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個サルで喧嘩が起こるほどのフットボール熱

僕はこの滞在中ブライトンで行われている個サル(アプリを通してフットサルをしたい人が集まって試合を行う個人参加型のフットサルのこと)に10回以上参加しました。ブライトンで開催されている団体の全てに顔を出したと思います。


個サルが開催されるコート


1回1時間およそ1000円で参加できるこの個サル、毎週、いやほぼ毎日開催されています。毎回定員いっぱいになるほどの需要の高さに、驚かされますしみんなフットボールが好きなんだなって思います。
レベルは主催している団体と運にもよりますが、フットボールをただ楽しみたい人や身体を動かしたい人が集まる時もあれば、めちゃめちゃ上手い人が集まることもあったりと年齢も含めて様々な人がプレーしに来ます。ただ、共通して言えるのは、レベルが高い低い関係なくみんな本気ですし、熱い。その日初めて会った即席のチームだとはいえ、目の前の勝利だけを目指しています。


自分の目的にあった個サルの場所を見つけて何回か定期的に参加していると、見覚えのある人や、何曜日には必ずこの人がいる、とか様々なことが分かってきます。

長い期間を空けて久しぶりに個サルに参加した際にも一緒にプレーしたことがある人がちらほらいました。正直言って上手くはなく、ただ楽しみに来ている人たち。
しかし、久しぶりにプレーをしてみると上から目線になってしまいますが、「上手くなってる」笑 確実にみんな上手くなっていました。笑 短期間でこんなにも変わるものなんだなと感心した覚えがあります。

そしてこの日はいつも以上にばちばちとした激しい攻防が繰り広げられており、僕もただチームの勝利のために本気でプレーをしていました。
試合終盤になり、内容も点差もヒートアップして、遂に言い合いみたいなものが起こってしまいます。それも相手チームとの言い合いではなく、同チーム内で。
「おいなんで出さなかったんだよ」
「いや今のは出せないだろ!」
「いいや出せた。出してくれたら一点だったね」
という口論が結構激しく起こり、間に入って言い合いを止める人が出るほどにまで発展しました。



初対面でその日たったの1時間の勝利のためにできたチームで、こんなにも熱くなれるものがフットボールの良さであり、こういった環境があるのがイングランドなんだと僕は感心しました。みんな熱くなれる、熱狂できるのがフットボールです。レベルもジェンダーも上手さも何も関係なく、ただ感情をむき出しにできるものであります。
だからこそイングランドフットボールは人々に根付いていますし、以前のnoteで綴ったようにコアじゃないサポーターの層が厚いのではないかと思います。また、それがイングランド女子フットボールの人気が高い1つの要因だとも思えます。


女子フットボールを観にくる人々



そんな彼らが団結して後押しするのがワールドカップや国際戦でのイングランド代表です。(愛称スリーライオンズ
僕はワールドカップ期間もイングランドで過ごしましたし、先日の代表戦ウィークもイングランド国民と一緒になって応援をしました。
彼らのスリーライオンズへの熱は計り知れない物で、ワールドカップや国際戦の位置付けは、相当高いです。



ワールドカップ期間、イングランド代表の試合が夜に行われる日は僕のチームの夜練習もなくなりました。僕は驚いていましたが、イングランド人のチームメイトにとっては当たり前のことのようでした。


スリーライオンズが決勝トーナメントでも順当に駒を進み、ベスト4をかけたフランスとの試合が、不幸にも僕らのリーグ戦と重なりました。ただ、僕らの試合は15時からで、イングランド代表は19時から。
試合が終わってからでも代表戦に間に合うじゃん。と思っていたのは僕だけでした。
決勝トーナメント進出が決まるとすぐに、「イングランドの試合を観る準備をするために、僕らの試合時間を早めてくれ」とチームメイトからグループチャットに連絡が入ります。


いやいや、そんなことできるの?笑 

できちゃうんです。彼らが求める時間には変わらなかったですが、結局1時間前倒しされて試合が行われました。
そしてこの日、ロッカールームに集まっていつものように話していると、「フランスは本当に強いから、イングランド人は朝から緊張しているよ。」とか「楽しみで仕方ない絶対に勝つんだ」とか熱い言葉を僕に伝えてきました。
言葉だと薄くなってしまいますが、本当に凄い。としか言いようがないほど彼らにとってスリーライオンズの存在は大きく、そしてそれを本気でサポートしているようでした。

また、僕が驚いたのは、彼らがスリーライオンズを言い表すときに、三人称が「We 」になること。つまり、「私たちは」今日勝つのだ
「俺らは」厳しい試合になるけど絶対に勝つのだと言うのです。選手と一緒になって勝ちに行くというのがこのような小さなことからも伝わってきます。
僕が日本代表チームを話す時はthey だったななんて思ったり。
国をかけて戦うのは選手だけでなくサポーターも一緒で、尚且つそういった団結力や強さがないと勝てないということです。これは代表戦だけでなく、クラブチームにおいても同様に言えることです。このようなサポーターがいるチームは強いですし、それに選手もしっかり応えてくれるから、より一層応援されます。強いチームにはそれなりの強い雰囲気があります。これは日々ブライトンを応援していると感じますし、逆に先日プレミアリーグの残留争いを見に行った際には感じませんでした。団結力とか強さとかはサポーターと選手だけの関係性だけでなく、様々な要素が関わっています。例えば経営やクラブの内部やスタジアムなど。はたまた信頼とか言葉とか感情とか目に見えない部分からも。言いはじめればキリがないほどです。しかし、確実に全てが相まって結果に繋がってきます偶然や奇跡というものはそれ相応の偶然や奇跡が起こせる器がないと、やって来ないものです。全てが結果として、最終的に繋がるのだと僕は思っています。


話が少し逸れてしまいましたが、このような熱いサポーターのために選手は熱く戦いますしみんなで勝ちに行こうとします。単純なようで難しい、けど、だから強い、だからイングランドはフットボール王国と言われるのだというのを感じます。



イングランドVSフランスの準々決勝は、夜7時キックオフ。ですが、ブライトン市内のパブは昼過ぎから長蛇の列でどこのお店も超満員。
僕自身、少し舐めてました。いつものように観れるだろうと思っていた自分は馬鹿でした。
行き着いたのは、パブの外に即席で作られたベンチにも座れず、立ち見席の1番後ろから小さな画面を微かに見れほどの場所からの観戦。

イングランドVSフランス(僕の視点)


試合は負けて悔しい静かな夜になってしまいましたが、僕にとっては色んな意味で忘れられない日となりましたし、色んな意味で差を感じました。


先日の代表戦ウィーク、日本代表がウルグアイとコロンビアと対戦している頃、スリーライオンズはユーロ予選を戦っていました。
パブは勿論大盛り上がり。パブには若い女性集団がユニホームを着て応援していたり、老夫婦が静かに見ていたり、フットボール好きだろうなっていう男たちが固まっていたりと本当に老若男女問わず沢山の人が試合を観に来ています。試合を観に来ているのか、ビールを飲みに来ているのか定かじゃない人も多くいたり。でもとりあえずパブで観るかって思える場所と空気感がそこにはあるのではないかと僕は思います。
点が入れば知らない人と抱き合って喜んだり、叫んだり。何度も言いますが、誰でも感情をむき出しにできる、熱狂できるのがフットボールです。

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