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読むのをやめるのが、つらい。5月の読了本まとめ7冊

5月の読了本は、比較的に大長編ものが多かった。

途中でイヤになるかな〜と思ったけど、一度この味を占めてしまうと通常のボリュームじゃ物足りない気もしてきて、次から次へと分厚い本に手が伸びた。うーん。長編っておもしろい!

「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー

私立探偵フィリップ・マーロウが活躍するハードボイルドの名作。

“積読”のお手本とばかりに、ずうぅっと本棚で眠らせていた1冊。しっかり腰を据えねばと、つい構えてしまう長さと硬派な文章にビビってたんだけど、いざ読んでみると名作たる所以が分かるね。

先月読んだ恩田陸のエッセイで、旅につれていく本はガツンとした海外小説がおすすめとあって、GWに出掛けた2泊3日の旅行に持っていった。たしかに日常から離れる道中、硬派な文章を目で追う時間はなんとも贅沢で、いつも以上に集中して物語を楽しめた気がする。

大阪のオーセンティックバーにて

本作のなかで、友情の証として重要なモチーフになっているギムレット。旅先で立ち寄ったバーで、迷わず注文してみた。すっきりキレのある味がハードボイルド、みたいな解説をどこかで見かけたけど、武骨な手がこの小さなグラスをちょこんと摘まんでいる姿を想像すると何だか微笑ましい。

「青の時代 伊集院大介の薔薇」栗本薫

名探偵伊集院大介シリーズのスピンオフ的な? 伊集院大介が名探偵として名を馳せる前、大学生時代に関わった舞台サークルの殺人事件を主軸にしたミステリー小説。

栗本薫というと耽美系の作家で、学生のころに読んだ伊集院大介シリーズの1作も、美少年が男の人に口説かれていた印象が強い。本作はそういう感じではないけど、ベースにはそれが流れているような。においたつ作品

男というものこそ、本当に力と魅力のある男のかたわらでなら、彼の人形になってもいい、と思うものなのだろうか。

できれば伊集院大介シリーズを全部読んでみたいと思うのだけど、書店では滅多に遭遇できないのが悩みの種(結構年代物…?)。でもフリマアプリでポチるのは面白くないしなあ。地道に探していこう。

「魍魎の匣」京極夏彦

鈍器本こと京極堂シリーズ第2弾。複数人のバラバラにされた手足が発見される猟奇的な殺人事件と、四肢を奪われ箱詰めにされる少女の物語、ハコを祀る宗教などが複雑に絡み合い、怪談的な恐怖も漂う大長編作品。

前作の「姑獲鳥の夏」もおどろおどろしい雰囲気で面白かったけど、好みでいえば断然こちらが好き。CLAMPがキャラクターデザインを手掛けたアニメ版もあるんだよね、そちらでも楽しみたい。

「木曜組曲」恩田陸

洋館に集う女5人の心理戦。恩田陸らしい、というか、恩田陸にふさわしい舞台シチュエーション!

面白い、というより、私の好みドンピシャリという話で、いつかこういう物語を自分も書いてみたいなあと思う。舞台映えしそうな物語。

装丁を見た瞬間、イメージが重なった萌黄の館(神戸)

GWに神戸の異人館、6月頭に横浜の洋館をめぐってきて、もはや洋館自体にハマり中。専門雑誌を複数入手済み。

「アルキメデスは手を汚さない」小峰元

古書店散策中に、タイトルが目にとまって読んでみた作品。私は読むものが偏りがちだから、たまには…という思いでタイトル買いしてみた。

舞台な70年代で、ジャンルは学園ミステリ。「アルキメデス」と言い残して死んでしまった少女、その死に対する復讐を胸に秘める両親、さらに少女の同級生が毒を盛られる事件が発生してーー。

伊集院大介の薔薇しかり、スマートフォンというか携帯電話やSNSがない時代の青春小説って好きだな。夏目漱石のこころや、恩田陸のネバーランドも、思えばその時代の空気感が好き、という部分が大きい。

ただ本作に限っては、少しモヤモヤするところもあった。男性優位な社会背景が肌に合わんというか、女として不快感を呼ぶといいますか。でも、そういう時代はたしかにあって、そこで生きている少年少女たちの姿は新鮮だった。

「ダーク・ヴァネッサ」ケイト・エリザベス・ラッセル

5月の新刊。帯にスティーブン・キングの「読むのがつらく、読むのをやめるのはもっとつらい」という賛辞が掲載されていて、それが決め手で衝動買いした。

出会ったときのわたしは十五歳、ストレインは四十二歳だった。ほぼ完璧な三十歳差。当時は年の差をそう考えていた。完璧だと。(中略)彼のなかには三人分のわたしがいる。

本作は、かつて教師と秘密の恋をしていた女性の物語。彼女としては、それは恋だった。…はずなんだけど、大人になってから、その教師が主人公と同世代の別の女性から性的虐待を告発されるーーっていう。

これはラブストーリーじゃないといけないの。わかる?本当に、本当にそうじゃないと困る

帯やあらすじから察するに、ジャンルはスリラー。と思っていたけど、Me Too運動のドキュメンタリーを読んでいるような気分に近い。

たしかにS・キングがいうように、読むのがしんどい。けど、途中で投げ出すのも無理で、一気読みだった。

少し前に高校生の少女視点で教師と恋に落ちるゲームにハマっていたんだけど、一気にその熱が冷めた。というか、氷水をぶっかけられた気分。ただ、関係を肯定はできないけど、感情まで否定することもできず、結局報われない恋のひとつかとか、もやもやもやもやもやもやエンドレス

本作でちょいちょい名が出てきたナボコフの「ロリータ」を読んでみようと思った。少女に恋した男の文学。すでに本は入手済み。

「京骨の夢」京極夏彦

「魍魎の匣」に引き続き京極堂シリーズ第3弾。読み出してすぐ、名がちょいちょい出てくるから私の推し榎木津がめちゃくちゃ活躍する巻かなあと期待したけど、そんなことはなかった。

そのせいというわけではないけど、今読んでいるシリーズ3冊のなかでは、いちばん物語に引き込まれる感じは薄かったかも。ミステリ的には鮮やかというか、分かりやすくてさすが。

ただ、そんなだから、榎木津といる時は石屋の小倅でも、鬼軍曹でも、鬼刑事でもない。ただの木場修太郎だ。なにも考える必要がないから、気は楽である。

名探偵榎木津と、刑事の木場の幼馴染みコンビが大好きだ。コンビというほど、一緒に活躍しているわけではないけれど…昔から腐れ縁のふたり、みたいなものに弱い。はやく次作も読みたいなあ!

読了本について以上。ただ、5月はSPY×FAMILYにドハマりしたり(ロイヨル最高!)、映画館でファンタビやトップガンをみてイケメンにウハウハしたりと、読書以外でも幸せなことが多かった。

引き続き、趣味に邁進していきたい。


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