証拠
決定的な終わりを作らず
「またね」
と、いつの間にか消えていく。
傷付かない。
思い出して胸が少しだけキュッと掴まれる位。
あの人とお互いの気持ちを
確かめ合ったことはない。
ただの一度も。
2人の関係に確かなことは何もない。
そのことだけが確かなこと。
あの人の望むことは声を聴いてるだけで分かる。
私の望むことは何も言わなくても分かってくれる。
心の波長を合わせることができる。
でも、合わさった心の波長の先は見ない。
波長を合わせるのはその瞬間、その数々の瞬間だけ。
「本当にそんなことがあったっけ・・・」
夢と現実の区別がつかない時間。
「あの時間をもう一度」
そう願っても、夢には戻れない。
気持ちを言葉にしなければ
その時間が「現実」だという証拠は何もない。
私もあの人も「証拠」を残さなかった。
それでも、確かに、
ぬくもりと安らぎを感じることができた時間。
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