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人生ってなんだっけ

「勉強がんばれば幸せに生きられる」

両親からそう聞かされて育った私。
小学生の時は
月曜→ピアノ
火曜→公文
水曜→水泳
木曜→習字
金曜→公文
土日→勉強・ピアノ練習・習字の練習
こういった1週間を送ってきた。

中高一貫校の私立に通い、塾にも毎日のように通い自習室で勉強した。
成績はだいたい学年で20番以内にはきちんと入っていた。
父は「足りない」と私を叱った。
つらかった。
でもいつか幸せになれるって言われてたから、いろんな犠牲を払って勉強した。
友達なんていなかった。
お弁当を食べる時もひとり。
放課後に誰かとマクドナルドなんて行ったことない。
今は死にたくても大人になれば幸せになるんだと信じていた。
それだけで人生進んできた。

そこそこ名前も知れた大学に入った。
両親は喜んでくれた。
でも大学生になってもやっぱり死にたかった。
そんな夜はベランダでタバコに火をつけて、夜空に溶けてゆく煙をいつまでもいつまでも眺めていた。
大人になれば幸せになれる、の「大人」はいつ来るんだろうと思っていた。

社会人になった。
知らない人はいないような大企業に就職した。
それでも私は死にたかった。
夜勤の休憩中に夜空に溶けてゆくタバコの煙をただぼんやりと見ていた。
大人になれば幸せになれる、の「大人」は来ないんじゃないかと思うようになった。

メンタルを壊して退職した。
1年くらいは適当に過ごした。
仕事はしていたけど、増えていく薬とお酒が私の体を蝕んで行った。

ここにいてはダメだと、逃げるように地元を離れて新しい仕事を始めた。 
27歳の誕生日だった。
私は幸せになれない大人になっていった。

それから3年半だった。
それなりの役職について、部下もできた。
慕ってくれる人もほんの少しはできた。
「はるかさんはやっぱり凄いですね!」
「はるかさんに憧れます!」
そう言われても私の心は動かなかった。
私は凄くないから。
私は憧れられるようなことを何もなし得てないから。

私の尊敬する上司がいつも言うことがある。

「幸せは何があることでもなく、ただ目の前のことが幸せだと思える心を自分が持っているかで決まる」

私は、目の前のことが幸せだと思える心を持っていないんだろう。
あれほど多くの犠牲を払って生きてきたけれど、払うだけ払って私の心には何も残っていないんだ。

窓を開けて空を見る。
曇っている。
じっとりとした生ぬるい空気が部屋に流れ込んでくる。
タバコの煙をゆっくり吐き出した。
吐き出した煙はすべて風に乗って私の方に帰ってきた。

私の人生ってなんだろう。


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