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感情と記憶について

この物語は
ミスターセンクスの作品
「酔いと記憶について」の続編である
いやアンサーソングとも言えるかもしれない

朝起きたら知らない天井が見えた
いつもと違うシーツの肌触り
いつもと違う位置にある窓から
日差しと小鳥のさえずり
一番異なる点は
知らない男性が隣にいること

少ししてから全貌が見えてくる
私は彼の家に持ち帰られたのだ
乱雑に散らかった下着たちを見れば
昨日はお盛んな夜だったのだろう

いや待って
昨日は久々に酔ってしまったから
あまり記憶がないのだけれど
断片的に昨日のことを覚えている

クラブで彼が倒れ込んできたこと
連れて行かれた2軒目の店が
ゲイバーであったこと
彼が酩酊していたので
仕方なく家まで送ってきたこと

でも彼の家に入ってから
そこからの記憶が全くない

断片的な記憶がどのようにできるか
昔どこかで調べたことがある

アルコールは海馬を麻痺させて
新しい記憶が覚えられなくなる
これが酔いによる記憶障害

でも私のように断片的な記憶がある
そういうこともよくあったりする
その場合海馬は一部が麻痺している
シラフの時には敵わないけれど
少しは覚えることができる

記憶領域が限定的になった時に
何を覚えるのかということ
それは感情との関わりが深い

つまり印象的なことは覚えていて
そうでないことは捨てる
いつもより記憶のキャパが少ないから
断片的な記憶だと感じるようになる

一式回想を終えた私は
すぐに家を後にした
彼とはもう会わないつもりだ

印象的なことは覚えているはずなのに
彼とのセクロス行為については
一切覚えていなかった

気付いてしまったのである
つまり忘れてしまいたいほどひどい
どうでも良い事実だったことを

気持ちでは嘘をつけても
心は正直だ

私は玄関を出る時
彼にこう言い放った

そのポークビッツじゃ
私を満足させることはできないわ

って覚えてるんかい!!!

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