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"DIVIN" Vol.17

『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。


CLOというポジションと「学ぶ」ということ


CLOという役職を知っているだろうか。

Cheif Learing Officer (チーフ・ラーニング・オフィサー):「最高学習責任者」と訳されるこのポジション。

このポジションをいち早く作り出し、企業カルチャーとして育ててきたアメリカ・GE社のような欧米の大手企業では徐々に浸透している役職。

CLOは会社のリーダーシップ強化のために「人材を育てる」役割を担う責任者である。

このCLO、昨今の日本の企業でも増えている「CHRO」とは似ているようで異なる立場。

CHROはChief Human Resources Officerの意味であり、日本語では最高人事責任者とされる。

一般にCHROというと「労務管理」や「タレント・マネジメント」(人財の採用・配置・育成・キャリア形成などの管理・支援)を所管することが多く、所謂「人事」の責任者と考えられる。キャリア形成や育成はもちろんだが、新卒採用や異動などの採用面で大きく責任を持つポジションだ。

一方、CLOの場合は先述したように『人材を育てる』ことにフォーカスしている。それは、人財育成のみならず組織開発にまで関与する形で『学習』自体に責任を持つことが求められるのだ。

初めて公の役職としてCLOとなったことでも有名なSteve Kerr氏は、育てることについてこう語った。

仕事に対するフィードバックが無いのは、ピンの見えないレーンでボウリングをやるようなものだ。
結果を把握しないで仕事をしていると2つのことが起こる。 ひとつは上達しないということで、もうひとつは、どうでもよくなるということだ。

人を育てるということは、ロードマップをともに作り、キャリアプランを共に考え、質の高いフィードバックをしていくこと。

どんなに優れた人材であっても、フィードバックが無ければKerr氏が言うように成長することはできない。

学習と求められる人材

今後、企業に務める会社員においても、フリーランスとして活動する人であっても「学習」というワードは非常に大切になってくるであろう。

「新しく知識を得る」ということはもちろん、「新しいことを知ろうとする」という姿勢自体も今後このVUCAな時代の中で個人の差別化をする一因であると思う。

不確実な世の中は従来と異なり、先が読めにくい事象が起きることが多くなった。というか、先が読めるものなんてなくなった。

今まで安泰で就職先として人気だった大手企業が苦戦をしている。コロナウイルス感染症という予想だにしなかったゲームチェンジャーにより、状況は常に変わり続けている。

そんな時、どういった行動を取るべきかを自分なりに仮説を立てて行動し、検証していくしかない。

今までは「成功法」や「王道」がどの業界にもある程度存在しており、先輩から後輩へと受け継がれてきた。

その成功法が通じない事象が連発する現代の中で、どうすれば現状を打破できるか、その鍵の1つは事象の横展開(ヨコ展)であると思う。

保険業界で起きた事象と対処法を飲食業界で使ってみる。クライアントと相対していた営業時代に培った経験をマーケティングに活かす、などだ。

想像力を働かせ、「だったら〇〇も有効なのでないか。」「あの店の接客、好きだったな。だから〇〇をしたらいいんじゃないか」という仮説と効果検証の連続だ。

話は少し変わってしまうが、先日電通のECD古川裕也さんの著書『すべての仕事はクリエイティブ・ディレクションである』を久しぶりに読み返した。

よりオープンに、そしてスピーディに事業展開を進めることが求められる現在、求められるスキルセット・マインドセットとして、クリエイティビティやデザイン的な思考がより求められるようになったと思う。

”クリエイティブ”とはデザイナーがグラフィックを作る、絵を描くということという訳でなはく、何か課題に対してアイデアとコンセプトで解決を図るということだ。

90年代に日本のものづくりの時代を作った家電メーカーや自動車メーカーたち。以前は高品質と安定した供給を担保するクオリティマネジメントのスキルが高い人材を多く排出することが重要であった。

今の時代はそれを「大前提」としながらも、発想力や柔軟性、最新のテクノロジーについての知識・知見を持つ人材が必要になってきている。

自動車の世界的な見本市であった東京モーターショーが昨年に「モビリティ」のテーマを打ち出した。

もはや「クルマ」に限らない「移動」に概念を拡張させたのは、そもそも自動車に限定することのマーケットの難しさを表しているが、移動という目で見て、どんな世の中を作っていくか、持っている技術をどう展開していくか、という発想の重要性を表していると思う。

トヨタがもはや”街”を提唱するようになったのはその一端であると思う。

そして、学習することと同じくらい大事なことが「アンラーニング」だ。

アンラーニングとは、これまでに学習してきたことを『忘れ去る』ことではなく、既存の価値観を『認識』しつつ、個人や仕事をより進化させるために今の習慣やスキルを修正すること。『学び直し』ではなく、『学びほぐし』と言われる。

変わり続ける時代の中で、変わり続けることができる人材が求められている。

企業がCLOという役職を作り、社員たちを育てることにより注力していく。その流れは当たり前かもしれない。


ベルギーのある田舎町で

オランダ人デザイナーDré Wapenaar氏が手掛けたテント。

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半分ツリーハウスで、半分テントのようなこのティアドロップ型のテント。中にはベッドやベンチ、ストレージをの機能を持つ。

元々はアートのインスタレーションとして2011年に発表されたが、現在はベルギーの森やオランダの町で宿泊も可能だ。

1泊82ドルで宿泊することができる。

このお盆休み期間、うだるような暑さのせいもあり、川や高原でキャンプする人も多かった。

コロナウイルス感染症の影響を受け、人混みを避けてキャンプやアウトドアを楽しむ人も増えている。

そんな状況はヨーロッパも同じ。人々は車を運転し、自然あふれる場所でこのティアドロップ型の可愛らしいテントで思い思いの週末を過ごしている。

https://www.insider.com/teardrop-shaped-tents-sculptures-camping-belgium-2020-7

子どもが伝える環境への投げかけ

現在、清澄白河の現代美術館での展示も大人気のアイスランド系デンマーク人の現代アーティスト、オラファー・エリアソン。

「ときに川は橋となる」展は9月27日まで。早く行かなくては。

PCバナー

そんなオラファーが制作し、発表したアプリが「AR Earth speaker」だ。

子どもたちが自分の顔を取り込むと、それに合わせた環境問題の対象物(葉や雲や木や地面など)にデジタルに移植されるというCGアプリ。

目の動きなど顔の細かい動きまで取り込まれ、ちょっと不気味なほど(!)精密に埋め込むことができる。

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子どもたちがメッセージを録音すると、この「CGの顔」をペットボトルであれ花であれ、周囲に重ねてその対象物がまるで話しているような印象を与え、制作することができる。

子どもたちが温暖化や環境破壊、気候危機についてその対象物としてアイデア、意見を発言することができるのだ。

Earth Speakrは子供たちが地球に向けて声を上げるように呼びかけ、それを観る大人たちが「彼らが言うこと」を聞くように働きかける。

「未来に生きるのは子どもたちであるため、今日の気候政策をめぐる議論において、次世代の声を明確に聞くことが重要です。私たち大人や、意思決定者、政治家たちが子どもたちのの創造的なメッセージを聞いて、真剣に受け止める必要があります。」

とオラファーは語る。

この”子どもたちに言わせて、大人たちに聞かせる”という手法は以前のDIVINでも紹介した「人種差別を無くすための授業」同じである。

子どもたちが言う「ハッとする一言」に大人たちが耳を傾け、そして行動していく。

一見可愛らしいアプリであるが、その毒のあるコンセプトと技法は、”行動にうつさない”大人たちに対して、厳しい意見を投げかける。


今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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edited by Ayumu Kurashima

IG : @micronheads

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illustration : @mihirayuta


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