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とるにたりないものこそが愛

大好きな江國香織さんの『とるにたりないものもの』という本の中に、フレンチトーストという名のエッセイがある。

フレンチトーストが幸福なのは、それが朝食のための食べ物であり、朝食を共にするほど親しい、大切な人としか食べないものだから、なのだろう。

上記は、このエッセイの末尾の言葉だ。
フレンチトーストという言葉がもつ幸福感はもちろんだけれど、「朝食って、大切な人としか食べない」のだ。当たり前だけど、ハッとした。

一昨日に、緊急事態宣言が出てからというもの、家族皆が一日中家に篭りっきりになったから、いやおうなしに朝、昼、夜ご飯を毎日共にすることになった。

特に、大学に入ってからは昼夜逆転する生活が続き、夜遅くに帰って、朝は親と ほとんど顔を合わせないままお互いの目的地に出かけていくことが多かった。

だが、この宣言が出てからというもの、生活リズムが全員揃い、朝ご飯を毎朝一緒に食べている。 私の家族は自立心が強いので、食事が終わったら、各々の持ち場(母はミシンの前、妹はギターを手に取り、父はテレビの前)に散っていく。

だけど、1日の始まりに会話をして、それぞれ動き始めるのは随分気持ちがいい。寝ぼけ眼をさすりながら、無防備な状態で食べる朝ご飯は、確かに親しい人との間にしか成り立たない気がしてきた。
朝ごはんを家族で迎えられることって幸せだ。
当たり前なことだけど、忘れていた。

人は病気になったり、苦しんでから初めて、自分が人間として正常な状態にないことに気づく。
そして私たちは、そのような状態になって初めて、本来人間が人間として、どういう状態であるべきかを学ぶ。

それと似ているなと思った。
当たり前なことこそ、それが尊いことだと、なかなか気が付けない。

でもきっとその尊さはまた、”あたりまえ”から離れたからこそ、気がつけるものなのだ。


そうそう。
皆がこぞって、知らない土地を旅することもまた、
自分がいる”今ここ”を改めて愛することができる行為にやみつきなっているから、なのかもしれない。

(自宅待機になっている今だからこそ、みたくなる、旅に出る動画です。ぜひ。)

ここではないどこかへ
旅に出るということは
ここの美しさを
見つけるということでもあるのだ

『じゃらん30周年 特別記念フィルム ここではないどこかで』

当たり前のこと、とるにたりないものものこそ大事にしたいなと思った、新卒7日目でした。

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