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こんな職業があるなんて知らんかった。天職に出逢えた私の話。

こんにちは。プロップスタイリストの遠藤歩(@endoayumi817)です。

みなさんは「プロップスタイリスト」という職業、聞いたことありますか?
私はこのお仕事を始めて約8年目になります。

今インスタで「#プロップス」と調べたら16575件ヒットしたのでなんとな〜く聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

「#プロップス」と検索して出てくる写真を見ていると、結婚式や結婚パーティーで記念写真を撮る時に手に持つためのスティック状のアイテム(唇型とかメガネ型とか)の写真やったり、誕生日パーティーで記念写真を撮るために壁に装飾してる写真がいっぱい出てきました。

ふむふむなるほど。今こういう感じでこの言葉が世の中では浸透しているんやな。

「そしたらプロップスタイリストってのは手に持つためのスティックのやつをめっちゃ作ってる人のこと??記念日に壁を飾るための人??」

という発想になるかと思いますが、惜しい。ちょっと違う。

「プロップ」というのは舞台用語で“小道具”という意味を表しています。なので簡単にいうと、“小道具をあやつる人”ですね。なんかうさんくさいけど大丈夫なんで安心してください(なにが)

日本では今こんなんやけど、海外ではポピュラーな職種です。海外では主に「食料品」や「キッチン用品とか文房具とかのライフスタイル小物」、「化粧品」、「バッグやアクセサリーなどのファッション小物」などなど主に人ではなく物をスタイリングするプロフェッショナルの方達のことをプロップスタイリストと呼んでいます。

さて、では私が名乗っている「プロップスタイリスト」とはなんなのか。海外での定義と違ってる時点でうさんくさ度が高くなってまいりましたが、簡単に言うと、

『ありとあらゆる空間を装飾する人』

です。
そう、物の撮影のスタイリングはもちろんのこと、人の撮影のための背景のセットも作るし、イベントでフォトブースも作るし、ショーウィンドーディスプレイやホテル・店舗の内装や装飾なんかもします。

大好きな松坂桃李さんの誕生日パーティーの装飾もやりますし(呼ばれたことないけど)、大好きな椎名林檎様のお家のコーディネートだってします。(呼ばれたことないけど)

はい、冗談はさておき(否、私はマジメだ、誰かコネはないか)、簡単な仕事の流れでいうとこんな感じです。

デザインを考える

実際に使う小道具を探す、買う、借りる、世の中になければ作る

現場でスタイリングする(セットを作る)

最近は企画から携わるお仕事が多いです。


ちなみに「小道具」でよく間違われがちなのですが、ベッドやソファーなどの大きいものでもこれまた小道具です。えーなんで〜って感じですが、大きさはまったく関係なく、インテリア家具雑貨の全部が小道具なのです。
逆に「大道具」はセットの枠組みを立てることを指します。つまり壁、床、天井などのベースになる部分を作る大工さんのような存在ですね。
ついでに言うと、ティーカップやペンなど手に持つ小道具は「持ち小道具」とさらに細分化されています。

というわけで、1点、大道具さん(美術さん)と私が違う点は「トンカンしない」というところですかね。壁立てたり、家建てたり、そういう大工さんな作業は私では知識も技術も人手も足りないのでプロフェッショナルにお任せしています。ほんと素敵な大道具さんいっぱいいらっしゃって、頼りになります。

と!いうわけで!
定義なんて無視してやりたいことはなんでもやるという荒技。
まだ日本のみなさんがあまり知らないのを良いことに「プロップスタイリスト」という職業を完全にのっとっています(え)
『お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの』というまじで衝撃的な定義をあみ出したジャイアンに負けず劣らずなワンマン具合ですが、これがまたいろんな可能性があっておもしろいんです。未知な職業を切り開いていく醍醐味でもあったりします。

「遠藤具体的にどんなお仕事してんねん」はこちらの記事に実績をまとめたものが載っているのでぜひご覧ください♡
あとHPもあるのでそちらもよろしければぜひ♡


では、ここからは一体私がこの職業にどうやって出逢ったのかお話ししていきたいと思います。

私がこの職業に出逢ったのは大学3年生ももうすぐ終わるころ。そろそろみんなが将来について真剣に考えはじめる。そんなタイミングでした。(憧れのエッセイ風書き出し)

私が当時通っていた大学は日本大学芸術学部演劇学科装置コース。

中学生の頃に劇団四季の「CATS」に出会い、舞台の上だけでなく会場も含めて空間全体に猫の視点のスケールで作られた大きなゴミたちが装飾されてる特設劇場に大興奮し、「私!このお仕事がやりたい!」と少女遠藤の目は爛々と光輝きハートは熱く燃え上がり、それからずっと舞台美術家になることを夢見るようになりました。



私はこの大学に行く以外の選択肢はまったく持たず、むしろ「私を合格させなかったら一体誰を合格させるのだお偉い先生方よ」というどこからやってくるのかわからない謎の自信をみなぎらせて、高校3年間励んだテニス部で真っ黒に日焼けした顔と筋肉で力づくで入学できた学校でした(違う。ちゃんとデッサンの特訓した。)


そして憧れの舞台美術が専門的に学べる「装置コース」で過ごすこと早2年半。
私はくそマジメな性格なのと、誰よりも優等生でいたい何者かでありたいという自己顕示欲が半端ないヤバいやつだったので(今思うと言葉にできないくらい本当にヤバいやつだった)、ほぼ毎日授業後には先輩の舞台の大道具製作のお手伝いに行ったり、小劇場から商業演劇までいろんな舞台の仕込みやバラシのお手伝いに行ったり、テレビ美術の大道具製作のバイトをしたりと「誰よりも一つでも多くの現場を経験して誰よりも一つでも多くのことをできるようになりたい」という思いから必死で自分に負荷をかけて過ごす日々でした。負荷をかけ過ぎてストレスで過敏性腸症候群にもなりました。

しかし装置コースはたったの13人のクラスだったにもかかわらず、どうしても自分が1番になることができなかったのです。

入学してみてわかったのは

1、模型づくりが苦手。
2、自分の絵がヘタ。(私以外12人みんな絵がめっちゃうまい)
3、図面書くの苦手。
4、争い事が苦手。(年に1、2回しかない実習で美術プランナーになれるのは1人だけ。戦わなければならない。)
5、業界全体の年功序列が根深い。

舞台美術家になるためにはめちゃくちゃいろんなことができるようにならないといけないことに入って初めて気づいたんですね。

◆現場に出て大道具を作ることや建て込みの技術は身についても、美術プランナーとしての力が圧倒的に欠けていること。
◆頑張っても頑張っても「苦手→好き」にならないこと。
◆周りのみんながとっても優秀で思ってた以上に自分が何者でもなさすぎたことに対する自信喪失。
◆年功序列の根深さによる“若造が果たしていっちょまえに食べていけるのか?”という一抹の不安。

と諸々の理由により、“果たしてこれ以上頑張ることに意味があるのだろうか?”と考えるようになりました。


そして決定打は“舞台のセットをデザインする”ということの中で一番大事な「演出に即した美術にしなければならない」という点がめっっっっちゃ窮屈に思えてしまったことです。
上手(右)にドアがあって下手(左)には2階の建物から降りてこれる階段があって何たらかんたらで…といろんな演出を考慮して、物理的に可能な美術プランをあげていかなければいけないことに対して「果たして私らしさとは?どこで?出せば?」となってしまったんですね。

今になってわかりますが、舞台の美術プランナーとして一番大切なことは「自分らしさ」ではなく総合芸術として、演出に即したデザインの中でいかにお客様にあっと思って頂ける物を作れるかどうかだと思うので、当時の私は若いがゆえの「私のやりたいことはこれで〜私が〜私が〜」というただ自分がやりたいことを実現させたい欲だけで考えてしまっていたなぁと。
アーティストとクリエイターの違いをわかっていなかったと思います。
これどこの職業でもあると思うけど、若い人たちは特に、この違いに早く気づいておいた方が何かと気持ちがめげなくて済むと思う。


さて、そんなこんなで自分が1番になることはこの業界では厳しすぎる。つまり圧倒的に向いてない。そう、向いてない!!!!という衝撃の事実を受け止めて、長年抱いてた夢をバッサリ諦め、そこから半年間ライトな引きこもり生活を始めました(え)


半年間の間に、「マクロスF」「とらドラ」「エウレカセブン」「涼宮ハルヒの憂鬱」を始めとする素晴らしいアニメの数々に出逢え、当時まだPinterestはなかったのでTumblrとmixiのコミュニティで好きな画像を永遠に集めまくり、フォトショイラレを買うお金はなかったのでフリーの編集ソフトGIMPを完璧にマスターし意味不明なコラージュ画像を作り続ける日々。

約8年も抱いてた夢を諦めたのに、思ってた以上にスッキリしたようで、引きこもりながら今後私はどうやって生きていくのだろうかといろんなことをやりながら(主にネット上で)(お菓子食べながら)考えていました。

そして転機は突然やってきたのです。

ライトな引きこもり生活にも飽きてきた頃、ある募集記事が目に飛び込んできました。

「プロップスタイリストSAKURAのアシスタントを募集します」

たぶん31年生きてきた中で、この瞬間以上に運命を感じたことはなかったと思います。

私は高校生の頃から写真家の蜷川実花さんの強オタで、作品はもちろん生き様から何から何まで憧れてそれはそれは追いかけていました。
当時まだtwitterもインスタもブログも無く、実花さんの情報を得るにはHPを見るしかなかったので、私はその更新頻度の低いHPを毎日見るのが楽しみでした。

そして突然目に飛び込んできたその募集記事には実花さんの撮影で使用するセットの写真が数枚貼られていました。

「え!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!これはもしかして実花さんの撮影のセットを作るお仕事!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????????????」

自分のやりたかったことはこれや!!!!!!!!!!!!!!これしかない!!!!!!!!!!!!!!誰にもこの座は渡さへん!!!!!!!!!!!!私がやるんや!!!!!!!!!!!!(まだ自己顕示欲強めのヤバいやつ)ともんんんのすごい勢いでパジャマのままコンビニに行ってもんんんのすごい勢いで履歴書を書いて、もんんんのすごい勢いで郵便局に速達で出しにいきました。


初めての現場は永ちゃんでした。すごい。永ちゃんが目の前にいる。でも私は永ちゃんより実花さんが写真を撮られてる姿にただただ感動し、ただただ夢みたいで、ただただここで死ぬほど頑張ろうと思いました。

当時の日記に「夢は願えば叶うんだよ」って書いてありました。

ということで本当にありがたいことにSAKURAさんのもとでアシスタントとして多くの、本当に多くの大切なことを学ばせていただきました。こんな経験他でなんて絶対にできない。プロフェッショナルのてっぺんの仕事をたくさん見せて頂けて、経験させて頂けて、そしてこの職業に出逢わせて頂けて、神様ってやっぱいるんやな〜って思っています。(突然のスピリチュアル)

余談ですが私は当時まじでヤバいやつだったので一般常識も皆無だし、自己顕示欲高いし、「だってでも」と常に自分ができないことを何かのせいにしていたり、一度言われたことを平気で忘れて二度三度同じミスを繰り返して本当に迷惑をかけたし、すぐ泣くし、大切な大切な同期の友達に最低なことを言って傷つけてしまったりもしたし、とにかくあの頃は「仕事」ということを何一つわかっていなかった自分がいます。
今一人で8年間やってようやく気づけたことがたくさんあるので、学生の時分に知っておいた方がいいことやアドバイスできることはどんどん発信していきたいなと思っています。
(いやもうほんと迷惑しかかけてなかった自信があるので今になっての反省と申し訳なさがすごい。)


と!いうわけで!プロップスタイリストという天職に出会えたのには大きく2つの理由があると思います。

1、夢に一度挑戦した。挑戦してみて初めて向いてないことに気づけた。

2、好きなものをとことん追いかけていた。興味のあることや好きの出し惜しみをしていなかった。

何事も挑戦してみないとわからへんこと山の如しです。あかんかったらあかんかったでその気づきや失敗も大きな学びやし、自分の向いてないことに気づけるって大きな成長やと思います。大きなものを捨てたら大きな新しいものがまた入ってくる。必ず。はい。

それからめちゃくちゃ好きなものは絶対に何かしら縁があります。いろんな人に「私○○が好きやねん」と伝えておくと、いつかその人がその夢を叶えてくれるかもしれません。いつどこに何が落ちてるかわかりません。それを拾えるか拾えないかは日頃からそれに対してどれだけのアンテナを張ってるか。運命が大きく変わるわよ(細木数子風)

学生の皆様にアドバイスするとすれば、学生のうちに、何か一つでいいからめちゃくちゃ得意なことかめちゃくちゃ好きなことを見つけておくと最高です。欲を言うなら何か一つ技術なり知識なりを誰よりも極めておくとめちゃくちゃ強いと思います。
いざ就職したけど思ってたんと違った〜〜〜ってなったとき(というかなる)、しばらくそこにとどまって自分なりの頑張り方を探るもよし。でもそこで自分に人より得意な技術や自信を持って何かできることがあるとするならば可能性はもっと広がると思います。

とにかく好きを極めることっていいことしかないです。好きなこと好きなだけすればいいです。


そして私がプロップスタイリストという職業を選んだ理由も2つあります。

1、誰かと争うのが苦手なので、あえて戦わなくても良さそうなライバルがいなさそうな職業だった。

2、多くの方が「プロップスタイリストさんのいる現場、本当に助かる」「必要な存在」「モデルさんのテンションがセットがあるのとないのとでは全然違う」という話をされていたのをアシスタントの時に横で聞いてて、とても需要がある職業なのだなと知れたこと。

誰かと争うの、本当に苦手で。コンペだの勝負だのって、毎回こう、気が消耗するというか、あかんかった時に「自分の存在価値ってなに…」とかって無駄に凹んでしまったり。
あとライバルの多い職種。例えばグラフィックデザイナーさんとかってもうめっちゃ世の中にいらっしゃるじゃないですか。そうなってきた時に私だったら「自分よりうまい人がごまんといる…私って…」みたいに1日に1回ぐらい落ち込んでしまいそうです。皆さん一体どうやってそこんところ解決されてるのだろう。お話を聞いてみたい。
なので私はこういう職業に就かれている方をめっっっっっちゃくちゃ尊敬しています。

自分がメンタル弱小なので、あえてこう誰もやってなさそうなお仕事をするという選択は自分に合ってたなぁと思います。

また、「需要があるのにやってる人が少ない」ってすごいビジネスチャンスかもしれへん。この職業で間違いない、私が切り開くぞ。これからどんどんテクノロジーが発達していく中で、新しいおもしろい体験を提供することと同じくらい、見た目や背景にあるストーリー性を強化していくことがもっと大事になってくる時代や。たくさんの人に喜んでもらえるなにかをつくりたい!プロップスタイリストの時代や!と思って8年間やってきましたが、2017年「インスタ映え」が流行語にもなったように、思ってたような時代になってきました。
冒頭でも述べたように、少しずつ「プロップ」「プロップスタイリスト」という言葉も世の中に浸透し始めた気がします。

「ただ需要があるのにやってる人が少ない」の落とし穴って、「めちゃくちゃ大変だからやる人が少ない」と同じ意味なんです。
実際、この職業コスパがものすごく悪くて(笑)未だに苦労や悩みは絶えません。
挑戦失敗改善挑戦失敗改善のエンドレス繰り返しですが、少しずつ、ほんの少しずつ自分でもわかるような成長は遂げられていると思っています。
なんでしょう、負けず嫌いなんでしょうね。こういう状況に対して"やってやろやないかーい!!"と燃える性分なので、大変であること自体が活力になっています。

未開拓な地を切り開いていくことに億劫になってしまう時もありますが、たくさんの「好き」に出逢える、そんな楽しみを知ってしまったので、やりがいというかもはや使命というかもしかすると意地なのかもしれないけど、この職業に出逢えたこと自体が自分にとって人生の大きな出来事なので、「人間のプロップスタイリストはもう必要ありません。ロボットがやります」と言われる日が来るまでは頑張らせてもらいたいなぁと思っています。


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うふふ♡
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プロップスタイリスト。1987年京都府生まれ。著書「Girly Prop Styling」(扶桑社)。美術鑑賞のレビューをよく書いています。ラファエル前派、ミレイのオフィーリア、原田マハ先生の本とお風呂が大好き。http://endoayumi.com
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