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映画感想文

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2012年から続けている手書きの映画ノートの内容を、一部編集・アップデートして載せています。当時見た新作〜旧作まで様々。洋画が多め。レビューや批評というよりは、感想です。出演して…
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#ネタバレ

映画感想#52 「海街diary」(2015年)

監督・脚本 是枝裕和 出演 綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、鈴木亮平、池田貴史、坂口健太郎、前田旺志郎、キムラ緑子、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ 他 2015年 日本 126分 家族とは呪縛なのか ストーリーは、表面的には爽やか。 ある3姉妹に腹違いの妹がいることが発覚し、鎌倉で一緒に暮らすことになり、本当の家族になっていくという。でも実は、家族の心穏やかではない関係が描かれていたりもします。親子同士、姉妹同士、夫婦同士の妬

映画感想#49 「あん」(2015年)

監督・脚本 河瀬直美 出演 樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、水野美紀、市原悦子、仲野太賀、兼松若人、浅田美代子 他 2015年 日本 113分 自然の姿を見て、聞くこと どら焼きが食べたくなる映画。 和菓子が苦手なコワモテ店長さんと、どら焼き屋に突然現れたおばあさん。この2人の人生から、「生きること」についての意味を考えさせられます。 まず映像的な部分についてですが、画面いっぱいに広がる日本の自然が美しく、こちらまで風の匂いが伝わってくるような瑞々しさがありました。 アス

映画感想#46 「セッション」(2014年)

原題 Whiplash 監督・脚本 デイミアン・チャゼル 出演 マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング 他 2014年 アメリカ 107分 サイコパスと狂気に満ちたシモンズの怪演 衝撃!圧倒!! ものすごい映像体験でありました。とにかくもう、時間が過ぎるのを忘れた。 ドラムの爆音とホーンの鮮やかな音色。フレッチャーの狂気とニーマンの汗と血。 まずは何と言ってもJ・K・シモンズです。彼の演じる音楽教

映画感想#41 「おみおくりの作法」(2013年)

原題 Still Life 監督・脚本 ウベルト・パゾリーニ 出演 エディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガット、カレン・ドルーリー、アンドリュー・バカン 他 2013年 イギリス・イタリア 91分 死者に向き合うことを生きがいとする 主人公ジョン・メイを演じるエディ・マーサンの名演を見ることができました。 ロンドンの民生係ジョン・メイの仕事は、亡くなった身寄りのない方の"お見送り"をすること。そんな彼のささやかで几帳面な生き方を映し出す、小ざっぱりとした映画です。 とて

映画感想#39 「イーダ」(2013年)

原題 Ida 監督・脚本 パベウ・パブリコフスキ 出演 アガタ・クレシャ、アガタ・チュシェブホフスカ、ダヴィド・オグロドニク 他 2013年 ポーランド・デンマーク 80分 歴史物語ではないホロコーストの傷 ポーランド、ユダヤ、ホロコースト…といったテーマの映画は山ほどありますが、これほどまでに良い意味で「背景化」しているものは、そう多くないかもしれません。 イーダという1人の人間の物語として独立したストーリーでありながら、そこにはユダヤ人の重い歴史がさらりと乗っかってい

映画感想#38 「オスロ、8月31日」(2011年)

原題 Oslo, 31. august 監督 ヨアキム・トリアー 脚本 ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト 出演 アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハンス・オラフ・ブレンネル、レナーテ・レインスベ 他 2011年 ノルウェー 96分 ドラッグ依存の青年がたどる運命 静かで深い96分。主人公アンデシュの視点で描いたこの物語は、自殺願望に取り憑かれた彼の心の中を覗き見るようで、見る者に絶望を感じさせます。 ドラッグ依存で更生中の彼が得た束の間の外泊が、彼にどのような影響を

1ページに満たない映画感想<2014年③〜北欧映画編〜>

ベンヤミンの夏(1995年/ギスリ・スナイル・エリンソン) アイスランドのとある街、ローランド、ベンヤミン、バルド、アンドレスの4人の少年は、火事で家を失ったおばあさんのために騎士団を結成し、募金を集めて家を建てることに。しかし仲間内のいざこざで、バルドをいじめるアンドレスは脱会するが・・・と、ただの北欧系ほっこり映画ではないので要注意です。 子供たちはすごく可愛かったけれど、子供の純粋さの代償を見た気がしました。純粋すぎるために罪を犯してしまうというか。その結果、命を

映画感想#35 「華氏451」(1966年)

原題 Fahrenheit 451 監督 フランソワ・トリュフォー 脚本 フランソワ・トリュフォー、ジャン=ルイ・リシャール 出演 オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック、アントン・ディフリング、ジェレミー・スペンサー 他 1966年 イギリス 113分 思考は人を不幸にするのか 紙が自然発火する温度、それが華氏451度(摂氏233度)。タイトルからイメージされるのは、紙で作られた本が燃えていく様子でしょうか。 「消防士って前は火を消すのが仕事

映画感想#33 「嗤う分身」(2013年)

原題 The Double 監督 リチャード・アイオアディ 脚本 リチャード・アイオアディ、アビ・コリン 出演 ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ノア・テイラー、ヤスミン・ペイジ 他 2013年 イギリス 93分 奇妙な世界に没入する楽しさを味わう まずキャストが素晴らしい。 冴えない主人公サイモン、そして彼のドッペルゲンガーであるジェームズ。ジェシー・アイゼンバーグはこの2役を見事に演じ分けていました。内気なサイモンと狡猾なジェームズ。

映画感想#32 「やさしい人」(2013年)

原題 Tonnerre 監督 ギョーム・ブラック 脚本 ギョーム・ブラック、エレーヌ・リュオ 出演 ヴァンサン・マケーニュ、ソレーヌ・リゴ、ベルナール・メネズ、マリ・アンヌ・ゲラン、ジョナス・ブロケ、エルベ・ダンプ 他 2013年 フランス 100分 やさしい人とは誰なのか ギョーム・ブラック初の長編。素敵な映画でした。 主人公はミュージシャンの(ちょっとだけおじさん)マクシム、そして彼が恋をするメロディという若い女性。フランス・トネールの町で、冬に起きた小さな出来事の話

映画感想#30 「NO」(2012年)

原題 NO 監督 パブロ・ラライン 脚本 ペドロ・ペイラノ 出演 ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カストロ、ルイス・ニェッコ、アントニア・セヘルス、ネストル・カンティリャナ 他 2012年 チリ・アメリカ・メキシコ合作 108分 広告で、独裁政権にNOを 1988年チリ、ピノチェト独裁政権の信任投票が行われる。現政権のYES陣営、反対派のNO陣営それぞれに与えられたのは、1日15分のテレビCM枠。 現政権の圧力に屈することなく、広告の力でをNOを勝ち取るまでの物語

映画感想#29 「野いちご」(1957年)

原題 Smultronstallet 監督・脚本 イングマール・ベルイマン 出演 ビクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン、グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、ビビ・アンデショーン 他 1957年 スウェーデン 89分 追憶、懐古、そして現実 老医師イーサクの追憶の旅を描いています。 過去と現在の時間軸は行ったり来たりしますが、その過去は追憶の中の過去であると同時に、実際目の前に広がる景色でもあるようでした。 クローズアップされるイーサクの表

映画感想#28 「なまいきチョルベンと水夫さん」(1964年)

原題 Tjorven, Batsman och Moses 監督 オッレ・ヘルボム 脚本 アストリッド・リンドグレーン 出演 マリア・ヨハンソン、クリスティーナ・イェムトマルク、ステファン・リンドホルム、トルステン・リリエクローナ、ルイーズ・エドリンド 他 1964年 スウェーデン 92分 牧歌的な北欧の暮らしを味わう 主人公の女の子の貫禄がすごい。この体格に、この満面の笑顔。 スウェーデンの離島”ウミガラス島”で、このビッグな少女と、ビッグな水夫さん(セントバーナード)

映画感想#27 「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)

原題 The Grand Budapest Hotel 監督・脚本 ウェス・アンダーソン 出演 レイフ・ファインズ、F・マーレイ・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム 他 2014年 アメリカ 100分 ウェス・アンダーソンというブランド この作り込まれた独特の世界観。衣装から文字のデザインまで全てが、ウェス・アンダーソンの世界を構成する部品として機能しています。 (衣装の一部はFENDIとコラボしている