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何も辞められなかった男が仕事を辞めた話。


もう、これ以上ここで足踏みをしてはならないという確かな感覚があった。

土日は最低限の家事だけを終わらし、14時過ぎから発泡酒を飲み始め、22時には自己嫌悪に陥る、というルーティンを3ヶ月繰り返していた。

————————新卒で入社した会社に5年間勤めたが、辞めたのだ。

俺は、継続的に行う物事を、外的な要因を除いて辞めたことが無い。

部活動、アルバイトは学校の卒業というタイミング。
彼女はフラれるというタイミング。
(進研ゼミは半年で課題を溜めて辞めた気もする。)

要するに、自分から物事を辞めるという決断に至ったことが無いのだ。

この事実は俺にとって、悪くなかった。
俺は人より真面目だから一つの物事が続けられていると思っていたし、
他の人は熱意が無いから途中で辞めてしまうとも思っていた。

最終的に仕事を辞める決断に至った理由は、自分の任されていた仕事から逃げ始めている、ということを俺自身が発見したことによる。

そして、仕事から逃げる根本的は原因は、
俺がこの仕事に興味を持っていないことにあると確信した。

となると、俺にとって、
熱意を持てるし、それを仕事として扱いたいものは何なのか。

それは、「書くこと」なのだと思う。

いや、正確にいうと、熱意を持てるものというより、
自分が「書く」という行為で世の中に爪痕を残せるのかどうかを確かめてみたい、と言った方が本心に近い。

よく「好きなことを仕事に出来ている人はほとんどいない」
という意味合いの言葉を聞く。
これは、果たして本当なのか。

確かめに行きたい。

俺が誇りに思っていた、「今まで何も途中で辞めたことが無い」という長所によって、俺は人生を縛られていたのかもしれない。

本当は、やりたいことは分かっている。
けれど、失敗したり、才能が無いことが露呈されることが怖いからこそ、
今やっていることを続けるしかなかったのだ。

何も辞められなかった男が、自分のやりたいことで、
世の中に爪痕を残せるかを確かめに行く旅が始まる。

あいにくコンパスは支給されていないが、
根拠の無い自身はポケット一杯詰め込んできた。

行けるところまで行く。


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