虫から身を守る方法、求ム!
旦那さんと二人で暮らしていた時、一緒にいると決まって蚊に刺されるのは私だった。花火大会もキャンプも旅行も、どこに行っても同じことをしていても刺されるのはいつだって私。旦那さんは大抵決まって無傷。血が甘いとか、o型だからとか体温が高いからとか、色々蚊に刺される理由がまことしやかに騒がれる中、私が刺される理由は、ずばり、そのどれも持ってる自信があるから。甘いものが大好きだから、おそらく私の血はそりゃツツジの蜜よりも甘いだろうよ。典型的なザ・o型だし、体温も平熱37.0度くらいで常にカッカカッカしている。サーモグラフィーでみたら地球上のどこにいても私の場所はすぐに特定されるに違いない。
ただ、そんな我が家にも、春夏秋冬365日、晴れの日も雨の日も風の日も、頭から水をかぶったように髪の毛を濡らすほどあせかき子さんがいる。
たー坊先生、御年2歳目前にして腹を括ったのか、全く1ミリたりとも歩かない。膝立ちも、四つ這いもつかまり立ちも、する気配は影も形もない。常に大仏のように鎮座しているのがたー坊パイセンのゼロポジション。なのにめちゃくちゃ頭から汗をかくゆえに、たまに「え、どうしたの?!雨に降られたの?」というくらいびしょびしょになっている。まるで濡れたワカメをはべらしてるかのようだか、本人はいたってすこぶるごきげんではある。そんな燃費の良いたー坊さんが生まれてから、蚊の標的はあまーい母から微動だにしないふにゃふにゃワカメ小僧へと変わっていった。下手にパチンとパチンと烈火のごとくカッカカッカした母の血を吸ってはのたまい逃げるよりも、鎮座するわかめ小僧の方がはるかに安全で命を落とすリスクが低い。弱肉強食とはこのことか。
たー坊先生の刺され方、これまた本当にえげつない。これでもかというほど上から下から刺されまくる。ある日、保育園から帰ってきたら何となくムスっとして不服なご様子。よくよく先生に聞いたらプールの最中に全身を見事刺されまくってしまったとのこと。たしかによく見ると、両手両足にそれぞれ10箇所近く、さらに首横、首後ろ、両ほっぺた、鼻に足首、しまいには手の指の関節すれすれ上と耳のきわまで刺されている。痛々しくてかゆがゆしくてたまらない。保育園から説明を受けた後、心の中でコン・チク・ショウの三拍子を目には見えぬ蚊に浴びせながら、カッカカッカと大股で保育園に乗り付けていた自転車の前かごにたー坊先生を乗せた瞬間、どこからともなくプ~ンと蚊が飛んできて、たー坊先生の顔と足にピタっと吸い付いた。飛んで火に入る夏の虫。しかも2匹も!子の仇だ、いざ参らん。こちらももはや手でも足でも頭でもなく、脊髄がピキーンと反射して、全く何の躊躇も容赦もなく、バッチーン!と叩いて撃退した。いきなり意味わらず顔と足を叩かれたたー坊先生。一瞬何のことやら、わけわからずにポカーンとした数秒後、にわかに現実にもどり、「何もしてないのに、しかも疲れて眠い(毎日)のに、いきなりパチーンと母に叩かれた!」と理解した瞬間、こちらもこちらで火が付いたかのようにギャンギャン泣き始めたのでした。「パイセン、大変申し訳ありませんでした!」と平身低頭お詫びをしまくって帰路についたけれど、外から見たら子供を虐待する母の鬼の形相・・に見えたんじゃないかと不安に駆られた。
あまりにもひどいこの虫の仕打ちに堪忍袋の緒が切れた母は一体どうすればいいのか、1-2週間考え抜いた末に、①たー坊先生が移動するようになる、②たー坊先生が蚊をバッチコーイ叩けるようになる、③虫よけシールを持参して先生に貼ってもらう、④先生に泣きつく、あたりしか妙案は思い浮かばず、①と②は期待できないので、④先生に泣きついて、③毎回プールの前に虫よけシールをはってもらうことにした。
数日経ったが、全然一向にたー坊先生へ群がる蚊の勢力が弱まるケースは見られない。時には前日刺された場所のほんの1ミリ横にまた刺されて膨れ上がったりする。夏は登園を止めて家に蚊帳を作ってその中で過ごさせようか・・いや、いやそんなことしたら仕事がなくなって路頭に迷ってしまう。。困り果てた末に、われらが女神、定期依頼しているシッターさんに相談した。そのシッターさんは平日保育園の園長先生としても勤務されている方で、実は日々困ったことは●●さんへの相談ノートに記して、もれなくシッターさんにしれっと相談したりしている。今回もたー坊先生のシッティングをお願いした際に、「あれれ、たー坊くん、結構刺されてますねー」と言われたので、これ幸いとばかりに、しれっと「そうなんですよね。。これってどうするのがいいと思いますかぁ?」と相談してみた。
そうしたら、さすが女神、「プールの周りに蚊取り線香かベープマットを置いてもらうといいですよ」と教えてくれた。しかも「ほかの園児が怪我したり、やけどをしないように可能であればプールの上に立ってるテントから吊り下げる電池式のものがおすすめですよー」と。
なんということでしょう。そんなこと考えもしなかった。ことの発端はたー坊先生がふにゃふにゃしていて歩かないことが刺される原因なので、保育園に何かしてもらうという発想は全くなかった。でもシッターさん曰く、べつにそれって普通のことだし、ほかのお友達もきっと刺されていると思うので保育園にとっても適した対策ですよ!って。なるほどー。翌日早速たまたまいらした保育園の園長先生に相談してみた。それは何とかしないとですね、とこれまたすぐに電池式のベープマットを手配していくつか吊るしてくれた。
シッターさんの的確なアドバイスと保育園の配慮によって、保育園で蚊に刺されることがめっきり激減したたー坊先生。が、しかし。なんだろう、蚊って人間の刺され度合いが分かるんだろうか。たー坊先生の激減とともに、3人でいるときに、私が刺される回数が突然ぐぐぐっと増え始めた。
本日昼間、まさに3人でブドウ狩りに行ってきた。みな同じように虫よけスプレーをしてみな同じように半袖、かつ私だけ長袖長ズボンなのに、何なら旦那さんにいたっては虫よけスプレーも大してしてないのに、全く刺されない2人と、蚊の集団リンチでフルボッコにされる私。5分おきくらいに虫よけスプレーをぬったくったとて全く効果がない。最後はかゆみにしびれを切らし、早々に狩りから撤退することに。
そして何よりも一番腹立たしいのは、蚊に刺されることがない旦那さんが、蚊の脅威をものすごく低く見積もっていること。大切な愛しの奥さんがフルボッコにあっているというのに守ろうとも、何なら代わって戦ってやる、くらいの気概がほしいものだが、そんなものは微塵もない。蚊に刺される前から、絶対今日も蚊に刺されるんだよ。とブツブツ唱える私を横目に、たー坊先生とキャッキャウフフが止まらない。「あやちゃん3人で写真撮ろうよ!」、「あやちゃんこのブドウ取って!」と左から右に全力で楽しむ姿は、しかも無防備に手足を出してルンルンしていて何の影響もない様子を見ているとかわいさ余って憎さ1000倍。いつか絶対、旦那さんがフルボッコされる日が来たら、横でたー坊先生とキャッキャウフフやってやる、と心に誓ったのでした。誰か、我々家族に、効果ある対策を、お恵みを。
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