僕たちの愛に意味がないとしたら


““サッカーは、必ずしも満足して家に帰ることが保証されているエンターテイメントではないのにそれでもなぜ僕たちはスタジアムへ足を運ぶのだろうか。””


それは、22/23シーズン、イングリッシュプレミアリーグ第8節、ブレントフォードvsアーセナルの試合を観た帰り道にふと思ったことだった。

それはブレントフォード側がホームで約17,000人ほどしか収容されないGtechコミュニティスタジアムという小さな会場で行われ、スコアは0-3とアーセナルの調子の良さと強さを見せつけた試合だった。

で、今回私はブレントフォード側のゴール裏にいて一緒にチャントを歌っていた。

試合中も、ハーフタイムも、試合後も、周りのビーズ(ブレントフォードの愛称)サポーターたちに「日本から来たの!?トミじゃなくてこっちに来てくれて嬉しい!」とか「スコアはダメダメだが試合は楽しんでくれたかい?」「誕生日にここに来ることはナイスな選択だ」などと沢山声をかけてもらえて嬉しかった。

勿論、試合結果が結果なだけにブーイングも多かったし、アーセナルから1点もとれず寂しげな表情をしている彼らではあったが、試合終了後にトーマス・フランク監督がスタジアムを一周して挨拶をすると、ビーズサポーターたちは笑顔で拍手を送り、スタジアムを後にしていた。

ビーズサポーターたちの声援は結果には繋がらず儚く散っていった。


サッカーは必ず勝つか、負けるか、引き分ける。

選手も、監督も、スタッフも、サポーターも、老若男女問わず皆がその3つのどれかの「結果」というものを受け入れて、家に帰らなければならない。

どんな結果であっても最終的に「良い1日だった」と思える日にするためにはどんな要素が必要なのか。

そもそも、声援を送ったのに結果に応えてもらえなくても、期待していたものが得られなくても、それでもなぜ僕たちは愛を持ってまた声援を送り続けるのだろうか…


みなさんこんにちは。Ottyです。

だいぶ前段が長くなりましたが、今日はちょっとだけ真面目そうな話でもしようかなと思います。

ⅰ)より多くの方にサッカーを楽しんでもらうためには
ⅱ)1部リーグより下のリーグやクラブを盛り上げるためには

主にはこの2軸になります。せっかく昨日サッカー観戦をしてきたので、そこも交えてお話できればなと。

よかったら、すこしエモさを感じる夏の夜にこのブログを読んでくださったら嬉しいです。


01.前代未聞とか、破天荒とか

先日仕事の関係で、J2リーグ第25節
FC町田ゼルビアvs東京ヴェルディの試合を観戦してきました。

今回のこの試合、J2では初めての国立競技場での開催となり、観客数は38,402人と、クラブ最多、またJ2史上2番目の動員数を記録しました(余談ですが、J2史上最多は2011年シーズンのコンサドーレ札幌vs FC東京で、39,243人です。)

元々、試合会場はゼルビア側の町田GIONスタジアムで行われる予定てした。

が、しかし。

5月29日にゼルビア公式サイトよりリリースされたニュースで、急遽試合会場が国立競技場になると報じられたのです。

「おいおいおいおい首位対決の大事な東京クラシックくらいホームでやらせろよ」

という声がありつつも、

「いやこの大事な一戦、しかもJ2では初の国立開催なんてむしろ沢山ひとが入ってありがたいじゃんか」

という声の方がきっと多かったのであろう、試合当日スタジアムへ足を運んだら3階席まで人が埋まっていて唖然としました。

流石はサイバーエージェント傘下企業であるゼルビア、資金力と即決即行力がすごいなと尊敬しました。

ちなみに、参考までに。

FC町田ゼルビア
2018年10月、J リーグクラブ「FC町田ゼルビア」がサイバーエージェントグループに参画。サイバーエージェントグループの⼀員としてグループシナジーを⽣かし、経営基盤の強化やファンサービスの充実化に取り組み、トップチームの成績向上と新たなサポーター層の獲得を図っています。

サイバーエージェント公式サイトより


スタジアムのコンセプトや芸能人や格闘家をはじめとする著名人を呼んだり、社員向けのイベントを行うなど、サイバーエージェント“らしい”工夫が施されたクラブは資金源も豊富なため、今季の獲得は監督をはじめ全体的に強化、結果、プレシーズンマッチではJ1クラブ相手に勝利をおさめたりしたこともあり、「もしかしたら今年、ワンチャン?」との声もありました。

そんなサイバーエージェントですが、オンデマンドサービス「Abema TV」において、2022年11月21日〜12月19日間に行われたFIFAワールドカップカタール大会は全試合無料放送、またイングリッシュプレミアリーグにおけるブライトン戦はすべて無料放送、Abemaプレミアムに登録すると月額960円でBIG6の数試合が観られるという赤字垂れ流しな施策までやってました。そんないい意味で破天荒なそんな会社です。

J1クラブより資金力に欠けるJ2リーグですが、
藤田社長のOKの元、ゼルビアが国立競技場で試合をすると手を挙げたのです。

ゆくゆくは国立競技場をホームにしようと考えているみたいな話も聞いたので、それも兼ねて今回この施策を打ったのかと考えています。

サイバーエージェントは渋谷に2拠点あるので、
社員の通いやすさってところもあると思いますが…

パリサンジェルマンやアーセナルのように都心を本拠地にして最強サポーターを作り上げる最強クラブづくりをするのかもしれません。


02.オフザピッチの75分

サッカーの試合は45分ハーフの90分間+アディショナルタイムで成っていますが、「オフザピッチの75分間」もとても大事だと思っています。

内訳は

・試合前の60分間
・ハーフタイムの15分間

です。

ではなぜこの2つが大事なのかというと、下記理由があります。

①試合前に観客のテンションとボルテージをあげることで、試合中の盛り上がり方がさらに変わる。
②演出を派手に楽しくすることで「サッカー以外からも楽しさを得ることができた」というお得感を感じることができる。

要は、「飽きさせない」ということです。

で、今回の試合ではどんな工夫が施されていたのかというと

・試合前の動画がオリジナル版だった(いつもと違った)
・選手紹介動画もいつもと違った
・試合前に爆音でEDMを流していた(Martin garrixのbyte)
・花火と炎の演出
・スタジアム全体を暗くしてライトでキラキラさせる

ざっとこんな感じでした。

ひとつだけ言っておきます。

これ、J2の普通のリーグ戦です。

なんてったって場所が国立競技場だからそれくらいは余裕でできるのかもしれないけれど、とはいえ一応Jリーグの試合ですから…

おそらくJ1でも最終節以外、いや最終節でもこんなことしません。

ということで、やっぱりそういった演出面って大事だなと思いました。

参考までに、これまで参戦したサッカーの試合の中で
一番感動した演出は、やっぱりFIFAワールドカップでした。

世界レベルの大会なので、
感動を生む演出があるのは当然、かけてる額も違うので、そりゃあクオリティに差が出るのは当たり前ですが。

それでもやっぱり、試合前にDJが音楽をガンガン鳴らして皆踊ったり歌詞を口ずさんでいて、照明も暗くなったらキラキラ光ったり、異空間にいるような気持ちで楽しかったです。選手がアップするために入場する曲や、ショート動画もクオリティが高く、ずっとワクワクしていたし、尚且つ大好きで憧れの選手たちのボールを蹴る姿を見てアドレナリンが止まりませんでした。

恐らくあの場にいた人々全員がサッカーファンというわけではなかったんじゃないかと思います。

が、それでも終始楽しめる空間が、そこにはあったわけです。

自国の試合じゃなくても楽しんでいた人がここにいるので、恐らくそれは間違いではないと思っています。

だからこそ、いかにその75分間を盛り上げるかが鍵となると思います。

03.それで結局のところ

いま、日本のJリーグは、カテゴリが3つあり、計57のクラブが所属しています。

また、全国のプロ・アマ問わずのサッカークラブ数は26,526にのぼります。(JFA登録クラブのみ)

そんなサッカーチームが果てしなく多い中、各クラブは地域一、地方一、日本一を目指して闘っています。

ただ、これだけのクラブがあれば、勿論経営難なところもあるだろうし、なかなか地域に根付かないところもあると思います。

私の私観ですが、人々がついてくるクラブというのは大体下記の要素を持っていると考えます。

①強い
②スター選手がいる(上手いorかっこいい)
③楽しくてお得なコンテンツがある
④良いことをしている(地域に根付いてるとか)

①に関しては当たり前ですがやはり強いチームを応援して、その強さや試合に勝つ楽しさを感じたいサポーターが沢山いるのは言うまでもないかと思います。

それこそ、フランスで言えばパリサンジェルマン、イングランドで言えばマンチェスターシティやアーセナルなど。

ただ、①を作り上げるには必然的に②も付随してきます。

カッコいい、上手い、あるいは双方を兼ね備えた最強の選手がいれば、1人のために何人ものファンが誕生し、毎回応援に駆けつけてくれるようになります。

それが何人もいれば、勿論ファンやサポーターたちの投資額は増えていきます。

結果、選手個人の稼ぎ、みたいなところになりますが、クラブとしてもブランド力がUPするわけだし、財政が潤うようになります。そんな選手の獲得は、1人でも良いから大金を投資してでもするべきだと私は思うわけです。

ある程度試合を観にきてもらえるようになったら、今度は③の要素が必要になります。

観客にとって、+αの付加価値を与える必要があります。

資金をかけられないなら、ファンサとか、チャントで盛り上がるとか、そういうところからで良いと思います。

むしろそういうところの方がより大事なんじゃないかと思うほどです。

結局、ファンやサポーターが付いてこなかったら、ただの自己満サッカークラブであるだけになってしまいます。

そして④の良いことをしている、という点に関して「そんな雑にまとめんなよ」と言われそうですが、実際ここは1番大事だと思います。

③とも少し似ていますが、やっぱりどんな形であっても「誰かにとって何か良いことをする」って、人をすごく惹きつけるし、引きつけます。

職場でも友人関係であっても、
どんな世界でも大事な要素ですが、やっぱりスポーツの世界って、少し他の選手よりも上手かったり技術があると、調子に乗ってしまうものだし、良いクラブに所属できてしまうと、「俺は上手いから」と思ってしまいがちです。勿論全員とはいいません。

ただサッカーって、選手の人数が多いスポーツなので、ミスとか、そういったのをうまくカモフラージュさせることができたりしちゃうんですよね。

そんな中1人黙々と練習をこなし、ファンやサポーター、応援しにきてくれる人に対して感謝の意を示す選手がいたら、たとえそこまで技術がなくても「こいつマジで素直でいいやつだな」と感心して人が集まってくるものです。少なくとも私が見た限りでは。

この4つを上手いバランスで併せ持てれば、
そうやって、愛を与えてくれる人々が集まって、サポートされ、大きなクラブになると考えます。(勿論地域性などもあると思います。田舎のクラブなら必然的に人口は少ないですし)

そのたくさんの愛を受けて、選手、監督などチームの人々はさらに頑張って、強くなって、結果を残して、またファンやサポーターに還元する、というサイクルになっているのだと私は思います。


04.トーキョーが起こした奇跡

だからこそ、今回の東京クラシックは大成功だったんじゃないかなと思いました。

15年前、数百人ほどしかいなかった野津田公園のスタジアムで闘っていたゼルビアも、いまでは15,000人ほどを収容できるスタジアムに進化し、さらにはJ2単独首位独走中、さらにさらに、今回の国立競技場での試合には38,402人の観客まで動員できるだけの立派なチームになったのです。(勿論そのうちヴェルディサポは数千〜1万人ほどいたかと思いますが)

試合内容は引き分けだったものの、
ゼルビアの前半の2得点と、後半怒涛の巻き返しを見せたヴェルディ、特に鹿島アントラーズから再び戻ってきた染野のヘッドの2点は、闘う男の覚悟を感じたゴールに見えました。(ここは鹿島贔屓をさせてください)

現在、東京都には3つのクラブがあります。

J1所属のFC東京、そしてJ2首位のゼルビア、2位の東京ヴェルディです。

J2リーグは折り返して後半戦となっていますが、
もし仮にゼルビアとヴェルディの2チームが昇格した場合、来年の東京はかなりアツいサッカー大国になっていると思います。

東京は勿論人口が多いので、工夫を施せば施すほど、ひとはすぐに簡単に集まってくると思います。

小国東京が、サッカーで盛り上がる時代が来るかもしれないのです。

なんならもうすでにその未来は見えかけているかもしれないです。

その時、より多くのサッカー愛のある人々が一気に東京に集結したら、どんな楽しい試合を観ることができるのか、サッカー以外の演出やスタグル、イベントなどどんな形で盛り上がりを見せるのか…

新時代のサッカーはトーキョーからインフルエンスしていくのか、どうなのか。

ワクワクしながら国立競技場で母と試合を楽しみました。

まだ見えぬ先の未来に期待しながら
サッカーを愛する人たちがさらに増えますようにと祈りながら。


05.それで最後に

もし今この瞬間、自分の愛するチームが勝てなかったら?

私たちの声援に意味はなかったのか?

だからもう応援をするのはやめるのか?

辞めないだろう、

辞めずに、諦めずに応援し続けるだろう

私たちが届けた愛が勝利につながらなかったとしても

その伝えた愛に意味は必ずあると思っている。

負けて泣いて帰ったあの日も

先制からひっくり返されてドローで終わったあの日も

それがあるからこそ、サッカーはまた面白い。

僕たちのサッカーへの愛には、必ず意味があり、きっと大きな何かに繋がるはずだ。


To be continued,

Ayaka Otty

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