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ふり返って分かった大切にしたい3つの価値観

陶芸に出会ってから15年 人生の半分
もうずいぶん長いあいだ陶芸をしているような気がする。かぞえてみるともう15年、人生のちょうど半分。友達のことを考えてみても陶芸家ばかりです。そういう意味でも、陶芸とはもう切っても切れない関係になってしまっている。悪い意味でも、良い意味でもなくフラットに、もう離れられない。陶芸は大切な存在、そして自分の一部でありアイデンティティです。

陶芸の楽しいところ
モノを見れば、どの技法で成形したのか、何度で焼いたのかだいたいわかってしまうのが楽しい。陶芸を学び始めた頃は、飲みの席でも皆こぞって器を裏返し、高台を観察しまくったのをおぼえています。それから、陶磁の材質感が好き。つるっと、がさがさ、しっとり。たとえば同じ色でも透明感や質感が無限にあるのが面白い。ぶくぶくとマグマのように膨れたまま冷え固まる性質のゆうやくや、流氷のように浮かんだ結晶が偶然の模様を描いたりする性質のものもある。

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興味のない人にも話したいから、今やっていることはアクセサリー
今は陶磁アクセサリーを作る作家として日々を生きています。器ではなく、なぜアクセサリーと思われるかもしれません。器を作っていた頃、興味を持って覗いてくれるのは、ほとんどがもう既に器が好きだという方々でした。反面、その傍らでほんの少し展開していたアクセサリーに、陶芸なんて全然知らないよという方がすごく興味を持ってくれた。

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「これ(釉薬)ってなんて読むの?」「ゆうやくです。」
「オーブンで焼けるんですか?」「専用の電気窯です。」
「お釜?」「あ、いえ炊飯器じゃなくて、電気炉です!」

みたいな会話が楽しくて、興味を持ってくれたことがうれしくて、よし私は陶芸の間口を広げる役割をしようとおもった。陶磁の魅力を、アクセサリーを媒体にして紹介するような気持ちです。

状況は変わって
当時めずらしかった陶磁アクセサリーを作る人が増えてきて、もう「コレ何でできてるんですか?」と聞いてくる人も少なくなった。ぱっと見て、焼き物だ〜!とわかってくれる人が増えたこと、これはほんとうにすごいことだ。世間の陶芸に対する間口はだいぶ大きくなった。陶磁アクセサリーはこれからも作るけど、そろそろ器作ってもいいんじゃない?という気持ちがふつふつと湧いて出てきたのが最近です。

大切にしたい3つの価値観
4月。わたしの誕生月だ。陶芸を知らなかった時間より、これからは一緒に過ごした時間の方が長くなってゆく。これまでを振り返って、改めて大切にしたいと思うことを記してみたいと思います。

・ 初めて土を触った日の肌感覚をわすれない 
・背伸びしないでごきげんで 
・“伝える”ことにも照準を合わせる 

【 初めて土を触った日の肌感覚をわすれない 】
アクセサリーを作っていても、器を作るようになっても、私が努力を忘れてはいけないことは、陶芸のことよく知らないなと思っている人に「あれっ陶芸なんかいいかも」と思わせるきっかっけを提案し続ける工夫をすること。そのために自分自身が陶芸に興味なかった頃を忘れないでいたいし、専門用語ばかりじゃない伝わる言葉を選んで語りたい。

【 背伸びしないでごきげんで 】
じつは密かに持っている趣味がある。生活に溶け込みすぎていて最近趣味だと気づいたのですが。私は自分で自分のことに自信が無かった。周囲の人と音楽や、トレンドの趣味が合わない時、全然詳しくわからなくてなんて自分は空っぽなんだろうと落ち込むことが多かった。だけど陶芸と、趣味(アウトドア、料理、古道具、旅)についてはずっと話していられる。焦ることはない。かっこいい陶芸家にならなくていい。等身大で自分がワクワクできることを、手触りのあるコンテンツを提供したい。

【 “伝える”ことにも照準を合わせる 】
目の前の人に説明する、関わった人に丁寧に接する。それだけで充分だと思っていた。でもそうでもないらしい。SNSを通じて私のことを見守ってくださっている方はたくさんいるし、今まさに取扱店で試着している人がいるかもしれない。でもなんで私がいまアクセサリーを作っているのか、全員には伝わってはいないだろう。だって対面でお話ししたことのある人にしか言っていなかったから。こうやって文章に残すことそして公開することが、たとえ拙い文章であっても本当に大切なことなんじゃないかと思うようになった。文章だけではない、写真や映像なにを使ってもいいから、陶芸にまつわる出来事をもっとたくさんのひとと共有したい。

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まとめ
6年くらい前、近所のカフェではじめて個展をした時に作った指輪があった。ケースも焼き物で作って、陶芸との婚約指輪と言って展示していた。気がついたら展示場所からなくなっていて、(多分小さい子が持って帰っちゃたんだと思うけど、)なくなってもそんなに悲しい気持ちにならなかったのは、なんだか陶芸のかみさまに続けたらいいよ、指輪もらってあげると返事をされた気分になったからだと思う。その時は陶芸、続けられるか続けられないかの瀬戸際ですごく不安な気持ちだったから。だからいまこうやって今続けているのはほんとうに嬉しいことです。

このnoteを通じて、自分の一部でありアイデンティティの、陶芸にまつわることを発信してみたい。陶芸に興味がある人もない人にも読んでもらえたら嬉しいです。

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小川 文子/ogawa ayako
京都生まれ
2008 京都市立銅駝美術工芸高校卒業/2014 京都精華大学陶芸コース卒業/2016 京都市立芸術大学大学院陶磁器専攻修了/2017 ayako.ceramicsを立上げ今に至る

ayako.ceramics(あやこせらみくす)はアクセサリーを中心としたライフスタイルブランドです。テーマは「再発見する陶磁の魅力と素材感」釉薬の潤いある色味や、陶磁の肌の材質感に着目したアクセサリーを制作。オリジナルの陶芸パーツにガラス等の異素材をバランス配置した、素材感が響き合うシンプルながらも味わい深いベーシックアイテムを提案します。
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