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柚子風味ジェノワーズケーキ@アルザス地方出身CLAIRE Heitzler フランスのフードニュース2021.12.09

今週のひとこと

新進気鋭のパリのパティシエさんたちが、オンライン・ショップを次々にオープンしています。オンラインにする大きな理由の1つが断捨離。つまり必要ではないものは切り捨てるということです。それがすなわちエコロジーにつながる。お菓子の家のようなブティックにたくさんのパティスリーが展示されており、どれを頼んで良いかという喜びに身を浸すというのは、昔の話。毎日の販売数を推定して量を作るというのではなく(雨の日、晴れの日、お祭りの日では、販売数がまったく異なる。それを考慮して販売数を決めるというのも熟練したプロの仕事でした)、受注生産に徹するということ。これにより、無駄な原材料注文も減りますし、毎日の売り残りに気を揉むこともない。固定費のかかる路面店の管理もなく、売り子さんを抱えることなくすみます。資金が限られるビジネスを立ち上げたばかりのころは、オンラインショップというのは、若い起業家にとって大きなソリューションだと思います。ただ、喜んでいただいているお客様と直接にコミュニケーションできるという、人としてのシンプルなモチベーション獲得や、直接の会話があるがこそのあらゆる進化ということを考えたときに、どのようにそのようなコミュニケーションを取っていけるかということが次なる課題として浮上することは確かだと思います。

1978年生まれClaire Heitzlerとは、パリの老舗レストラン「ラセール」にて、シェフ・パティシエに就任したばかりの彼女のデザートを初めていただいてからの知己です。2010年から5年間、同ポストに就任していました。ジャムの妖精とも呼ばれて日本でも知られるパティシエ、クリスチーヌ・フェルベールの店があるアルザスのニーデルモッシュヴィル村出身で、シンプルかつ繊細なクリエーションは、日本人である私の肌に合うと感じていました。聞けばアラン・デュカスのベージュ東京にもいらしたので、繊細な日本の味わいにも親しんできた経験もなにか彼女にもたらしたことがあるのかと思うと親近感も生まれます。
少し前から準備してきたオンラインショップがオープンしたというので、早速購入したのが、写真のケーキ、柚子風味のジェノワーズでした。

柚子はフランス産。スペインとの国境ピレネー山脈に抱かれた果樹園バシェスから。バシェス氏は柑橘類栽培のスペシャリストで、柚子の栽培をフランスで始めたパイオニア。近年、シャレール夫婦に果樹園を譲り、Claireはこの夫婦との親交を深めています。
昨年の冬、レストラン再開もままならないフランス。シャレール夫婦の取引先は主にレストランだったために、収穫物の行く末に困惑した。そこでClaireは、どう利用するかわからなかったが、大量に柚子を購入。そのあとマーマレードにしたという、友情の産物です。

バニラをほんのり効かせたマーマレード。瓶詰めでも販売していますが、アーモンドが香る、中はふんわり、外側はかりっとした(とはいっても、とても薄手で繊細です)テクスチュアのジェノワーズと合わせています。マーマレードは層にしたジェノワーズの中に入れ、上にも乗せて、柚子の皮の鮮度が心地よくアーモンド風味のケークと香る。絶妙な塩梅に感激してしまいました。ヒノキのゆず湯の冬至をそろそろ迎える日本の風景が思い浮かぶような。皮の香りとテクスチュアを凝縮した、決して目立ち過ぎないがメリハリを利かせた、和の塩梅。柚子という素材が素直に引き立っています。仏手柑を花のように切ったシロップ漬けもエキゾチックな香りが立った逸品でした。


今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載しています。ご笑覧ください。【A】パテ・クルート世界選手権決勝大会で日本人が優勝、3位を独占。【B】ストラスブール市長、フォアグラを公式レセプションから排除。【C】アルザス出身のパティシエールClaire Heitzlerのオンラインショップ。【D】チーズを楽しくテイスティングするアトリエに注目。【E】個人向けのプレムアム韓国フードブランド創立。

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