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ポジティブ心理学でウェルビーイングな日々を・7「人と繋がっていたい=私たちは『居場所』を求める生き物」

突然だけど、人といるのって、得意?苦手?

飲みに行くのとか、集まりに出るのが好きな人っているけど、
そういう人って、人といるのが得意なんだろうなぁって思う。
私は、ちょっと苦手。
基本的に場の空気とか、人に気を遣っちゃうので、
人の集まりは疲れるし、
ひとりでいるほうが気楽って思っちゃう。

でもね、幸せでいる・気分良くいる・ご機嫌でいるために、
「人との繋がり」って、やっぱりとっても大切なんだ。

今回は身体も関係するから、
「Well-being」でいるためにって言ったほうがいいかもしれないね。


最も長期に渡る心理学研究の一つに、
「ハーバードメン研究」というものがあるよ。

1930年代後半にハーバード大学に入学した268人の男子学生を、
現在に至るまで追跡している研究なの。

大学卒業後、
「最も幸せで豊かな暮らしをしている人」と、
「成功しなかった人」との違いを研究し続けてきたんだって。

結論、この研究を指揮してきた心理学者は、
「70年間に及ぶ研究の結果、
『周囲の人との関係』が何にも増して重要であることが実証された」
としているんだ。

さらに、この研究結果は、他の心理学者によって、何度も再現されているよ。

つまり、多くの心理学者の研究において、
「Well-being」な人とそうでない人を分ける、
唯一の「外部的な」要素は、
「豊かな満ち足りた人間関係」の有無である、
ということが証明されているということ。

その他の外部的要素、
例えば仕事内容、収入、社会的地位、人種、外見、既婚か独身かなどということは、
「Well-being」とは関係が薄いということがわかっているのね。
これは、第2回に書いた「幸せの方程式」の通り。


では、友人の数は多ければ多いだけ、良いのかな?

イギリスの人類学者ロビン・ダンバーによると、
ひとりの人間が人間関係を結べる限界の人数は
150人ほどなんだって。

この数字は「ダンバー数」と呼ばれているよ。

友人関係を維持・発展させるためには、
自分の時間をある程度投資する必要があるから、
自然に関係を維持できる数には限りがあるわけだね。

また、150人全員と、均一な、濃密な関係を持っている必要もないんだって。
まぁ、そもそも無理だしね。

それよりも、
「多様な、幅広い関係があるか」のほうが、
「Well-being」に寄与するという研究結果なんだ。

例えば、職場で「毎日ランチを一緒にする数人の同僚」だけと仲が良いよりも、
「時々しか話さないけれど、色々な部署に、何かあったとき、気軽に話ができる人」をたくさん持っている人のほうが、
「Well-being」でいられる可能性が高い、ということなの。

さらに、同じ会社の中だけでなく、
学生時代の友人、
趣味や習い事の仲間、
地域活動やボランティア活動の知人など、
所属団体が単一でないほうが、
「Well-being」になりやすいということもわかっているよ。

これは、「ウィーク・タイズ(緩やかなつながり)」という言葉でも表現されているね。

色々な場所に、
緩やかなつながりの相手がいればいるほど、
「あ、ちょっと困ったことになったな」というとき、
「ちょっと相談に乗って」と言える相手が思い浮かぶでしょう。

その相手が、自分の部署以外、
自分の会社以外の人であれば、
かえって新鮮で客観的な意見がもらえる可能性があるよね。

「ウィーク・タイズ」は、
あたかも、あなたの背後に拡がるセーフティネットのように、
いざというとき、あなたを助けてくれるよ。

そのセーフティネットの存在を感じている人は、
かなり困難な状況に立たされたときでさえ、
それをストレスととらえず、
成長の機会やチャンスととらえるメンタリティでいられる、
ということもわかっているんだって。


進化心理学や社会心理学は、
「人間は、安定したポジティブな対人関係を求め、
維持したいという強い欲求を持っている」
としているの。
これはシンプルに「所属欲求」という言葉でも表現されているよね。

これは人間の本能。
「居場所」があるって、すごくすごく、大切なことじゃない?
家庭に居場所がない子どもは、
家を出て、不良仲間や、もっといくと暴力団の中に入ったりすることがあるけれど、
どんな場所であっても、「きみはここの一員だ」と認めてもらうことが
どれほど人間にとって必要か・・・ということなんだ。


人との繫がり・周囲からの支えが大切だというのは、
気持ちの問題だけではないんだよ。

社会に絆ができると、
コルチゾールというストレスホルモンのレベルが下がり、
喜びを生じさせるホルモンであるオキシトシンが血中に放出されて、
不安をたちまち鎮め、集中力が増す。

同時に、心臓血管系、神経内分泌、免疫のシステムが活性化し、
頭がよく働き、
心と身体が「Well-being」の状態に保たれる。

がんや心臓発作など、重い病気にかかった人も、
周囲から精神的な支えがあった場合、
そうでなかった人に比べ、
生存率が2~3倍も高かったという調査もあるんだよ。

逆に、「社会的つながりの欠乏は、
ある種の病気と同じ程度に人の健康を破壊する」

と言った心理学者もいる。

実際、24,000人の労働者を対象とした大規模調査で、
社会的つながりがほとんどない人は、
しっかりとした社会的つながりがある人に比べて、
重度のうつ病にかかる割合が2倍~3倍も高いという結果だったって。

気持ちの問題でなく、
確実に、身体の健康にも影響があるんだね。


会社に勤めている人は、
会社の人間関係で悩むこと、きっと多いよね。
かくいう私も、目下悩み中だもん。

じゃあ、職場の人たちには、
どのように関わっていけば良いのかな?

ある金融サービス会社の60支店で働く350人を対象とした研究では、
チームの業績の良さは、
「メンバーが互いをどう思っているか」ということに影響されているという結果が出たんだって。
IBMで働く2,600人の社員を調査した研究では、
彼らの人間関係の拡がりを数値的に分析したところ、
社会的なつながりが多い社員ほど、
業績がいいということが分かっているよ。
有名なGoogleの「プロジェクト・アリストテレス」でも、
業績が良いチームのたったひとつの共通項は、
「そのチームに『心理的安全性』があるかどうか」だった。

職場の人と、友人のように「仲良しこよし」になる必要はないと思うんだけど、
職場の人は、「仕事を通じて社会貢献をするという大きな目的・目標をともに目指す同志」だと私はとらえているの。
上記の研究でもわかるとおり、仕事を通じて使命を果たすには、
人間関係がとっても重要。キーファクターなんだよ。

人間同士だから、
「好ましい」と思える割合が多い相手も、少ない相手もいるよね。
それは仕方がないことだし、重要じゃない。
共に目指している大きな目的・目標のために、
関係を断絶せず、
緩やかなつながりを保ち続けることが大切なんだ。

では、緩やかなつながりを保ち、
良好な人間関係を維持するためには、
どうすれば良いのか。

口下手で、なかなか楽しい会話ができない、という人もいるよね。
引っ込み思案で人に話しかけるのが苦手、という人や、
一匹狼体質で、人と同じ時間を過ごすのがおっくう、という人も。

でも、どのようなタイプであっても、全員できることがあるよ。

それは、「自分から助ける」ということ。
「自分からまず、相手に親切にする」ということ。

たいそうなことでなくてかまわない。
相手が欲しがっていた情報についてメールする、
手が空いているときに仕事を手伝う、
わからないことを教えてあげる、
同僚の仕事の効率が上がるツールを作る、
資料を共有する、
元気がない顔をしていたら「最近どう?」と声をかける、
ランチに誘う……など、
ささいなことも含めると、
自分らしく、できることは案外たくさんあるよね。

「うーん、でも、なかなか職場の人を助ける機会がないなぁ」と思う人に、
もうひとつ、コツを教えるね。

それは「相手を知ろうとする」こと。

インタビュアーになったつもりで、
「週末はどこかに遊びに行った?」
「最近なにかいいことあった?」というような軽い質問から、
「どうしてこの会社に入ろうと思ったの?」というような少し深い質問まで、
相手のことを知りたいと思ったら、
色々な質問が浮かんでくるよ。

職場の隣りの人は、
今まで知らなかっただけで、
ものすごく面白い趣味の持ち主かもしれないし、
もしかしたら、ものすごく大変な家庭事情を抱えつつ、
平静な顔のまま必死で仕事をしている人かもしれない。

どこまで踏み込むかは相手を見ながらだけど、
「知ろうとする」ことから始めてみて。

同時に、「私はね・・・」と、自分のこともオープンにすると、
相手の心もオープンになりやすいと思うんだ。


人と繋がりたい。

少しおっくうでも、
時に傷ついても、
結局疲れちゃっても、
やっぱり、人と繋がっていたいよね。

「居場所」だと思える場所を、探してみてね。
大丈夫。
必ずあるから。

しばらく連絡していなかったあの人に、
久しぶりに手紙でも書いてみようかな。

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※このコラムは主にポジティブ心理学に基づき、
幸せでいるためのエビデンスに基づく方法を紹介しています。
※ポジティブ心理学の分野では「Well-being」を高める方法が数多く研究されています。


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