見出し画像

"DIVIN" Vol.9


『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。

週に一度、基本的には日曜に更新しているこのDIVIN、ついに9回目になった。

つまり、2ヶ月間続いたことになる。

始めたのは、緊急事態宣言が出た頃だった。

週末に外出ができなくなり、自分に使える時間(特にインプット)が増えたとはいえ、よい習慣になった。

『ニュータイプの時代』などで知られる山口周さんがTwitterでこんなことを仰っていた。

そして、また違うときに目にしたベイジの枌谷さんがnoteの中で仰っていた1文。

情報発信が習慣化すると、発信欲が芽生えます。仕事や生活の中で経験するあらゆるものが、ネタになるのではないか、という目で見るようになります。
気付きが増え、解像度や洞察力、想像力が上がっていきます。やがてそれをコンテンツ化していきます。この過程では、論理思考力、言語化能力、構造化能力、抽象化能力が磨かれます。
そして情報発信をし、何らかの評価が得られます。イイネ数かもしれませんし、RT数かもしれませんし、PVかもしれません。ゲームのような感覚で、それらの「ご褒美」がうれしくなり、また発信をしたくなります。

このサイクルに入るためには、習慣化までの努力が必要です。習慣化できるまでは、頑張って投稿を続けるなど、自分を奮い立たせる必要があります。例えばnoteでは、毎日の投稿を自身に課している方もいます。実践している人に話を聞くと「発信の壁がなくなった」「発信が自然にできるようになった」とおっしゃることも多いですが、習慣化とはこういう状態です。

情報発信をする100のメリットを5つに分けて説明されていたのですが、その5つ目の「成長サイクル」という点が分かりやすく、自分自身の行動を踏まえ「確かに…」と思えるものでした。

山口周さんのツイートの通り、インプットが少ないものは中身がスカスカになる。

自分がピックアップしたトピックスの内容を後で読んでいても感じるものであるし、他の記事を読んでいても感じるものでもある。

特に海外の事例・事件について報じているものは情報収集が少なく、偏っているものが多いと思える。

そんなことを書いていると自分もちゃんとしなくては、と思ってきて何だか萎縮してしまいそうになるが、情報を得ることを続けつつそれを多角的に捉えること、主観的に捉えるのではなく、客観的に考える癖を付けていこうと思う。


言葉より行動を


先週のDIVINでも伝えた、企業の #Blacklivesmatter にまつわる行動。

LA発のエシカルファッションブランドとして人気であったReformationが、SNS上の行動とは裏腹な人種差別的な社風と労働環境を次々と告発された。

そのトピックの中で自分はNIKEの投稿も取り上げた。

NIKEの投稿が称賛される一方で指摘もある。

それはNIKE自体が人種差別構造(systematic racism)を持っているのではないか、というもの。具体的にはボードメンバーの人種構成に対するものである。

実は先週のDIVINを書いている時もそういう記事が上がっているのは知っていたが、複数の記事・意見を読めておらず、取り上げなかった。

今回はこの一連の報道・指摘について。

QUARTZのこの記事の中でNIKEの構成について、グラフでまとめている。

全従業員のうち白人は半数以下の43%であるのにも関わらず、ボードメンバーのうち77%が白人である。

ラテン・ヒスパニックは全従業員のうち19%を占めているが、ボードメンバーには僅か3%しかいない。

スクリーンショット 2020-06-14 17.10.01

ただし、この記事の中ではNIKEだけを例外として攻めているのではなく、名のしれた大企業は更に悪い状況であると伝えている。

S&P500のうち187の企業(つまり37%)は、ボードメンバーに黒人が1人もいないとされている。

 It noted that while some tech giants, such as Amazon, Apple, and Facebook, have added black members to their boards in recent years, Cisco, Oracle, and Intuit still had none.

今週この記事を再度読み、そして他の記事も読んだ。

紹介するのはmarketingweekに寄稿された記事と、NY大学スターンビジネススクール教授であり、著書『the four GAFA 』でも有名なScott Galloway氏の記事。

Marketing Weekの記事のMark Ritson氏の記事は読み応えがあった。

記事の冒頭で彼は、彼自身が過去にルイ・ヴィトンに携わっていたときの思い出を語る。

"jouneys"という一連のプロモーション・ムービーが完成し、パリでルイ・ヴィトンのチームにその動画を見せてもらったときに感動して泣いたこと。

こんなに美しい動画は見たことがないと思わず涙が出た、と当時の気持ちを語る。

それからケンブリッジで教授となり、ある日映画館に行った際にたまたま90秒版のこの広告を目にすることになった。

自分が好きな、しかもロング・バージョンのこの動画広告を見れることに喜び、そしてこのような大きいスクリーンと音響で観ることで他の観客はどんなリアクションをするのか楽しみにしていた。

が、ムービーが流れると、観客は思ってもいなかった行動を取る。

人々はブーイングし、「最低!」と叫び、前の女性客は「全くもってナンセンスだったね」と一緒にいた男性に話す。

思わず映画館を出て街を歩きながら考えた彼は、自分自身が「消費者としてはではなく、LVのマーケター」として動画を見ていたことに気付く。

LVのチームをよく知り、彼らの思いを知っていたため、気付かぬうちに消費者としての目で見れなくなっていた、と。

もちろん、このムービーが刺さる人も世界中にたくさんいるが、ケンブリッジの映画館にフレンチ・ゴージャスを求める人がいるのか、経済が停滞し、アメリカ中で苦悩する人が多いこの世の中で、誰がこの広告を求めるのか、と。

その簡単なイマジネーションがなくなり、つい「皆が感動してくれるだろう、喜んでくれるだろう」と思っていた自分に気付く。

記事ではその流れで、ブランドの内部に入る(入ってしまった)人間はきちんと自社や他者について考えて客観的に行動しなければいけない、と自戒を込めて語る。

NIKEの例の投稿をまず引用し、それから有名企業たちの一連のこの運動の中での、WALK(行動)とTALK(言葉)を伝える。

WALKでは例としてボードメンバーたちの写真を、TALKでは声明のキャプションを載せている。

スクリーンショット 2020-06-14 17.43.06

スクリーンショット 2020-06-14 17.43.01

スクリーンショット 2020-06-14 17.42.53

Markは記事内で、「人種の構成を何%にするという規則を作れ!とか、人種差別主義者だ!と批判している訳ではない。スマホで”マーケティング”するのであれば、まずは行動(WALK)をしようよ。」と述べる。

「これがある日の北欧のゴルフ場での記念写真ではなくて、NIKEやADIDASと言った大企業の姿なんだ。」と。

Scott GallowayはNIKEや、その多くの広告を手掛けるWieden+Kennedyのメンバーに多くの友人がいることを踏まえてから(しかも元ボスはNIKEのボードメンバー)、NIKEの今回のキャンペーンは良くないよねと語る。

Scottは、行動を伴っている企業を紹介し、最後にこう記事を締めている。

Actions that address social justice are powerful messages. Messages about the importance of social justice are just messaging. We are the sum of our actions, not our words. Firms, and all of us, are learning we need to be more.

そして、先に紹介したMarkの記事の最後のエピソードがとても良いので日本語で紹介。

昨年、ビヨンセとリーボックの間で有名な噂がある。
彼らは共同ブランドのコレクションの可能性について話し合うために会ったとされる。
話によると、リーボックチームのプレゼンを途中でビヨンセが遮り、こう尋ねた。

「彼らは私が製品化の際に一緒に取り組むチームですか?」

(この事件の存在自体をリーボックは否定しているが)彼らは、「これが実際のプロジェクトチームである」と答えた。
ビヨンセは立ち上がり、ドアに向かって歩いた。
 「この部屋には誰1人も、私のバックグラウンドや肌の色、出身地、そして何をしたいのかを反映していません。」と彼女は言い、部屋を出た。

黒人の生活・人生に真剣であるならば、まずいくつか行動しよう。そうでなければ、それはただの話(TALK)でしかない。

先々週に巻き起こったNIKEへの一部批判も影響したのか、アメリカでは(どんなに小さいステップだとしても)具体的にどのように行動していくのかを少しづつ表明する企業が出てきている。

それは「今すぐマイノリティをボードメンバーに加える」というものではなく、寄付のリンクを貼る、寄付をする、社内でワークショップを行って話し合うといった小さな行動たちだ。


”子どもに伝えさせる”という力


幡ヶ谷にあるパドラーズコーヒー。

居心地が良い空間と美味しいコーヒーが好きで僕もたまに足を運ぶ店だ。

そんなパドラーズコーヒーがInstagramで紹介していた動画。

他の人がシェアしていたのだがリンク元が見つからなくなってしまい、困っていたところパドラーズが再度シェアしており、今はプロフィールに動画のリンクも固定している。


アメリカの教師ジェーン・エリオットさんが行った授業の様子を収めた動画。それに、日本語訳がついている。

彼女は、マーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺された翌日の1968年4月5日にこの「青い目と茶色の目」と呼ばれる実験的な授業を行った。

最初にジェーンさんが子どもたちに黒人や他の人種について聞くと、その答えに驚く。

「差別」というものがまだ理解できておらず、それが普通であるかのように純粋な綺麗な目でズバズバ言う姿に唖然となる。

それもそのはず、先述したように人種差別が強く残るまだ60年代の話だ。

人種について子どもたちと話し合ったあと、彼女はクラスの子どもたちを「青い目」か「茶色い目」かで2つのグループに分ける。

そして、それぞれに異なる扱い(差別)を行っていく。最初は楽しんでいた子どもたちが身体で、心で差別を”感じて”いく姿は印象的。

16分間の少し長いムービーだが、観てもらいたい動画。

この”授業”をやるというだけでもかなりチャレンジングである。いま同じようなことをできるかというと難しいと思う(特に日本でやったら大炎上しそう)。

この取り組みの何が素晴らしいかと言うと、「親に授業の様子を見させた」ことであると思う。

純粋無垢な子どもたちが語る言葉は正直でときに危険だ。それは建前やタブーが無く、ただただ素直で思っていることを言うから。

そんな彼らがどのように感じ、変わっていくかを親が観ることで、間接的に自分自身の考え、振る舞いを改めるキッカケになる。

世界でも有名な広告賞である「カンヌ」を受賞したこのキャンペーン。当時、初めて見た時に衝撃だった

喫煙所で子供に「タバコの火をくれ」と言われる大人。

もちろん彼らは「あげないよ。」と答え、「身体に悪いし、肺がんのリスクもある。吸っちゃいけないよ」と優しく諭す。

そして子どもに去り際に1枚の紙を渡される。

その紙には「ぼくのことを心配してくれたけど、自分自身はどう?」と書いてある。タイの禁煙キャンペーンの一環だ。

ジェーンさんの”授業”とこの広告に共通していることは、「真実であることを子どもを通して伝える」ことだ。

至極普通で真実であるハズのにも関わらず、大人になるとそれまでの経験や考えや、交友関係等が邪魔してくる。

それを絶対的に正しい、善である子どもを通して伝える。それは単に「人種差別はよくないよ」と言われるよりも心を打つ。


30歳の自分は今まで90ヵ国ほどの国を旅し、様々な人種の友人がいる。

日本人であることで、アジア人であることで、海外で人種差別を受けたこともある。

アフリカ・ケニアで働いたこともあり、黒人の部下に囲まれて仕事をしていたこともある。黒人の彼女がいたこともある。

そのため、他の人よりはちょっとは広い考えを持っているかもしれない。

そんな自分であってもつゆ知らずの内に差別的な行動・マインドをとってしまうことはあるだろう。

子どもに伝えられてハッとする前に行動していこうと思う。


今週見つけたブランド

テキサス・オースティンのテーブルウェアブランド「Kinn Home」

スクリーンショット 2020-06-14 18.53.39

サイトのコピーや色使い、写真もとても素敵。

商品をマウスオーバーした際に切り替わる写真も可愛らしく、ついつい色々見てしまう。

スクリーンショット 2020-06-14 18.54.35

ポルトガルで作られた食器を中心にテーブルウェアを販売している。

初めて購入するときは30日間返品可能のトライアルセットもあり、とてもお得。

自分で直接商品を探すか、5つのクイズに答えることで自分に合ったものを選んでくれる機能も。

そのクイズのクリエイティブも温かみのあり、サイト全体で世界観が統一されている。

スクリーンショット 2020-06-14 18.51.11


このクイズ形式というものはとても良い手法で、人は自分で選んで出てきたその結果がまるで運命の出会いで、かつ完璧な商品であるかのように感じる。

たった5問の1分も掛からないものであるのにも関わらず、自分にピッタリの素材とサイズ、色を見ていると愛着がどんどん増す。

Instagramの投稿も北欧っぽさのあるきれいな写真が並ぶ。

同じようにただ商品が並ぶだけでなく、他のD2Cブランドと同じように強いメッセージがあり、生活に関するコラムやクラフトマンシップへのこだわり、そして環境や人権問題への取り組みを伝える。

Our time at the table is our pause button. Meals can become moments and moments can become memories. So grab a plate, pull up a seat, and stay a while.
Eat well, Live simply.

というメッセージをサイトやSNS全体から感じる。


今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

『DIVIN』への感想・コメントは #DIVIN のハッシュタグをつけてツイートいただけると嬉しいです。

----

edited by Ayumu Kurashima

IG : @micronheads

twitter @micronheads_new

illustration : @mihirayuta



この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?