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フランスの食関連ニュース 2021.08.11

今週のひとこと

日本に帰国してから14日。先日からやっと、特定の場所での待機期間から解放されました。実家のあるさいたま浦和の玉蔵院まで散歩。平安時代頃、弘法大師により創建されたと伝わる真言宗の古刹です。本堂横には、樹齢100年を超えるしだれ桜があって、桜の季節の姿も圧巻ですが、緑深い夏の姿からも力強さが伝わってきました。

待機期間中は、デスクワーク、両親の世話、勉強したりと、時間が足りないくらいにあっという間に2週間が過ぎてしまいました。父の書斎の書庫で本を拾い読みする機会にも恵まれました。平成2年発行の柳田邦男さん著作『「死の医学」への序章』に、多くのことを考えさせられています。「苦悩する患者の声を聞く心」の章において。「人生経験のいまだ豊富ではない看護婦たちは、よりよき看護を意識するものほど、患者とのコミュニケーションを難しい課題のように考えるようである。実際、私は医療関係者の会合で、何度か看護婦からインタビューの心得あるいはこつについて質問されたことがある。作家やジャーナリストは様々な職業の人々に次々に会って、話を聞き出すことを専門にしているのだから、インタビューをうまく成功させる特別のノウハウを持っているかのように見られるかもしれないが、実情はお寒い限りである。新聞・雑誌の記者会見の記事を見ていると、取材者側が「こうではないか」「ああではないか」と誘導訊問めいた質問を浴びせていて、当事者はせいぜい「はい」とか「いいえ」とか、あるいはあいまいな返事しかしていないのに、記事になるときには、いつの間にか取材者側の質問の言葉が当事者の口から語られたように書かれてしまうことが日常的に起きている。医療におけるインタビューには、もっとプロフェッショナルな厳密さと愛のある心が求められる。」   

また、ある事例では、しばしば心不全による救急入院と退院を繰り返していたリウマチ性心臓病の主婦の患者がいた。患者が入院してくると、医師はすぐに心電計でデータをとる。そのころには心臓の発作も治まりかけていて、医師は「大したことありませんよ。あまり心配しないように」といって、当面の対処療法をして返す。しかし、ある他の医師が診たとき、その患者に対して心電図をとるまえに、じっくりとインタビューした。朝何時に起きて、家族とどのように接し、どのように食事をし、どのような家に住み、どのようにして病院にやってきたか。そして気づいた重要なことは、エレベータのないアパートの5階に住んでいたということ。その環境を変えることは困難かもしれないが、この患者に必要だったのは、対処療法的な薬よりも、生活条件を変えることが先決ではないか。

メッセージをどうやって聞き出せるか。常々、この題材における医者と患者の関係にしても、あるいは対談者の間柄にしても、強者と弱者という関係性が生み出されることによって、大切な言葉が封じられてしまうということがあるなと感じました。相手から言葉が出てくるまで、じっくりと待つということの大切さや慮りについて。仮説を立てたとしても、それを覆す回答が飛び出したときには、その回答から仮説を立てられる柔軟さと視野の広さを持てるようになれることについて。

それにしても、オリンピック閉会式でパリから届いた引き継ぎのための生中継の映像には驚きました。エネルギー満ち溢れる、パリの魅力と力を惜しむことなく見せつけ、世界中の人々を魅了した映像でした。コロナ禍で打撃を受けたフランスの企業はどう受け止め、どうアクションするか。私自身、パリでのビジネスを鼓舞されたというか。メッセージを引き出す、生かす。窮鼠猫を噛む瞬間の、噛むというメッセージを、的確につかめるか、あるいは発信できるか、で、明暗が分かれるのかと思います。


今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載されています。ご笑覧ください。【A】「エル・ブリ」フェラン・アドリアとアラン・デュカスがコラボでレストランを手がける?【B】World's 50 Best Restaurants 2021の世界最高のシェフに選ばれたペルー女性シェフ、パリでデモンストレーション。【C】ディオールが愛した「Maxim's」のデザート「 Diorama Gourmand」が香水に。【D】フランス初CBD入りロゼワイン誕生。

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