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辛子蓮根から広がる妄想。細川家からあの剣豪まで。

蓮根の切り口、九曜紋に似ている。つまり細川家の家紋。
室町幕府の管領家をルーツとし、近世細川家の祖と言われる細川藤孝は足利将軍のご落胤という噂もある。江戸時代は熊本五十四万石の大名。現代においては細川護熙首相まで輩出した名家。
熊本における細川家の初代となった細川忠利公、剛毅な戦国大名だった父、忠興公とは異なり、あまり丈夫ではなかったそうな。
それを案じた家臣や料理人が滋養強壮食として作ったのが辛子蓮根。今では熊本名物の一つ。
母の実家が熊本ということもあり、久しぶりに食べたくなったので作ることに。

材料

蓮根
白味噌
米粉
おから
辛子 2種

佐賀の蓮根、かなり立派な逸品。普通にスーパーで売っている蓮根の二倍以上はある大きさ。とりあえず半分に切って使うことに。
まず蓮根の皮を剥いて酢水に10分漬けてから、沸騰するまで茹で、粗熱を取る。

まずは酢水

蓮根は変色しやすいので、この処理をしてから茹でます。以前、蓮生煮を作った時にも書いてます。

そんな待ち時間の間に辛子味噌作り。
辛子蓮根作りのレシピではパン粉を使うレシピが結構多い。しかし江戸時代にパン粉がある訳ないし、他の物を使ってみようということで目をつけたのがおから。
おからと白味噌、辛子を混ぜる。

辛子ですが、ねり辛子は増粘剤が入っているので、私は粉辛子を水で溶いて使うようにしています。出来るだけ添加物フリーに。
更に自分なりのアレンジとして、もう一種類の辛子を配合。

和からしマスタード

和辛子から作ったマスタードを混合。
辛子味噌の配合としては、
白味噌2におから1
辛子2に和からしマスタード1
これらをしっかりと混ぜ合わせ、

蓮根をぐりぐりと味噌に押し付けて、穴に味噌を詰めていく。

衣作り。
辛子蓮根は黄色い衣が特徴。
クチナシの身から作った汁で色を付ける方法もあるのですが、今回はこれを使います。

ターメリック

つまりウコン。鬱金ならば江戸時代にもあったから、再現レシピに近づく?
肝機能改善、消化促進効果もあり、滋養強壮食という趣旨にもピッタリ。
ターメリックと米粉を混ぜ、水を少しづつ加えて練り、固めの衣を作っていきます。
クチナシ汁ではなくターメリックを使った理由としては、出来るだけ水分少ない衣を作るために粉多めということです。

後はこれを油で揚げるのですが、180度の油で揚げる筈が、少し誤算。立派過ぎる蓮根のため、全体を我が家のフライパンに漬けるのが不可能。
どぼんと漬けるには業務用のフライヤーでもないと無理。ということから、150度まで油温を上げてから、転がしながら油温を上げつつ揚げることに。

ひっくり返したり、上下を逆さまにしながら、どうにか揚げる。
揚げたら、適当な厚さに切る。

衣が黄色というよりもオレンジ。米粉の量を増やすべきだったか。

造血作用があり、食物繊維豊富な蓮根。シャキシャキともっちりが同居している佐賀産の蓮根は素晴らしい。
辛子味噌、辛子が鼻に抜けるツーンとした感じもいいのですが、今回、和からしマスタードを混ぜたことで、少しマイルドになりました。程よいツーン感。
ターメリックの薬っぽいようなスパイス風味もよし。
正に滋養強壮食に相応しい。細川忠利公に献上したくなります。

忠利公、現代においても大概の日本人が知っている有名人を客分として熊本に招きました。
宮本武蔵。
ある時、一人の武士が武蔵に尋ねました。
「有名な巌流島の決闘の時、佐々木小次郎の刀が武蔵殿の頭を掠めたという話がありますが、本当でしょうか」
武蔵、燭台を手に取り、返答。
「それがし、若い頃に蓮根(はすね)というデキモノを患い、頭に傷跡があり、見苦しいので月代を剃っておりませぬ」
頭を切られたのかと訊いたのに?と思われる返事ですが、更に続けて曰く。
「もし小次郎の刀が頭を掠めたのならば、頭に傷が残っている筈。それがあるかどうか、よく御覧じろ」
武蔵は燭台を頭に近づけて、髪の生え際をぐいぐいと問うてきた武士に近付けた。
うっかりしたことを言ってしまったと、その武士は後悔したことでしょう。
何しろ相手は超の字が付く剣の達人。それが上目遣いに頭を近付けてくる。
「傷などございませぬ」
「本当か、もっとよく御覧なされ」
こわ、
口は災いの元。
しかし、武蔵の視点から考えると、命を懸けた決闘のことを茶飲み話や酒の肴のような感じで軽く問われたことが勘に障ったということでしょう。

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