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「おこりっぽい」のは性格?高次脳機能障害?

はじめに

こんにちは。

インスタグラムで
「臨床1年目でもわかる高次脳機能障害」
をテーマに発信しているあゆです。

今回は、フォロワーさんから
頂いた質問に回答します!

テーマはずばり、

「おこりっぽい」のは性格?
それとも高次脳機能障害?です。


実習中のST学生さんから
頂いた質問で、
めちゃくちゃいい質問。


元々の性格でおこりっぽいのか
それとも、高次脳機能障害の
脱抑制によるおこりっぽさなのか
悩まれたそうです。


こういう質問大好きだよ笑。
非常に臨床的というか、リアル。

文献+私個人的な意見を含めた
回答をしたいと思います!

<基礎知識> 
おこりっぽいの正体は?

質問のなかにでてくる
「おこりっぽい」を専門用語にすると、


易怒性(いどせい)といいます。


脱抑制と完全に同じ意味
ではないですが、


脱抑制というのは
『衝動がおさえられないこと』
なので、つまり

脱抑制により、怒りが抑えられなくて
おこりっぽくなる。(易怒性)


ってかんじだね。


脱抑制は前頭葉機能の低下からおこる
社会的行動障害の症状の一つです。


社会的行動障害とは、
高次脳機能障害の中でも最も多い
症状なんだって!知ってた?



脱抑制(衝動を抑えられない)や
発動性の低下(意欲的に行動できない)
など、

行動や感情の障害により
社会生活を送ることが
難しい状態を総称します。

自宅に帰ってから
本人や家族が困るケースが多く、


入院中はあまり目立たなかったけど、
家に帰ったら深刻な
問題になる場合もあります。

2007年に東京都で行われた通院中の高次脳機能障害者の実態調査によると、行動と感情の障害が全体の45%に認められました。具体的な症状としては、意欲低下、抑うつ、情動コントロール障害(不安、うつ、易怒性)、発動性低下、固執、こだわりの強さ、感情失禁、引きこもり、被害妄想などが挙げられます。


性格と高次脳機能障害どう見分ける?


さて、前置きが長くなったけど
質問の本題に入ります。


この質問をすこーし噛み砕くと


『おこりっぽい』という
現象に対しての原因が、

・脱抑制なのかどうか
・元々の性格と現在の様子の違い

なので、

脱抑制を評価する方法
元々の性格を知る方法

に着目して、6つのアイディアを
お伝えします。


1.損傷部位の確認

脱抑制の原因となる損傷部位が
前頭葉にあるかどうかを確認します。  


具体的には、
前頭葉の眼窩野が
脱抑制の責任病巣
になってるの!


脳画像で確認して、
脱抑制が出る可能性が
あるかどうかを判断してみよう!

眼窩野


2.FABの点数の確認

前頭葉機能検査(FAB)の点数が
18点満点中、
カットオフの11点以下である場合、


前頭葉機能障害の可能性が
高いとされます。


また、GO/NO-GO課題を用いて、
被験者が指示に従って
反応するか抑制するかを評価します。

GO/NO-GO課題っていうのは、

『私が机を1回タップしたら、あなたは1回タップしてください。私が2回タップしたら、叩かないで下さい』

ってやつね!


3.脱抑制以外の社会的行動障害の確認

脱抑制の症状単体しかでない!
っていうことは恐らくありません。


つまり、
他の社会的行動障害が見られる場合は
脱抑制も出る可能性が高いです。

具体的には
・意欲低下
・発動性の低下
・情動コントロール障害
(易怒性、不安、うつなど)
・依存的行動
・こだわりの強さ
・抑うつ
・感情失禁
・ひきこもり
・被害妄想
・徘徊

などです。
他の症状はどうでしょう?

確認してみてください。


因みに私の担当していた方は、
社会的行動障害がめっちゃくちゃ
でていて、

怒りっぽい通り越して
ガチギレしちゃう方でした。


自分が言った事と別の内容が
書類に書かれていたことに対して

『誰もこんなこと言ってない!
 ここの施設の職員は無能だ!
 こんなところ信用できない!
 役所に通報する!』

って、20分くらいしこたま
怒られました。


私は心の中で、
「あー、これ症状バチバチにでてんなぁ。
これ退所してからトラブルなるなぁ、、
家族にどう説明しようかなぁ。」


と考えていました。


そして、その方はもれなく
感情失禁、不安、こだわりの強さ
依存的行動など、他の症状も
多かれ少なかれ出ていました。


4.家族に病前の話を聞く

ぶっちゃけ、
これが一番手っ取り早くて
正確かもしれません。

病前の様子を家族に聞くことで、
現在の症状との違いを明確にします。

私なら、MSWを通じて
家族と話すタイミングに
このあたりをどんどん突っ込みます。

家族に話を聞くときのポイントは、
病気だから~とか
障害だから~っていう言葉を
闇雲に使わない。
(家族、めっちゃ心配します)


エピソードトークの流れで、


実はこの前こんなことがあって~
そのとき○○さんが、
いつもより強い口調で△△って
言って怒ってしまって・・・。

病前は、このように
少し怒りっぽい性格でしたか?
なにか心当たりはありますか?

みたいな感じでサラッと聞きます。


家族に会えない場合、
本人に聞くことも多いです。


〇〇さんて、自分では
どんな性格だと思いますか?とか

人からどんな性格って
言われることがありますか?


みたいな感じ。


おこってしまった後であれば、
落ち着いてからその時の気持ちを
もう一度冷静に聞いてみることも。


そうすると、病的か性格か
わかったりもします。


また、もっと本格的に
調査したいのであれば


・BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)に含まれる質問票(DEX)


・日本版前頭葉性行動質問紙、Frontal Behavioral Inventory(FBI)

などを用いて評価してもいいでしょう。


5.「おこっている」と
 「言い方がキツイ」の違いかも?

もしかしたら、おこってるのではなく
いい方がキツイだけかもしれません。


特に田舎では方言がきつく
聞こえる場合があり、

本人は怒っていない可能性があります。

私も都会から田舎へ移住して
同じことを感じました。


とにかく、漁師町の近くに住む方
たちの話し言葉がめっちゃキツイ。

「え?おこってる?私なんかした?」

って何度聞いたことか(笑)

でもそんなこともあるんです。
臨床って面白いでしょ?


6.「ふつう」ならどうかを考える


個人的には、脱抑制の評価において
1番大事にしてることです。

教科書には載ってないですが笑。

高次脳機能障害のほとんどは
「ふつう」ではない
「違和感」があります。


この違和感を感じれるか
どうかが重要です。


ここで言う「ふつう」とは
一般的にどうよ?ってこと。

もちろん怒っている
内容にもよります。

(さすがに、点滴の針3回
失敗されたら私でも怒ります。)

例えば、

全然たいしたことない事なのに・・・?

ついこの前まで仕事を
していた人がこの態度?

謝っているのに
一向に許してくれない・・・

などです。


その行動があなたの感覚で
「ふつう」ではないと感じるならば、


高次脳機能障害による脱抑制、
易怒性の可能性が高いです。

まとめ

脱抑制の評価と
普段の様子を見分けるためには、


・前頭葉の損傷部位の確認
・前頭葉機能検査の結果
・他の社会的行動障害の有無
・家族からの病前の話
・言葉のニュアンスの違い
・「ふつう」かどうかの感覚

これらを総合的に
判断することが重要です。


このような多角的な評価を行うことで、
適切な支援や治療が可能となります。

ご質問ありがとうございました!!

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