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迷惑なんてかけあえばいい。事件あり青春ありの2月読了本まとめ

あっという間に2月が終わった。編み物をしたりレトロゲームに夢中になったりで、読書時間はやや少なめ。けれど、読んだ本全部が大当たりという稀有なひと月だった。

「捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼」

今世紀最大のシリアルキラーと捜査官たちの攻防を描いたノンフィクション。犯人は2012年に逮捕され、獄中死している。

おもしろかった。きっと、この言葉は間違っているけど、サスペンス小説を読んだみたいな高揚感が残った。訳者の文体が自分に合っていたのかもしれない。流れるように読めて、ページをめくる手がとまらなかった。

印象深かったのは、シリアルキラーが“殺さなかった人たちも少なからずいる”ということだ。それは身内ということではなく、拉致したのに解放している点。なぜ彼女らは助かったのか?

本書では異常者を取り扱った書籍名がいくつか取り上げられていて(シリアルキラーの愛読書だった)、ディーン・クーンツの「インテンシティ」というサスペンス小説を取り急ぎ手配してみた。

犯罪心理を学ぶ女性が、サイコティックな凶悪犯に追われるストーリーとのこと。3月最初の1冊目になる予定。

「名探偵に甘美なる死を」

Twitterで流れてきた新刊情報で気になっていた1冊。本格王道の館ものに、VR空間というひとひねりを効かせた殺人ミステリー。

犯人によって館に閉じ込めれた素人探偵たちの命をかけた推理戦、VRという最新技術を駆使したトリックの新鮮さ、設定も謎も「こういう本格が読みたかったんだよ!」と大満足。私が読書に求める非日常とはこれのこと。

ただ、失敗してしまったことがひとつ。本書がシリーズものの3作目と知らずに、前2作をすっ飛ばしてしまった。ベースの設定とか、主要人物たちの関係性とか、きちんと理解していたら、もっと面白かったに違いない。また積読リストが増えてしまった。

ちなみに今後は、作者の方丈貴恵氏そのものをマークしていこうと決めた。謎が魅力的なのはもちろんだけど、謎中心になりすぎず人間ドラマやストーリーがきちんと設計されている感じが読んでいて良かった。次回作も楽しみ!

「毒警官」

発売前にプレスを読んでマークしていた1冊。…だけど、積読しているうちにあらすじをすっかり忘れてしまって“毒警官”が悪なのか、善なのか、さっぱり分からないまま読み始めた。結論から言うと、続編希望。

虐待やイジメなどは、悪である。けれど、これらの表面化しにくい問題は、警察が介入できないことが圧倒的に多い。本作は、そんな悪を“毒”をもって粛清するダークヒーローもの警察小説だ。

思えばこの作者、たしか前作で警察小説大賞をとってデビューされた方で、その作品も気になっていたんだった。警察小説でバディの絆、熱いチーム力などを読むのも大好きなので、これから面白い作品が出てくるかもと思うと楽しみしかない。

「エレジーは流れない」

私は三浦しをん氏のエッセイを、めちゃくちゃ愛している。けど、正直言うと、小説は…ごにょごにょ。基本フィクションでは、血なまぐさい事件を期待しているので、好みのジャンルが違うのだ(でも表題作はそこそこ読んでる、よ…?)。

本作を手に取った理由は、男子高校生たちのゆるい青春ストーリーを読みたかったから。と、いうより「ゆる~い時間が流れるさびれた温泉街」「呑気でバカな男子高校生たち」って題材、めちゃくちゃ氏が本領を発揮するやつじゃないか?! とピンとくるものがあったからだ。

本作は小説なんだけど、語り口が“爆笑しをん節”と呼ばれるエッセイ文と通ずるところがあって、個人的にはしをん氏が男子高校生になりきって書きました! みたいな印象を受けた。これから読む人のためにネタバレはしたくないけど「カンチョー」が出てきたページはぶはっと吹き出した。外でなくて本当によかった…。

だらだらゆるゆるなようでいて、最後はじんわり温かくなるところも、さすがしをん作品だと思う。「迷惑なんてかけあえばいいってことだよ」。さびれているけど、住民同士の交流がしっかり根をはっている商店街。時に騒がしく、煩わしく、でもやっぱり愛しくて。私はちょっぴり、羨ましい。

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