"DIVIN" Vol.12
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
仕事の価値とは
つい先日読んだムーンショットの菅原さんのnoteに、そのことが分かりやすく説明されていた。
noteに書かれたこの記事は分量はあるものの、スイスイ読めてしまうのでおすすめ。
価格=単価(時給)にまつわる話から始まり、どうすれば単価を上げることができるのか、を説明している。
フリーランスの人にとって単価を上げることは死活問題だ。時間は有限であり、売上をそして利益を上げるためには、単価を上げることが唯一の方法である。
そして、それは企業で働く会社員にとっても同じことである。
営業職であれば、単価(自身の売上)を上げることが評価に繋がるのだから。
そのためにどうすればいいか。
菅原さんのnoteではそれを提供価値を上げることとする。また、価値とは自分がどう変わったかではなく、相手がどうその働きによってどう変化したか(相手の変化量)であると定義する。
「こんなに頑張ったのだから」という自分のモノサシは価値ではない。
「◯時間も時間を掛けたから」というのもではなく、その行動によってクライアントの売上がどのくらい伸びるのか、クライアントの職場にどのような変化をもたらすのか、であるとする。
自分自身も含めて、この誤り・勘違いはしがちであると思う。
誰かと一緒に行うコトであれば、仕事に関わらず、その「行動」の価値とは、自分の変化量ではなく、相手の変化量だ。
コミュニケーションにおいても同じで「なんでこの人は☓☓したのに、〇〇してくれないのだろう」と思いがちだが、そのために正しい行動ができていなかったか考えるべきであるな、と自戒を込めて思った。
雨や曇りの日が続き、家にいる時間も増えそうなこの時期。是非読んでみては。
①価格を上げて、価値を上げる
②価値は、相手の変化量である
③価値を上げるために、成長にお金をまわす
Lululemonの買収
スポーツアパレルブランドのLululemonがMirrorを5億ドルで買収。
Lululemonは1998年に、チップ・ウィルソンによってカナダのバンクーバーで誕生したブランド。
レディス向けのヨガパンツの販売からスタートしたLululemon。
質の高い商品とヨガブームが相まって、ヨガをライフスタイルに取り入れているヨガ愛好家の支持を受け、人気ブランドへと成長。
今ではスポーツアパレルブランドとしてはNIKEを越える営業利益を上げるブランドとしても有名。
ブランドのターゲットは「最高にシェイプな身体を維持するためにヨガをライフスタイルに取り入れている、コンドミニアムを所有する32歳の成功したビジネスウーマン」。
そのため、商品の価格帯はヨガパンツが1枚約100ドル(約11,000円)と高めな値段設定である。
海外で生活をしたことがある人や旅行したことがあるには覚えがあると思うが、海外ではスポーツウェアで街中をそのまま歩き回る人が多い。
ヨガパンツ、レギンスをファッションとして履き、そのままジムに向かう。ランニング終わりにお気に入りのカフェでブランチを食べる。
日本では普段着でジムに行き、ワークアウトを終えたらまた着替えて帰るというのが普通だろう。ランニングの後にそのままレストランへ、というのも少ないと思う。
海外では電車でもバスの中でもよくそんなファッションの人を見かける。
Lululemonのターゲットはまさにそんな人たちだ。
スポーツウェアに「機能性」だけでなく「ファッション性」も求めていた、もどかしさを感じていたターゲットに向けてプロダクトを作っていった。
機能性を追求したスポーツウェア、ファッション性を追求したストリートウェア。そのどちらも兼ね備えた「ファッションスポーツウェア」という市場を新たに創出し、もはや他のスポーツブランドとは異なる土俵で戦うことを選んだのだ。
市場の選択の他に、Lululemonが注目されているのがそのマーケティング手法。
NIKEやADIDASなどの大手スポーツブランドは、有名スポーツ選手やセレブを起用。カニエ・ウェストとのコラボはその最たる例だ。
lululemonは、有名人ではなく地元のヨガインストラクター、トレーナー、アスリートなどを「アンバサダー」として起用し、ブランドアイコンとした。
アンバサダーに任命した後は、プロダクトの提供の他、ヨガやランニングイベントの講師を務めてもらう。
数十万、数百万のフォロワーを持つ有名人ではなく、コアなファン、コミュニティを持つ、そして実際のユーザーであるリーダーを選んだのだ。
今ではLululemonのInstagramのフォロワーは300万人を越える。SNS戦略も注目されている。
単なる店舗やECサイトの構築ではなく、そのプロダクトを使う「周辺」まで設計・デザイしている。
例えば、Sportify。ランニングしながら聞くのに適した曲、リラックスしたい時にピッタリの曲など、様々なシーンに応じたプレイリストが作られている。
また、You Tubeではヨガレッスンのコンテンツを提供。自宅でLululemonのユーザーがヨガを楽しめる仕組みを提供している。
FacebookやInstagram、Twitterに力を入れるのは常識だろう。Lululemonで面白いのは、Pinterestにも積極的に初期から取り組んでいる。
「hairspration」「summer vibes」など様々なコンテンツが用意されている。そこには自宅のインテリアのアイデアまでも。
hairstyleのボードがあるのは本当に感動した。
「ワークアウトの時にも可愛く、素敵に髪を縛りたい」というインサイトを考え、それを提供しているのが素晴らしい。
長くなってしまったが、そんなLululemonがMirrorを約500億円で買収。
Mirrorはその名の通り、鏡型デバイスを通してフィットネスコンテンツを提供するフィットネステックのスタートアップ。
たまたま、このMirrorを含むいま注目のフィットネステックブランドを幾つか先週のDIVINで紹介し、翌日か翌々日のこの巨額の取引が成立。
今までダンベルやマットなどの器具、アパレルブランドがホームフィットネス市場を牛耳っていたが、前回紹介したようなハイテクのヨガレギンスや、Mirrorのような高性能ディスプレイを提供するブランドがどんどん出てきている。
コロナの影響を受け、この業界は更に多くのプレイヤーが参入してくるとともに、既存プレイヤーたちとの再編・コラボレーションも出てくると思われていた。
Pelotonの成長・成功は誰もが知っているし、従来のフィットネスジムやフィットネス器具市場では考えられないスピード感とスケール性を持っている。
そんなことを考えているときに、このMirrorの買収劇。
アパレルブランドがD2Cブランドを買収することにより、テック企業となり、またお互いのコミュニティを活用していくことにより、よりよい相乗効果が見込めるだろう。
今後もこの流れはさらに進んでいくのだろう。
「I ♡NY」というアイデア
世界中に影響を与えたグラフィックデザイナー、Milton Glaser(ミルトン・グレイザー)氏が脳卒中のため6月26日に逝去。
ミルトン・グレイザー氏が手掛けたグラフィックは歴史上に残る傑作と呼ばれるものばかり。
BROOKLYN LAGERのロゴもミルトン・グレイザー氏によるもの。配色もさるころながら、「B」のロゴも印象的で親しみが湧くデザインだ。
そんなミルトン・グレイザー氏の作品の中でも特に有名なものがある。
このロゴを見たことがある人は100%に近いかもしれない。
このロゴをもじって、「I ♡ ☓◯」というパロディもたくさんでている。
「I Love New York」というメッセージを記号と頭文字に変えたこのロゴ。現在の絵文字のように言葉がシンボルに置き換られたのは、この時が初めてと言われている。
このロゴはアパレルブランドやお土産物屋のオーダーではない。そのクライアントはニューヨーク市だった。
1960年代後半から1970年代前半のニューヨーク市は財政難に陥っており、街にはゴミがあふれ、地下鉄は落書きだらけ。強盗や暴動が増加し、犯罪率は過去最高だった。当時は地下鉄に乗ることはとても危険だったそう。
そこでニューヨーク州商務局は観光で財政難を克服しようと図った。
その際のキャンペーンが「I Love New York」であり、1976年に生み出されたのが、ブロンクス出身のグラフィックデザイナーが作った「I♡NY」のロゴだった。
治安を良くすること、そして観光客を誘致するとなると、キャンペーンとしては、街の清掃だったり、インフラの整備だったり、ホテルや建築物の整備・建築といったことが考えられる。
しかし、ニューヨーク市がこのキャンペーンの中でコアとしたアイデアはこのロゴだった。
ブロードウェイの俳優やフランク・シナトラなどのNYゆかりの人たちが「I Love NewYork」を歌い、街中の人々はこのロゴがプリントされたTシャツを着た。グレイザー氏は単にロゴを作ったのではなく、祭りを作ったのである。
グレイザー氏は、デザインとアートは全く別ものであるとし、デザインの目的は問題解決であるとした。
デザインが先行し、目的となってしまうことは多々ある。そうではなく、あくまでデザインは手段であるとした。
解決したい課題・問題があり、そのためにデザインで何ができるかを考えた結果であったのだ。
先述した「 Brooklyn Lager」のロゴ。
クライアントにグレイザー氏が提案したロゴは「B」の1文字であったため、クライアントは「これだけ?」と思ったそうだ。
ところが、グレイザー氏は「何も言わずに持って帰り、テーブルに置いて奥さんだけに見せてごらん」と言った。
その通りにしたところ、「B」のシンプルな美しさが浮き立って見えたと言う。
グレイザー氏は「ブランディング」というものの天才であったとも言われる。当時、治安が悪く印象の良くなかったブルックリン。その名をそのままビールブランドの名前にしようと考案したのもグレイザー氏だ。
2001年の9.11同時多発テロの直後、グレイザー氏はロゴに少し手を加えている。ハートの左下を少しだけ黒く焦がし、単語を3つ追加した。
その言葉は、「今まで以上にニューヨークを愛している」というメッセージだった。
悲劇的なテロ事件の後に立ち直り、ともに前に進んでいこう力強く表すメッセージは、「それでもなお、そしてこれまでよりも愛している」という思いだった。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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