見出し画像

【読了】世界でいちばん透きとおった物語/杉井光

Twitterで見かけない日はないくらい話題になっていたので購入してみた。

この作品に関する某編集者のツイートで、ある作家名をキーワードとして目にしていたのでなんとなくアイデアの方向性は想像でき、実際に読み始めてすぐに「やはり」という確信を得た。

しかし、読んでみるとこちらが想像していたよりもはるかに高度なことをやっていてびっくりした。
まず、このアイデアを真剣に形にしようと発想したのがすごいし、そしてそれを見事にやってのけた作者の情熱に惜しみない拍手を送りたい。

そう、まさに情熱。

ここにあるのは小説という媒体に対する混じり気のない情熱なのである。
本書のメインアイデアは、思いついたからといっておいそれと形にできる類のものではないのだ。

正直にいうと、アイデアの方向性に先例はある。そして本書がその先行作に捧げたオマージュであることは作者自身が認めている(参考文献の次のページを参照)。
だが、その先行作はミステリの名人が手がけた1度きりの大技のはずだった。
ところが作者はその作品にに敬意を払いつつも、それを越えてやろうと思い立ったのだ。生半可な気持ちで決意できることではない。

亡くなった作家の遺稿を探す、というストーリーの大枠自体はさして珍しいものではないが、文庫本にして250ページにも満たないこの作品が内に秘めた企みに気づいたとき、読者は思わず今までのページをぱらぱらと見返し、そして感嘆のため息をつくことになるだろう。

あらすじ

 大御所ミステリ作家の宮内彰吾が、癌の闘病を経て61歳で死去した。
 女癖が悪かった宮内は、妻帯者でありながら多くの女性と交際しており、そのうちの一人とは子供までつくっていた。
 それが僕だ。

 宮内の死後、彼の長男から僕に連絡が入る。
「親父は『世界でいちばん透きとおった物語』というタイトルの小説を死ぬ間際に書いていたらしい。遺作として出版したいが、原稿が見つからない。なにか知らないか」

 奇妙な成り行きから僕は、一度も会ったことがない父の遺稿を探すことになる。知り合いの文芸編集者・霧子さんの力も借りて、業界関係者や父の愛人たちに調べを入れていくうちに、僕は父の複雑な人物像を知っていく。
 やがて父の遺稿を狙う別の何者かの妨害も始まり、ついに僕は『世界でいちばん透きとおった物語』に隠された衝撃の真実にたどり着く――。

amazonより

#読書 #読書感想文 #読了 #読書記録 #世界でいちばん透きとおった物語

この記事が参加している募集

最後まで読んでいただきありがとうございます(^-^) 少しでも気に入っていただけたら、スキを頂戴できるとありがたいです。