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玉葱春雨炒め中華風魔小太郎

外国人が日本と聞いてイメージする者の一つに忍者があります。
しかし日本人にとっても忍者と言われても抽象的なイメージしか浮かばないと思います。それはそうでしょう。忍者とは言わばスパイ。スパイの実態があまり詳細にわかってしまったら、仕事にならない。
多くの忍者は名もなく、密かに暗躍し闇に消えていった。そんな中でも名前が残っている忍者について妄想しながら料理した記録。


材料

春雨       1袋
粒状大豆肉    お好きなだけ
玉葱       半分
シメジ      1パック (思い付きで加えたので写真なし)
生姜       1欠け
葱の青い所    少し
干し海老     大匙1
オイスターソース 大匙2
片栗粉      小匙1
胡麻油      適量
味醂       大匙1
水        大匙1
塩        小匙半分

忍者と言えば、伊賀や甲賀を思い浮かべるかと思います。彼等は特定の主は持っていなかったようですが、関東に強固な領国を形成した北条氏に仕えていたのが風魔一族。その当主が代々、名乗ったのが小太郎という名前。特に有名なのが五代目の風魔小太郎。
身の丈は2メートルを超え、目が逆さまに裂けて、牙が四本、筋肉が瘤のように盛り上がっていたと伝えられます。


生姜を摺り下ろす。

しかし、こんな怪物めいた姿では目立ち過ぎて、とても諜報活動など出来る筈もないので、かなり誇張した表現というか、わざと恐ろし気に喧伝していたのでは?。


春雨を茹でる。

北条家の始祖、伊勢新九郎が風魔一族の騎馬術の見事さを見て配下に組み入れたという話があります。怪物めいた大男だったとすれば、風魔一族とは馬術に長けた大陸から渡って来た騎馬民族の末裔?
そうした馬術や力に物を言わせた破壊や夜襲のようなことが、主な任務だったのではないかという説もあるようで。
河越の夜戦にも暗躍したのではないかと妄想。


大豆肉を水で戻しておく。

武蔵国(埼玉県)の川越は戦国時代には河越と書いていました。そこにあった城を巡る、上杉、古河公方足利連合軍と北条家との戦。天文十五年(1546)に半年にも及ぶ籠城戦の末に起こった戦。城を守っていた北条綱成の兵は三千。包囲した上杉、足利連合軍は八万と言われます。城を救うべく北条氏康が八千の援軍を率いてきたが、勝てる訳ない。連合軍は完全に楽勝ムード。だらだらと半年間も包囲を続けていましたが、敵の士気が緩むのを待っていた氏康軍、身軽になり、目印に白い布を巻いて夜襲。扇ガ谷上杉家の当主が討ち死に。連合軍は逃げ散り、北条家の完全勝利。正史には出ていませんが、この背後には風魔一族がいたのではないかと妄想。甲冑を脱いで、夜目にも目立つ白い布を目印にしての襲撃、如何にも忍びらしい戦法。


玉葱を細切り、石突を取ったしめじを小房に分ける。

『北条五代記』に如何にも忍びらしい話が出ています。
風魔一族の中に甲州透破が紛れ込んだことがあり、河原で一族が談合中に突如、当主の小太郎が松明を振ると、風魔の者は一斉に立ち上がったり、座ったりを松明の合図に応じて繰り返した。甲州者達は勝手がわからず、まごまごしていたことから風魔ではないことが見破られ、殺された。
『立ちすぐり、居すぐり』と呼ばれるもので、潜入した者を見破る手段だったという。


オイスターソース、味醂、片栗粉、水を混ぜる。

北条家の家臣に風間出羽守という人物がいました。この人物が風魔小太郎かもしれません。風間はふうまとも読めます。小太郎でなかったとしても、風魔一族との繋ぎ役だったかもしれないと妄想。


玉葱を透き通るまで胡麻油で炒める。

関東に君臨し、強固な領国を形成した北条氏ですが、秀吉率いる二十万という大軍で小田原城を包囲され、ついに降伏することに。
いくら風魔が優れた忍びだったとしても、これだけの大軍で、援軍の当てもない籠城戦ではどうにもならなかった?


シメジ、春雨、干し海老、調味液を投入。混ぜ合わせて蓋をして2分程蒸し焼き。

忍者という者はどうも正規に召し抱えられてはいなかったのではないかと思われる節があります。仕事がある時だけ使われる請負業?あちこちの大名に雇われていたと思われる伊賀や甲賀の忍者が良い例。
特定の主に仕えていた忍びが主家の滅亡や転封により職を失うことが多かったのではと妄想。というのも、真田家に仕えていた割田や唐沢という忍び一族は真田家が松代に転封してもついていかず、果ては盗賊になってしまったという話が伝わっています。


蓋を取り、少し醤油を鍋肌に垂らして一混ぜ、青葱を散らす。

風魔もその轍を踏んだようで、北条家に代わって関東の主になった徳川家も盗賊と化した風魔の対応に苦慮。
そこで元武田の忍びで盗賊稼業の向坂甚内の助けを借りる。
蛇の道は蛇と言うべきか、甚内は風魔一党の隠れ家を見つけ、一網打尽にされた風魔一族。小太郎も処刑。


玉葱春雨炒め中華風魔小太郎。

干し海老の出汁が深みを感じさせる味。玉葱も甘さが際立つ。大豆肉やシメジが絡む春雨もつるつると頂けます。
彩りに乗せた葱のアリシンが食欲を増進させる。微かに感じる生姜の風味。
低カロリーで美味な逸品。

その向坂甚内も今度は幕府に盗賊として捕らえられて処刑。
戦乱が終わり、用済みとなった忍び達は悲惨な末路を辿ったというべきか。
しかし、と妄想する。
謀略に長けた忍者達、死んだことにして姿を眩ますために、小太郎も甚内も示し合わせて一芝居打ったということはあるまいか?
盗賊として暗躍していたのも、彼等の主だった北条や武田を滅ぼす手助けをした徳川家に一泡吹かせたいと考えたからではなかったか?
戦国の闇に生き、闇に消えていった忍者達を妄想しながら、玉葱春雨炒め中華風魔小太郎をご馳走様でした。

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