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流れに

「今日ね、もう晩ごはん作る力が残ってない」

身体を椅子にしずめて、夜に来る予定の彼にそう連絡する。

一昨日のnoteを綴った後に、友人から「一山超えたのを感じたよ、お疲れ様」と連絡をもらって肩の力が抜けたことが記憶に新しいけれど、今日はもうひとつ穏やかな一歩を踏み出した。

頭をいっぱい使って、心をたくさんまっすぐに向き合ったからか、たくさんの豊かなパワーを頂いたからか、家に帰ると心地よい疲れが待っていた。

でもその心地よい頭のぼーっとした感じに浸っていると、今日豊かな時間を共にした方の、「流れに身を任せて」という言葉がふと脳内に浮かんだ。

いつもだったら、「晩ごはん作らなきゃ、頑張らなきゃ」と深く呼吸を整える間もなく、せかせかと自分を奮い立たせていただろうな。

でも今日は流れに身を任せて、心の声に耳を澄ませていると、「晩ごはん作る力が残っていない」という言葉がふわっと浮かんできた。

強がる思考を一旦脇に置いて、今日はその言葉の通り伝えてみると、

「久しぶりに外にご飯食べに行こう!」

という連絡が返ってくる。

彼が到着してから、近所にある餃子の美味しいお店に向かった。

久しぶりに食べたその餃子は、前食べたよりも何だか美味しく感じた。目の前で別のメニューも食べている彼も、

「ここは、やっぱり定期的に来たいね」

そうやって嬉しそうにしている。

席を立って会計に向かうと、厨房の方がにこやかに「有難うございました〜!」と声を響かせている。

お会計の後は店員さんが、「外、寒くなってきたんで気をつけて下さいね!」と声をかけてくれる。

前来た時よりも、なんだかお店の雰囲気が温かくなっている気がしたんだ。不思議。

弱音だと思っていた心の声を、流れに身を任せるように伝えることは、「私だけが得をしているんじゃないか」と思っていたけれど、彼も何だか嬉しそうにしていて、弱音を吐くことは誰かと「幸せ」を共有することにも繋がるんだと思った。

お店を出てドラッグストアで2人でアイスを買った帰り道、空を見上げると星がキラキラと輝きを放っている。

「オリオン座見えないかなぁ、冬の大三角形あるかなぁ」

そう呟きながら夜空に浮かぶ光を視線で繋げてみるのが、なんだか幸せだった。

今日は弱音を吐いた。

流れに身を任せるように、心の声のままに動いてみた。

そうすると、そこにはいつもよりゆっくりとした余白の時間があった。

そんな余白は、私の心に店員さんの心遣い、厨房の方々の笑顔、美味しいものを食べている彼の嬉しそうな表情を気づかせてくれた。

つい半年前まで「人が怖い」と俯いていた私に、余白は人の温かさを届けてくれたみたい。

そんな温かさに気づき続けられる余白を持った、風のように流れに身を任せる人間でありたいと、流れない星空に誓った。

かみつれ日記 2022.11.18

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