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ネイティブが「教えられること」と「教えられないこと」

鼻母音解説動画・第2弾を投稿したときの記事に書こうと思っていたことです。

▼前回の記事▼

▼鼻母音の動画▼
画像一緒ですね、ごめんなさい。

ネイティブの先生に対して反対や批判の意見を述べているのではなく、
「それぞれの得意分野がある」という趣旨で書いていますのでご理解ください。

私たちは「日本語」を知らない

動画でも話していますが、
私の鼻母音の解説を見てくださった
日本語とポルトガル語、両方できる日系ブラジル人の方に
「あれ(鼻母音)は日本人(日本語話者)じゃないと解説できない」
「ブラジル人は、既にnasalができてるから、何をどうやって伝えたらいいか分からない」
と言われたことがあります。

そうなんです。ネイティブは、母国語のことを何も知らないのです。

例えば目の前にブラジル人留学生がいたとして
「『私は』と『私が』はどんな違いがあるの?いつ、どうやって使い分ければいいの?」
「『おとうさん』と書くのに、どうして「おとおさん」と発音するの?どうやって見分ければいいの?」
と質問されたとして、文法的に納得できる解説ができるでしょうか。
その留学生が会話で困らないくらいの指導をしてあげることができるでしょうか。

おそらく、多くの人ができないと思います。
私たちは小学校で「『おとうさん』と書くけど『おとおさん』と読む」ことは教わっても、
「それがなぜか」までは教わっていません。
(これは、オ行の長音「ー」では「ウ」と表記する決まりがあるからだそうです。)

ネイティブの国語と、外国人の外国語

ネイティブの国語と、外国人の外国語は、
勉強する内容が全く異なります。

サンパウロ大学に留学していた時、日本語を専攻していましたが、
日本の学校で習わなかった内容ばかりでした。
よく覚えているのは、助詞の使い方や概念の理解です。
「確かに、こうやって解説しないと理解できないな」と心の底から感じました。
私が日本人だからという理由で、もし教卓に立たされても、何も解説することができなかったでしょう。
日本語学の教室で、私は「日本語のことを何も知らない日本人」だったのです。

逆に「右」と「石」の違いは「棒が出てるか出てないか」と教えることができます。
これは、自分たちも教わったことであり、
自分たちも失敗した経験があることだからです。
ネイティブでも「教えられること」と「教えられないこと」があります。

ブラジル人もまた「ポルトガル語」を知らない

私の母はブラジルでポルトガル語(文学部)を専攻していた日系ブラジル人ですが、
彼女のようにポルトガル語を専門的に学んでいないと、
「ポルトガル語の本質」まで辿り着くのは難しいのではないかと考えています。

そして、たとえポルトガル語を学んだとしても、
日本語の仕組みを知らなければ、
日本人がどのような思考回路で物事を考えているのかを知ることができないので
「相手の悩みが何か」「なぜ分からないのか」「どう伝えてあげればいいか」
を見極めることができません。

これは日本語とポルトガル語の「対照言語学」と呼ばれる分野で研究しないと見えてこないもので、
私はその「対照言語学」のようなものをを独学で研究している自称・言語学者です。

ネイティブじゃないとできないこと

逆に言うと、私は「ポルトガル語の会話」という内容を教えることが不得意です。
多少の会話はできますが、
ネイティブのように流暢ではありません。
知識や経験の不足も露呈しますし、
「ポルトガル語の思考回路」が乏しいため、気の利いた言い回しや、
ユニークなことを発言して会話を盛り上げることができません。
どれだけ訓練しても「生まれながらのブラジル話者」まで到達することは難しいでしょう。

逆に、もし私がブラジルに行ったとしたら、
日本語の教室で「日本語文法」を教えることはできませんが、
会話トレーニングをして会話力を上げるお手伝いはできます。

(それでも私の場合、言語学的な文法を知っていないと気持ち悪く、
生徒さんの「なぜ?」を解決できないことにストレスを感じてしまうので
会話を教えるにしても日本語文法の勉強をすると思います。)

こういうところは、ネイティブの強みです。
多くの方が知りたい・習得したいスキルは「会話力」なので
私のような頭でっかちな文法解説など必要なくても
ブラジルで生きていくことができます。
「知ってれば助かるな」くらいなので
私が教えていることはいわゆる「贅沢品」かもしれません。

日本語の先生にならない理由

Instagramでは、なぜか日系ブラジル人のフォロワーさんが多いです。
みなさん私のことを「日本語の先生」だと思ってフォローして下さいます。
「ポルトガル語を学んでいる日本人」の方に知っていただきたいので
少し悩んでいます。笑

時々、ブラジル人の方に日本語の質問を受けますが、
私は日本語のことを何も知らないので、
なんて答えてあげたらいいのか分からず
「先生」としては機能しません。

日本語教師になるには特殊な訓練が必要です。
2024年4月から国家資格になりましたが
資格を取るとなると、時間やお金をかけて
様々な条件をクリアする必要があります。

資格がなくても個人で教えることはできますが、
先程の「なぜ『おとおさん』になるか」など、すべての日本語の仕組みを解説できるような状態になっていないと、生徒さんの「なぜ?」を解消してあげることができません。

ですが私は、そのことに全く興味を持てないのです。
「日本語教師の資格」の本をいつも買おうと挑戦するのですが、
「これを習得するのか」と考えながら少し開いてみると
呼吸が苦しくなってきて、脂汗が出てきて、
「楽しくない」「興味が持てない」と感じて置いてしまいます。
すごい拒絶反応です。
これを20年くらい繰り返しています。
「雑学の読み物」として楽しむことはあっても、
私が「日本語の先生」になることはおそらくないでしょう。

あくまでも「ポルトガル語」好き

「ポルトガル語解説の役に立つかも!」という内容の日本語学だと
血眼で飛びつきます。
日本語の音声学の本も2冊持っていますし、
もう1冊、欲しい本があります。

だから「日本語の「ジ」とポルトガル語のgやjは違う&どのように違うかを知ってる」とか
「日本語の『ン』は6種類ある」とかは知っています。笑
ポルトガル語を教える際に関わってこない他の文字のことは知りません。

偏っていますし、
事情を知らない方からは「日本語も教えられるようになればいいのに」と気軽に言われたりしますが、
苦痛なことをしてまで人望や収入を得たいとは思いません。
自分が可哀想です。
人の役に立つチャンスを見逃すようにも思えるのですが、
自分が苦痛を感じる不得意な分野が
果たして「誰かを幸せにしてあげる」ことに繋がるでしょうか。

𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣
今日は私の個人的な考え方や感情のシェアでした。
お読みくださり、ありがとうございます。

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
私のレッスンでは、
・発音矯正
・音声学に基づいた「日本語のクセ」と「ポル語の特徴」の解説
・「ポル語グルーヴ」のブラジル音楽への落とし込み方
などを教えています。
YouTubeでミニ講座を投稿している他、オンライン無料レッスンも行っています。
ご興味がある方は是非YouTubeチャンネルHPをご覧ください.*˚✩
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✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
【ブログまとめ本】
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話3』

【ボサノバ発音解説本】
『「イパネマの娘」発音・文法・歌い方解説』

Kindle Unlimited会員(サブスク/月額会員)になると、上記の本は無料で読めます。

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