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映画感想#32 「やさしい人」(2013年)

原題 Tonnerre
監督 ギョーム・ブラック
脚本 ギョーム・ブラック、エレーヌ・リュオ
出演 ヴァンサン・マケーニュ、ソレーヌ・リゴ、ベルナール・メネズ、マリ・アンヌ・ゲラン、ジョナス・ブロケ、エルベ・ダンプ 他
2013年 フランス 100分



やさしい人とは誰なのか

ギョーム・ブラック初の長編。素敵な映画でした。
主人公はミュージシャンの(ちょっとだけおじさん)マクシム、そして彼が恋をするメロディという若い女性。フランス・トネールの町で、冬に起きた小さな出来事の話。

先行きの見えないマクシムに与えられたチャンスが、メロディだった。しかしメロディが突然いなくなる。実は彼女は、元彼のイヴァンの元へ行ってしまったのです。
マクシムは悩み、苦しみます。挙句の果てに彼はメロディを取り戻そうと、イヴァンを恐喝するという大胆な行動に・・・。

マクシムがああいう行動に出たのは正直予想外でした。映画の中でもそんな人間には見えないから。でも、よく考えたらメロディが実はイヴァンに脅されていることに気付いたのかもしれない。もちろん悔しさとか、怒りとかの負の感情が暴走したというのはあるとは思うけど。
結局、警察の事情聴取において、メロディはマクシムを擁護するような姿勢をとっていました。それはマクシムにとっては、大事な意味を持つことでしょう。

マクシムの行動はきっと正しくはない。でも正しくない優しさや愛情でも、誰かを救えることがある。それが、「ロマンチックだが、代償は大きい」というキャッチフレーズの意味なんだろうな。
監督は、本作についてこのように語っています。

この映画には善良な人もいなければ、悪意のある人もいません。ただ単に、判断を誤る人や感情に流される人、そして後でなんとかそれを挽回しようとする人だけです。

「やさしい人」映画パンフレット
ギョーム・ブラック インタビューより

やさしい人とは誰なのか。もちろんそれはマクシムだろう。でもメロディかもしれない。もしかしたら父のクロードかもしれないし、犬のカニバルかも・・・。

父の読む詩に喜ぶカニバル

フランスの雪景色は、スクリーンの外まで寒さが伝わってくるようで、冬になると思い出す映画になりました。

☆観賞日 2014年11月1日

投稿に際しての余談①〜ギョーム・ブラック初鑑賞〜

フランスの映画監督ギョーム・ブラック。「女っ気なし」(2011年/同監督)で気になっていたのですが、結局タイミングが合わず未だに見れておりません…。昨年「みんなのヴァカンス」(2020年/同監督)は見れまして、やっぱりギョーム・ブラックの映画は好きだなあ〜と再認識できました!こちらは本作「やさしい人」とは対照的に、夏の爽やかな空気が印象的な映画です。

投稿に際しての余談②〜原題はTonnerre〜

トネール(Tonnerre)というフランス・ブルゴーニュ地方の都市名がタイトルになっています。地方名がタイトルになっていると、そのまま邦題にするには難しいのかも。トネールって聞いても、地名だか何だかわからない人の方が多いですよね、きっと?(私もわかりません)
邦題「やさしい人」はどのように付けられたのだろう?作品の中にヒントがあったのかな?
ひらがなで「やさしい」というのが、寒い冬に暖かさを見出しているような、そんな印象を受けます。好きなタイトルです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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