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ちゅ~るとチョコレートの魔法と教訓

娘が聞いてきた。
「どうして猫はみんなちゅ~るが大好きなのだろうね。」

ちゅ~るとは、そう。あのCMソングで有名な、『CIAOちゅ~る』のことである。私は思いつきでこう答えた。
「きっと猫にとってちゅ~るは人間にとってチョコレートみたいなものじゃない?ほとんどの人が好きだし、魔力のようなものを感じるよね。」
もちろん、チョコレートが好きではない人もいるだろう。でも、チョコレートには他のお菓子やデザートとは違う「何か」を感じるのは私だけではないと思う。

そう答えながら、私は娘が2歳だった頃の出来事を思い出していた。

初めての子育てに神経を尖らせていた当時の私は、娘になるべく甘いものを食べさせないようにしていた。とりわけ「チョコレート」については、できるだけ大きくなってから食べさせようと考え、一切与えたことがなかった。

もうすぐ3歳になるある日、娘と一緒に友達の家へ遊びに行った。その家には、娘と同じ年の男の子と、小学生のお姉ちゃんがいる家庭だった。テーブルの上の大皿には、たくさんのお菓子が置かれていた。その一角に、小さな一口サイズのチョコレートがこんもりと盛られていた。私は一瞬「あっ」と思ったが、「うちはチョコレート食べさせてないの」と、教育熱心なママ風にものを言うことが嫌だった。だから、「今日がデビューの日になるだろう」と腹を決めた。

ついに時はきた。娘は見慣れない小さな包みに手を伸ばし、それをはがして口に入れた。

その時の娘の顔を私は一生忘れることはないだろう。口に入れた瞬間、まさに頭上に「!!」のマークが現れた。一瞬小さく飛び上がり、大きく目を見開いたのだ!

その後の娘の行動は、繰り返し流れる反復動画のようだった。次から次へと包みを剥がし、口へ放り込むのが止まらない。私がいくら制しても、まるで取りつかれたようにチョコレートを食べ続けた。とびきりの笑顔で。

怖い顔で「もうやめなさい」と言う私の横で、友達は「よっぽどこのチョコレートが気に入ったのね!たくさんあるからどんどん食べてね!」と笑顔で言う。いやいや、人生初でこの量は明らかに食べすぎだ!

結局私は魔法にかかった娘を止めきれず、彼女は数分のうちにその家にあるチョコレートのすべてを食べつくしてしまった。チョコレートにはそれほどの魔力があるのだ。

大学の時に、実家にテレビがない友達がいた。親の教育的理由からで、彼女はテレビをほとんど見たことがなかったのだ。大学に入学して1人暮らしを始めたが、しばらくはテレビのない生活をしていたらしい。

ある時、彼女は友達に付き添われてテレビを購入し、部屋に置いた。それからしばらく彼女は部屋から全く出てこなくなってしまった。あまりにもテレビが楽しすぎて、部屋でのテレビ視聴以外は何もしたくない、ということらしい。楽しみにしていたはずの集まりにさえ顔を見せなかった。

現代であればスマホになるだろう。チョコレートに限らず、媚薬効果のあるものは、無理に遠ざけている時間が長ければ長いほど、出会った時の中毒性が増すのかもしれない。

そんなことを教訓にした私は、娘にはその後、ゲームもスマホも割と早くに与えた。もちろん少しずつ耐性をつけることによって、中毒性を避けるためだ。

しかし、そちらは何故か失敗している。

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