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カカオの実の形のクリスマスケーキ@パリ15区 フランスのフードニュース 2021.12.16

今週のひとこと

年末押し迫る今日この頃。みなさま、いかがお過ごしですか? パンデミックもまた別の局面を迎えて、2022年の物理的な人的移動はどうなるのだろうと、身を以て感じている今日この頃です。
友人のチョコレート専門家、Chocologueを謳うVictoire Finazからお誘いを受けて、昨年オープンしたパティスリーでコラボレーションイベントをしているというので足を運んできました。
昨年オープンしたパティスリーはCinqSensといい、シェフ・パティシエは パラスホテルのシェフ・パティシエなども経験したNicolas Paciello。12月いっぱい、カカオの実100%知ってもらうための、チョコレートのイニシエーション教室をNicolasとともに開催するということ。
特にテーマとしているのは、今年ヴァローナ社も発表し、カカオ製造会社が次々に注目して商品化をしている素材、カカオパルプ(カカオ豆を保護し包んでいる白い果肉)。この果肉の中央の膜にカカオ豆が付着している構造になっており、水、砂糖、ペクチンを主成分とする、ジューシーで粘りのある素材です。通常は、カカオ豆を乾燥させ、ローストしてカカオマスにする前の、発酵に不可欠な素材ですが、Bean to Barでカカオ豆に触れる人々が増える中で、このカカオパルプにも注目が集まるようになりました。カカオ生産地に訪問すれば、皆、この果肉から取れるマジカルな味わいに虜になるといいます(驚くほどフルーティでエキゾチックな味わいだと、このたび知りました)。そして、素材として見直すために大企業が動いており、ヴァローナ社濃縮Oabikaを開発販売したばかり。またオペラ社もMUSICAOを発表。ヴァローナ社のものは火を通しているので蜂蜜のような濃厚さですが、オペラ社MUSICAOは、そのままの味わいを生かしたフレッシュなものです。

Nicolas Pacielloは今年のブッシュ・ド・ノエル(クリスマスケーキ)に、このMUSICAOを使い、カカオの実の形ケーキを仕立てたのですが、これが秀逸でした。MUSICAOを軽やかなガナッシュにし、さらにゲル化して、チョコレートのムースに重ね、さらにローストしていないカカオ豆で香りづけしたクリームのムースで包んだものを、カカオの実を象ったホワイトチョコレートの殻に閉じ込めています。まるで青いバナナのような、ライチやローズ、洋梨の味わいがほとばしる、カカオの味わいを丸ごと味わえるようなケーキに仕上がっており、ガストロノミーを世界から集約してきた歴史と文化が流れる、パリらしい洗練さえ感じました。使いこなしているニコラの腕前とイニシエーションで見地を広げてくれるヴィクトワールにブラボー!

さて、同日、3つ星シェフであるヤニック・アレノがシェフ・パティシエだったAurélien Rivoireとともにオープンしたショコラティエへ。1ヶ月前にAurélienから特別に試食をさせていただいて、その時に話していたのは、中に入れる素材には砂糖を一切使わないということ。白樺の樹液のパウダーを使用するのだそうです。これを使ってプラリネを作っている。またボンボンに閉じ込めるソースには、素材の抽出液を使う。

進化するチョコレートの味わい。驚きを生み出すための試みは、行き着くところがありませんが、食する消費者の一人としては、心に響く琴線を人として鍛えておきたい、さらに、無論、ジャーナリストとしては、マーケティングのみに惑わされない、背景への鋭い眼差しも鍛えておきたい、とも思います。


今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載しています。特に、フード関連のビジネスやフランスの現在の傾向にご関心のあるプロの方向けとなっています。ご笑覧いただけましたら幸いです。【A】「ピエール・エルメ・パリ」の新オーナー発表。【B】大型グリルレストランチェーンの目指すところ。【C】「Débutante 2021」、岐阜県産飛騨牛のプロモーション。【D】「Le grand livre du snacking/スナックの偉大なる本」、アラン・デュカス・エディションから出版。【E】「シーバス」とバルマンデザイナーOlivier Rousteingのコラボ限定ボトル。

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