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『夕凪の街 桜の国』/こうの史代

アマゾンからコピペしちゃうと「昭和30年、灼熱の閃光が放たれた時から10年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の小さな魂が大きく揺れる。最もか弱き者たちにとって、戦争とは何だったのか……、原爆とは何だったのか……」ってなことだけど。まあ、ちょっとさすがに一言では言えないなあ(~_~;)

とにかく僕は「夕凪の街」の話が好きだったかな。原爆から生き残ってしまった者には「自分だけ幸せになっていいのか?」という死ねなかった者特有の十字架がつきまとっている。そんな主人公が会社の同僚の男といい雰囲気になる。

しかし、幸せが近づけば近づくほど、あの日、道の死体の群れを踏みながら歩くことにも慣れ、川の下で腐臭を放つ死体の群れに苛立ち、姉と石を投げてしまった記憶のフラッシュバックがおこる。

その姉があざだらけになって先に死んでいる。自分だけ幸せになるなんてできない。葛藤。恋人と抱えているものが圧倒的にかけはなれている。

そんなとき、自分もまた遅れてきた死魔に蝕まれ……
それでも寄り添おうとする恋人の思いが重なり……

去来する被爆者の心が
静かに、重く、突き刺さるように、迫ってくる。


嬉しい?
十年経ったけど、原爆を落とした人は、私を見て
「やった!また一人殺せた」と、ちゃんと思うてくれとる?
ひどいなぁ。
てっきり私は、死なずにすんだ人かと思ってたのに。

……痛烈無比。

これは読んでおいて損はないというか、日本人なら読んでおいたほうがよいレベルの逸品かと。


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水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。