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エッセイなど

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綾門優季の執筆した、どちらかと言えばエッセイ寄りの文章をまとめました。
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#日記

新作漫才が怖かった件。

新作漫才が怖かった件。

お布団の哲学『対話篇』の稽古場見学にはじめていった。初演と再演で主な変更点はふたつ。

・男優が入江さんから松尾さんに変わったこと。
・劇中に挿入される漫才のシーンで、新ネタを書き下ろしたこと。

松尾さんは韓国から帰国したばかりでセリフがまだ完全には入っていないので、まだまだこれからという感じだったのだけど、漫才のシーンがこわい、という、いったいぜんたいどういうことかよくわからない一報を受けて稽

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想像力が大切なのは時と場合によります。

想像力が大切なのは時と場合によります。

お布団の哲学『想像を絶する』の稽古で爆論した。ざっくりまとめると「第一部はともかく第二部出来るわけねえだろコノヤロウあと戯曲がフツーに技術的に稚拙」っていうやつで、爆論が終わる頃には「これは1000%自分が悪いやつだ」ってなったので反省しながら改訂した。関係ないけど稽古場を2回間違えて遅刻して3回目に辿り着いた結果、爆論としてはちょうどいい尺のものになった。けど遅刻してごめんなさい。

自分の戯曲

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『知らずに済むならそうさせて』創作日記♯3

『知らずに済むならそうさせて』創作日記♯3

坂あがり相談室plus、企画の段階では、稽古場見学が二回あり、長めのトークを設け、そこで受けたフィードバックを作品に反映し、急な坂スタジオ滞在の最終日に、新作短編の本番を迎える予定だった。ところが、急な坂スタジオの皆さん、俳優の新田さん、演出の橋本さんと相談を重ねていくうちに、いつのまにか本番を消滅させるということに全員が合意し、稽古場見学だけを二回することになった。つまり今、本番が存在しない作品

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『知らずに済むならそうさせて』創作日記♯2

『知らずに済むならそうさせて』創作日記♯2

演出の橋本清さんと、ドキュメンタリー映画とドキュメンタリー演劇で出来ることと出来ないことの違いについて話す。違いばっかりなのですべてをここで語ることは出来ないけれど、「演劇はそもそも放っておいてもドキュメンタリー100%」というのが大きい要素だ。思いっきり出トチる俳優がいて、初日が始まってからガンガン演出を変え始める演出家がいて、偶然起きた悲惨なプライベートが露骨に実作に反映する劇作家がいて、それ

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『知らずに済むならそうさせて』創作日記♯1

『知らずに済むならそうさせて』創作日記♯1

わたしはあなたのすべてを知ることは永遠に出来ない。わたしとあなたが会っているときだけの記憶だけが無造作に蓄積されてゆき、あなたが誰かと会っているときに生み出された時間を盗むことは出来ない。あなたの知らない顔を語る者が、あなたの知らない性格を語る者が、あなたの知らない世界を語る者が次々と現れ、わたしは混乱する。わたしが意図的に仕組んだ状況であるにも関わらず、激しく混乱する。これはあなたに限られたこと

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女性的ということ、男性的ということ。

女性的ということ、男性的ということ。

演出の櫻井さんと、よくお互いの価値観について話し合う。

今日は、僕が不意につかった女性作家、という言葉の使い方がいかがなものか、という櫻井さんの指摘から、いくつかの話をした。

ところで僕は「女性作家かと思いました」と、言われがちな劇作家だ。
直近では先月、『非公式な恋人』という作品の上演で、大阪の観客に直接言われた。
せんだい短編戯曲賞大賞を受賞した『不眠普及』の、ツアー先の京都での、アフター

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対話篇/戯曲ノート#2

対話篇/戯曲ノート#2

対話篇に出て来る人たちは多かれ少なかれ謙虚で、僕とは遠い人物になるようにした。

対話をすることが良いことだと思っているけれども、お互いに出来るだけわかりあった方がいい、と実は僕は考えていない。こんなことを言うと訝しがられるからあまり口にしないが、時々「自己中心的じゃなさすぎる!」と誰かを罵りたくなることがある。あまりにも話が通じすぎて、社会に順応しすぎていて、そのひとの特徴が全く掴めないと、苛々

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対話篇/戯曲ノート#1

対話篇/戯曲ノート#1

Aマッソ、尼神インター、すごい論、Dr.ハインリッヒ…。配役が女性二人になったのは偶然だが、漫才師の話を書くぞ、と意気込んで膨大な量の漫才を見、どの漫才もすこぶる面白かったけれども、そんなに漫才の登場しない、当初の予定とはぜんぜん違う話になってしまった。こういうことはよくある。書いているうちに、ハンドルを切り損ね、アクセルとブレーキを踏み間違え、とんでもないところに辿り着いてしまうことが。

そう

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