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エスカリバーダ和気清麻呂

時々、スペイン料理を作る。
カタルーニャの料理であるエスカリバーダを和風にアレンジ。和風なエスカリバーダ。エスカリバーダ和。和と言えば和気清麻呂だろうということで、最高の文官として顕彰された人物を妄想したという、完全に頭がイっちゃっているこじつけ妄想の記録。


材料

茄子    2本
赤パプリカ 1個
ピーマン  2個
大蒜    2欠け
塩     小匙半分
胡椒    少々
オリーブ油 大匙2
米酢    大匙2
炒り子   好きなだけ

皇居周辺には文武において皇室に貢献した人物の銅像。
武官から選ばれたのが楠木正成。
文官から選ばれたのが和気清麻呂。
皇紀二千六百年を記念して昭和十五年に建立。
戦前にはお札の肖像にもなった人物ですが、現在では昔程の知名度はないかと思われます。


野菜を魚焼きグリルで焼いていく。黒い焦げが出来るまで。

天平三年(733)備前国に誕生。生誕地は現在、和気町という地名。恐らくは清麻呂に因んだ命名か。
36歳の時に起こった出来事により、日本史上に大きな足跡を残すことになる。それまではそう目立った功績はなく、きっちりと役人人生を歩んできたのかと思われる。
その頃の天皇は称徳天皇。その女帝に重用されていた僧侶が道鏡。
神護景雲三年(769)大宰府の役人が宇佐八幡宮の神託を奏上。
それによると、道鏡を皇位に就ければ、天下泰平間違いなしというもの。
この国は開闢以来、皇統に連なる者が皇位に就く習わし。それを崩すことを果たして神が告げるだろうかと、流石に懐疑的な意見が多くなる。
誰かが実際に宇佐八幡宮に赴いて、八幡神の神意を問うてくるべしとなる。


摺り下ろした大蒜、オリーブ油、塩、胡椒、米酢を混ぜる。本来、ワインビネガーを使うのを米酢に代えたのが和風アレンジ。

称徳天皇は側近の尼僧、法均尼に宇佐へ下向することを命じようとするが、女性で都から宇佐までの長旅には耐え難しということから、弟に白羽の矢が立つ。法均尼の弟が和気清麻呂。
出発前、わざわざ道鏡は清麻呂に激励。無言の圧力ということ。
(わかっているだろうが、ちゃんと吉報を持って来い)と口に出したかどうかは兎も角、無事に帰ってくれば、官位の昇進も有り得ると褒美をちらつかせる。
一方、道鏡の師は増長してしまった弟子を憂い、万一、道鏡が皇位に就くようなことになれば、申し訳なく自分は隠棲するつもりだと清麻呂に愚痴をこぼす。弟子が大それたことをしようとしていると心配しているものの、もはや自分でも制御できないとぼやいている。
さあ、どうする清麻呂。


パプリカやピーマンを焦げた所から薄皮を剥く。

宇佐にやって来た清麻呂、神の言葉を聞くために本殿に籠る。
清麻呂は本当に神の声を聴いたのか?
スピ系なことになってしまうので、本当の所は何とも言えません。
本当に神の声を聴いたのかもしれないし、そんな気がしただけかもしれない。それでも御神託があったとして、都に戻る。
言上したのは
「我が国は開闢以来、君臣の別は定まれり。無道の者は早々に排除すべし」
天皇家の血筋だけが皇位に就くべきであり、それを簒奪しようとする者は除けということ。


焼けた茄子を程よい長さに切る。

当然、道鏡はカンカン。
清麻呂を別部穢麻呂(わけべのきたなまろ)というあんんまりな名前に改名させて、足の腱を切って、大隅国(鹿児島)への配流を命じる。
この時代、都人からすれば大隅は九州の果てどころかこの世の果てのような感覚でしょう。


薄皮を剥いたパプリカ、ピーマンも細切り。

清麻呂が本当に八幡神のお告げを聞いたか否かは置いておきます。彼は自分が正しいと思うことを恐れることなく言上した。そのことは確かです。そこに真価がある。
道教にごまを擦っておけば、出世は思いのまま。自分の栄達だけを考える人ならば、そうしたでしょう。そもそも最初に言上してきた大宰府の役人はその腹積もりだったのではないか。
それは正しくない。この国を誤らせることになると清麻呂は考えたからこそ、道鏡を除くべきというご託宣を奏上したのでしょう。
相手が誰であろうと信じる所を貫いた。芯の強さを見る思いです。

パプリカ、ピーマン、茄子を調味液に混ぜる。

逆に考えると、地位とか金、力に屈する者は更に強い力や金に晒されるとあっさりとそちらに乗り換える。
仮に道鏡天皇が誕生していたら、一時は側近として重用されても、心の底からは信用されないでしょう。
褒美をちらつかされても、脅かされても信念を曲げなかった。最高の文官と認定されたのも頷ける。
天皇家の忠臣ということではなく、圧力に屈しなかった所を私は評価致します。なかなか出来ることではない。


煮干しを混ぜる。これも和風アレンジ。

そこまで罰しても、道鏡の怒りは収まらなかったようで、流刑地に向かう清麻呂へと刺客を放ちます。
九州の入り口である豊前に着いた清麻呂、そこに追いついた刺客。絶体絶命か?と思われた時、300頭もの猪が現れて清麻呂を警固、刺客は手を出せなかったとの伝説。そのため、今でも清麻呂を祀る神社では狛犬ならぬ狛猪が神社を守る。
思うに、これは陰から清麻呂を守る者達がいたのではないか。それを猪に例えているのでしょう。気骨ある清麻呂をむざむざ殺させはしないと思った人がいたと思われる。


エスカリバーダ和気清麻呂

マリネ、和風にしたから酢の物?
大蒜の風味、塩、胡椒の味がよく米酢に溶け込む。それをしっかりと纏った野菜。そこに炒り子からの出汁が加わる。
しっとりとした柔らかさの茄子、食感が残るパプリカやピーマン、勿論、炒り子も出汁だけではなく頂けます。
皮付きの茄子から抗酸化物質のナスニン。パプリカはビタミンCが豊富。
大蒜のアリシンが食欲増進。炒り子からカルシウムと、これは立派なおかずになる。

幼少の頃、住んでいた福岡県北九州市、ここに清麻呂が立ち寄り、湯の川で足の傷を癒したという伝説。温泉が湧いていたということらしい。湯川で足が立つようになったことから、麓の山が足立山と呼ばれるようになったとか。

道鏡が失脚すると、清麻呂は都に呼び戻され、桓武天皇に仕えて、平安京への遷都を進言。京都が千年の都となったのも、この人が戻って来たから。
人間の芯の強さを示した和気清麻呂を妄想しながら、エスカリバーダ和気清麻呂をご馳走様でした。


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