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包丁と砥石の暖簾@atelier DOMA Paris 75012 フランスの週間フードニュース2021/12/31

今週のひとこと

みなさま、もう暦は大晦日となりました。2021年も大変お世話になりました。ありがとうございます。「陽気を孕み、春の胎動を助く」との意味のある壬寅の年を、新たな心で迎えたいと思っています。
2021年も弊社atelier DOMAは、包丁研ぎ師、スペシャリストの同僚マリナ・メニニ、公認会計士で弊社CFOフィリップ・リシューとの3人で、しっかり舵取りし、大変なこの時代を乗り切ってまいりました。
年末に、神奈川県湯河原市の型染め工房「たかだ」さんに制作いただいた藍色がまばゆい、オリジナルの暖簾が2本届きました。1本は店内、もう1本は軒先に掛けております。毎朝店にこちらを掛けるのは、気が引き締まりますし、この暖簾を思い切ってくぐって訪問くださるお客様に、感謝の思いも一層に増す思いです。
型染め工房「たかだ」先代の故高田正彦氏は、人間国宝、故芹沢銈介氏の最後の内弟子だったそうで、現在は1977年生まれの息子の長太さんが、お父様の図案を引き継ぎながら、ご自分の図案も加え、デザインから染め、仕立てまで、お母様とともに、すべてを手がけていらっしゃいます。今回のこちらの暖簾の図柄は、マリナがデザインしたもの。長太さんがそれを丁寧に仕上げてくださいました。包丁と砥石。ホワイトボックスのような砥石の中に、弊社の無限大の可能性という意味も込められています。庖丁の日本の研ぎを中心に、日本の伝統や食文化、ものづくりの精神を伝えていく心づもりでおります。
それにしても型染め作業の職人芸に魅せられます。模様を彫った型紙を生地に乗せて、糊を置いて文様を写したあとに、おがくずをのせ乾かし、染料を用いて色を差していきます。藍色に染めるとき、まずは空色、藍色と2段階で色を乗せるのだそう。こうすると、色が褪せても白まで戻らず、水色で止まるという、心遣いを知って、職人芸だからこその、奥深さを感じさせられました。

年末に、忘れたくないと思ったことがあったので、一つ。85歳になる父の目が白内障と緑内障で、白内障の方は手術をしたものの、逆に近距離の焦点を合わせ辛い。食事をするときに、ご飯一粒一粒や、あるいはキャベツの千切りが見えにくいというので、色付きのお皿を探したと母から聞きました。聞くと、お茶碗は特に、軽くて色付きのものが見つけにくいようでした。そこへいくと、行灯の闇の中でも映えた漆の器に、もう一度目を向けたくもなりました。
万人が食なしにては生きていけませんが、食糧不足に解決されるべくの目が向けられていても、問題がないように見える国においてさえ、老若男女が等しく食を楽しめる状況にはないことも、感じさせらます。経済的な問題しかり、健康体であることも、奇跡に近い。そんな中で、できることもたくさんあるでしょう。
すべては小さな気づきから、目の前にある問題をおざなりにしない。そんなことを来年もヒントに、新しいステージを切り開いていけたらと思っています。
2022年も何卒よろしくお願い申し上げます。

今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載しています。フード業界のプロの方々にお役に立つ情報を毎週セレクトしてお知らせいたします。【A】2022年初夏、ブロワ城の向かいに、ミシュラン2つ星内包、エコロジーなホテル・レストラン登場。【B】「ヴァローナ」社、パティスリー業界のサステナブルな試みをバックアップするガイドを発表。【C】日本風SANDOが人気。【D】パリ14区レストランで、冬限定CBD入りのラクレット。

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