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2022年7月の記事一覧

【読書】安田 敏朗 大槻文彦『言海』:辞書と日本の近代

【読書】安田 敏朗 大槻文彦『言海』:辞書と日本の近代

普通語の辞書ということ『言海』は普通語の辞書である。

国語辞典が普通語の辞書であるということは現代では当たり前のことかもしれないが、言海が編纂された当時では必ずしもそうではなかった。辞書辞典と言えば、専門用語か難語の解説というものだった。手とか、ご飯とか、歩くとか、普段使うような言葉をわざわざ解説するということはなかったわけである。そこに登場したのが、普通語の辞書『言海』である。

日常において

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向田邦子と辞書と謎解き(6)、そして最終回

向田邦子と辞書と謎解き(6)、そして最終回

読友さんからのコメントをそのまま引用させていただく。

新明解!
しかも第二版!
もう、びっくり仰天である。

ちなみに。
読友さんはこちらにその辞書を写メでアップしてくださっている。

これを見たときどれだけ興奮したろう。
どれだけ眺めていたろう。
嗚呼。
向田邦子さんはこの辞書を見られていたんだ。

そう言えば「明解」は少し引きにくい。
横書きが右から書いてあるからだ。

向田邦子さんは、19

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向田邦子と辞書と謎解き(5) 小休止、ちょっと整理してみる

向田邦子と辞書と謎解き(5) 小休止、ちょっと整理してみる

いったい、どれだけの辞書で「なみだ」をひいたかしれない。だが、もしかすると、鍵は「なみだ」ではなく「なみにく」なのかもしれない。
新明解第四版に「えんきょく」という表現が出てくる。

【向田辞書】(上肉・中肉に対して)値段の安い肉のえんきょく表現。

【明解国語辞典初版】「なみにく」なし。

【三省堂国語辞典第六版】「なみにく」なし。

【新明解国語辞典第四版】〔上肉・中肉などと違って〕「値段の安

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向田邦子と辞書と謎解き(4) 『明解国語辞典』

向田邦子と辞書と謎解き(4) 『明解国語辞典』

大阪府立図書館。

向田辞書を探して電車バスを乗り継いでやってきた。
『明解国語辞典』があることはインターネットで検索済みである。

書庫から『明解国語辞典』を取り出してもらう。
古い辞書だ。
既に書庫の人となっている。
横書きの文字は右から左に読む。
読みにくい。
でも、とても小さくて可愛らしい辞書だ。
やっと会えた。
そっと「なみだ」をひいてみる。
そこに書かれていたのは……。

なんというこ

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向田邦子と辞書と謎解き(3) 『向田邦子文庫』のこと

向田邦子と辞書と謎解き(3) 『向田邦子文庫』のこと

実は。
とある大学に『向田邦子文庫』という特設サイトがある。

向田邦子氏の旧蔵書を所蔵管理されているそうだ。さらにこのサイトではデータベース化もされていて、しかも検索もできる。無償で誰でも利用できる。こういうものを公開していただけるというのはありがたいことだ。改めて、感謝申し上げたい。

そして、もちろん、検察してみた。
「辞典」を。

国語辞典で出てきたのは、これだけである。

明解国語辞典

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向田邦子と辞書と謎解き(2)

向田邦子と辞書と謎解き(2)

向田邦子氏がこだわった「なみだ」の語釈。
これが書いてある辞書が見当たらない。
そういうようなことを読書メーターでつぶやいた。
その時、助けてくれたのが読友さんだった。

『向田邦子の本棚』

そういう本があるのだそうだ。
そしてそこに書いてある辞書は・・・。

『三省堂 明解国語辞典』

なるほど。
明解国語辞典ならありそうだ。
是非ともひいてみたい。
が、手元に明解国語辞典がない。

というよ

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向田邦子と辞書と謎解き(1)

向田邦子と辞書と謎解き(1)

過日、読書メーターで読友さんと謎解きをしたお話である。そのときの内容はこちら
→向田邦子『眠る盃』

それは一冊の本から始まった。

向田邦子『眠る盃』

この作品集に『国語辞典』と題された一文がある。
そして「なみだ」を辞書で引いたとある。

さて。
これはなんという辞書だろう。
そんなことが気になる。

たまたま手元にあった「言海」をひいてみる。

明治のころは「ナンダ」とも言ったのか。
ふむ

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