店先の暖簾の威神力@パリ12区atelier DOMA フランスの週刊フードニュース 2022.05.10
今週のひとこと
京都市北区大森ではThe Lodge MIWAを、三重県桑名市船馬町ではマルヨホテルを運営されている、友人の佐藤夫婦。奥様のナオさんのFBの投稿で、京都のロッジに「念願」だった、とおっしゃる暖簾を掛けられたことを知りました。「影を映して見め涼しく…玄関内部の風景もグッと良くなる。プライバシーも優しく守り、先人の知恵は凄い」と書いていらっしゃいましたが、同感です。風に舞う麻布の暖簾の美しさには、はっとさせられました。
古くは鎌倉時代、禅宗とともにもたらされた、夏は「涼簾」、冬は「暖簾」と呼ばれた布製の簾。しかしそれ以前の平安時代にも、日差しや風、塵、人目から守るために、庶民の家の開放部には、半暖簾が掛けられていました。平安時代の絵巻物にも、そんな庶民の暮らしが描かれています。
万葉集でもしばしば登場するのは、貴族の住まいに使用されていた竹製やガマの簾。自然との関わりを、簾という仕切りを用いて楽しんでいた、あるいは厳しさを凌いだ、先人の知恵と、なんとも繊細な心の動き、情感に触れることができます。
「玉垂の小簾のすけきに入り通ひ来ね、たらちねの母が問はさば、風と申さむ」(簾の隙間からどうぞお通りください、母が気づいても、風だと言うでしょうから)
弊社の玄関先にも昨年11月に暖簾を掛けましたが、その途端に変化がありました。弊社では庖丁を販売しているので、安全性に関しては、心おだやかではないことも。防犯カメラもつけています。しかし、暖簾を掛けたと同時に、不審な人が突然に店に入ってくることが、一切なくなったのは驚きでした。
暖簾は人間の心理をもコントロールする。暖簾を掛けたとともに変化する、こちら側とあちら側の関係性、つまり、関係性を結んだり、隔てたりもできるという稀有な威神力に気付かされる今日この頃です。
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