【前編】建築学生・若手設計者向けイベント「建築って大変だけど、面白い!(A.talk vol.2)」を開催しました。
こんにちは。
建築設計者のための求人サイト A-worker運営スタッフの大塚です。
2022年10月7日に建築学生・若手設計者向けイベント「建築って大変だけど、面白い!(A.talk vol.2)」をYouTubeライブ配信にて開催しました。
当日の動画をご視聴されたい方はコチラから(YouTubeに移動します)。
テキストをご希望の方は以下からご覧下さい。
当レポートは、前編と後編に分かれています。第2部の内容は後編をご覧ください。
■開催の経緯
さまざまな“出会い”や“きっかけ”から建築に魅了された建築人たち。
しかし、日々の設計や勉強に追われて「建築が好き」という気持ちがわからなくなってしまっている方々も目にしていました。
このまま建築の世界にいることが、自分の幸せなのだろうか。
「建築が好き」という気持ちだけで、将来続けていけるのだろうか。
そんな思いを持つ建築学生や若手設計者に向けて、建築に熱中している建築家の話を届けたい。不安が少しでも解消して「建築って大変だけど、面白い!」とあらためて感じられるきっかけをつくり、将来の希望につなげてほしい。
そんな想いで、今回のイベントを企画しました。
今回のイベントは、一級建築士事務所 株式会社 カクオ・アーキテクト・オフィスの松村氏にご登壇いただきました。
代表である松村氏が、高松伸建築設計事務所、大阪工業大学 建築学科講師を経て、1997年に設立されたカクオ・アーキテクト・オフィス。
京都を拠点に「人間力とセンス」を武器にしながら、住宅やオフィス、医院、店舗、内装デザインなど、スケールを横断しながらものづくりに取り組まれているアトリエ設計事務所です。
松村氏は、面白いコトと癒やしを求めて行動する達人。プロジェクトに潜む「問題点」を解決することが、デザイナーの社会的役割であると考え、お施主様、施工会社とのコラボレーションから未来に向けた上質な建築空間を導き出しておられます。
当日は、配信会場である京菓匠 笹屋伊織 別邸(ホテルエミオン京都1F)の写真がふんだんに使われたオープニングムービーからスタートしました。「非常に楽しみにしていました」と気合十分の松村氏。当日準備されたスライドはなんと160枚!アトリエ事務所の面白さを余すことなく伝えたい、という強い想いを感じながら第1部の幕が開けました。
■人生は「オモロイ」かどうかで考える
第1部のテーマは「アトリエ事務所で働く面白さとは?-働き方改革と、働きがい改革-」。まず「働く」ってどういうこと?を整理していきます。
松村氏は「良いデザインは、良い(働く)環境から」というお考えのもと、2019年から始まった独自の「働き方改革」を通して、充実した人生を過ごすための勤務環境をつくられています。
「一番大事なことは『一度しかない人生をどう生きるのか』。働くことは、生きることとも言える。常に意識しておいてほしい」と話す松村氏。充実した豊かで幸せな人生を送るために「人生は『オモロイ』かどうか」で考えるのがコツだそう。(「オモロイ」=関西地方の言葉。「面白い」の意)
自分が面白いと感じることを選ぶ、つまり「自分の考え方の軸を持つ」ということ。
コップに半分入った水を「半分しかない」と考えるのか「半分もある」と考えるかは自分の捉え方次第です。同様に「アトリエ事務所は激務で薄給」という視点で見るか「デザインをはじめとする幅広いスキルを磨け、大きく成長できる」と見るかで選択は変わってきます。
物事にはすべて矛盾があり、その「バランス」の中に、目指すべき本質やビジョンがある。白か黒、正か誤かではなく「迷ったら、オモロイと思った方に行く」。「オモロイ」と感じられるバランス感覚(考え方)が人生を選ぶセンスになるから、あらゆるセンスを磨く。それがあなたの輝かしい人生にとって良いと思います、と松村氏は力説されていました。
■キャリアも「自分の軸」で選ぶ
続いて、アトリエ事務所と大手組織事務所の違いにも触れていきます。
キャリアも「自分の軸」で選択できるよう、普段から人の意見からではなく自分の目で見極めること、そして自分のことを深く理解しておくことが大事とお話されていました。
「会社員として勤めておられる方は、基本的には恵まれていると思うんです。環境に恵まれているのに、足りていないことばかり見ている。会社も、過酷な中で社員のことを考えて、なんとか給料を確保して頑張っているところは知ってほしいですね」という言葉からは、経営者としての苦悩も感じられ、あらためて「足るを知り、感謝する」ことの大切さを思い出しました。
■「大変」+「オモロイ」=「働きがい」
第1部も終盤となり、松村氏は日経ビジネス2021年11月15日号に掲載されていた「働きやすさ」と「働きがい」の推移に関するグラフについて言及していきます。
「働き方改革」が叫ばれしばらく経った今、長時間労働などが改善し、誰もがイキイキと働ける職場環境になったはずでした。なのに、なぜか「働きがい」は減少しています。
それは「労働時間が減るも生産性は上がらず、やることは増える」ことに加え、スキルが身についておらず、もっとアグレッシブに経験を積みたいと思っている若手へのストッパーにもなっている。これは建築業界の若手にも関係のあることだと松村氏は語ります。
「そこでも、社会が悪いとせず、自分の軸で考えてほしい。会社は『働き方改革だから』と言うかもしれないけど、自分の輝かしい未来を考えたときにそれでいいのか?と言いたい。会社は守ってくれないですから。自分の人生は、自分で構築していくべきだ」と再度「自分の軸」の重要性に触れられました。
では「働きがい」はアトリエ事務所でどのように叶えられるのでしょうか?
もちろん「働き方」も大切です。昔は「やりがい」しか選択肢のなかったアトリエ事務所ですが、今は「やりがい」と「待遇」のバランスが取れてきているところも増えてきました。
それに加え「お客様からもらえる『ありがとう(心の報酬)』」が得られることの幸せや、大変だけど、新しいものを生み出せるアトリエの社会的役割も働きがいにつながるとお話されました。
「『大変』と『オモロイ』はセットと覚えてもらいたいです。『楽ちん』で『オモロイ』はない。『大変』を超えたとき、めっちゃオモロイやん!と感じます」と熱弁される松村氏。
ですが、まだ働いたことのない学生さんや、まだ仕事でやりがいを感じられていない若手設計者の方々は「大変」と「オモロイ」が共存するものだなんて、あまりピンとこないのではないでしょうか。どうしたら「大変だけど、面白い」を体感できるのでしょうか?
「夢中になれることを探してください。わかりやすい現象で言うと、時間を忘れる。気がついたらもう2時間も経っているとか、何時間もやっていたけど、終わってなんかスッキリした!というプラスの感覚があるときは、やりがいを感じていると思ってください。いろんな業務がある中で、夢中になってできるものは、自分に合っているということ」。自分を客観的に見て「大変だけど、時間を忘れるくらい熱中できること」を見つける。それが「建築って、大変だけど面白い!」と思えるやりがいにつながってくると答えをいただき、すべてが腑に落ちた感覚になりました。
【レポート後編(第2部)】へ続く
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