼ができますので、環境の変化に応じて機動的な体制確保が可能です。これを機にアウトソーシングの検討をしてみてはいかがでしょうか。またこうした業者検討の際には展示会を利用するのが効率的です。知財をテーマとした展示会もありますので是非足を運んでみてください。

2024知財・情報フェア&コンファレンス出展のお知らせ

 2024年10月2日(水)~10月4日(金)の3日間に渡り東京ビッグサイトにて知財・情報フェア&コンファレンスが今年も開催されます。知財関連のサービス、システム、ツールや、関連団体が一堂に会す展示会で、企業の知財担当者や技術者、特許事務所など多くの知財関係者が例年来場されています。

2024知財・情報フェア&コンファレンス
https://pifc.jp/2024/

 アズテックも先日のお知らせの通り出展いたします。今回は過去のご依頼の中から当社の活用事例を中心にまとめた「事例集」をブースにてお渡しする予定です。当社のような調査会社を初めてご利用になる方が少しでもご依頼のイメージができるよう、そして調査会社を既にご利用中の方にも更なる活用のヒントとなるよう作成いたしました。当ブースにて多くの方にお会いできる事を楽しみにしております。
当日は業界経験の豊富な営業担当に加え、第一線で活躍するサーチャーもお待ちしておりますので、この機会に調査実務に関するお悩みを何なりとお尋ねください。

営業部 小倉

【参考文献】
知的財産権に関する紛争の責任・負担を下請事業者に転嫁する行為への対応について (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2024/07/20240731001/20240731001.html

知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形について | 中小企業庁 (meti.go.jp)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/chizai_guideline.html

知的財産取引に関するガイドライン
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/chizai_guideline/guideline01.pdf

中小企業政策審議会(第35回) 配布資料
【資料2-3】振興基準改定案 説明資料
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/2022/220622HS/02_3.pdf

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