「1日目 玉こんにゃく」~おいしい山形旅行日記~
2021年11月。友人と一緒に4泊5日の山形旅行に行ってきた。山形は、評判にたがわず「おいしい」県だった。今回は、そんな山形旅行のお話だ。
山形って何がある?
「山形行きません?」
ある日友人に誘われた。行きたい! と一つ返事で答える。コロナが一段落した11月のことだ。
ところで、山形って何があるところなんだろう。お米と芋煮のイメージぐらいしかない。調べてみよう。すると気になる言葉が見つかった。
「おいしい山形」
しかもHPまで作る力の入れよう。
ほほう。おいしいもの。どんなものがあるんだろう。じゅるり。でもこんなにハードルをあげちゃっていいのかい。
よし、決めた。今回の旅行のテーマは「おいしいものを食べる」だ!
秋田を食べながら山形へ
朝6時。羽田空港に降り立つ。友人と集合し準備は万端。時間ができたし、朝ごはんを食べよう。
気になるものと目が合った。
実は昨年、秋田県に行った。おいしかったなあ。気づいたらレジに向かってた。
山形ごめん。秋田の食べ物おいしいんだよ。
中身の考案者は高校生らしい。ふたを開ける。おっ。右下にちょこんとたたずんでるのは「いぶりがっことクリームチーズ」じゃないか! 「高校生、わかってるねえ」と心の中でガッツポーズ。いぶりがっこチーズ、食べたことない人はぜひ試してみてほしい。マジでうまいよ。
山形に降り立つ
弁当も食べ終わり、飛行機に乗る。「3分に一度空気が全部入れ替わります」と通気性をアピールしていて、これが新しい生活様式ってやつか。
空を飛ぶと山形はあっという間だ。あれまと思う間に到着。タラップを降りると、そこには観光ポスターが山盛り。
さくらんぼ。米。日本酒。そば。
やっぱりヤツはやる気だ。おいしいものを食べさせてくれる気満々だ。受け止めてやろうじゃないか。わくわく。期待が高まっていく。
レンタカーに乗り込む。さあ出発だ。
山寺へ行こう
ちなみに、今回の旅行は全部友人が準備してくれている。マジで頭が上がらない。最初の目的地は「山寺」という場所。
車でどんどん道を登っていく。だんだん険しくなっていく。ふもとに到着した。行き先には険しい山。
説明を読む。ふむふむ。この先階段が1000段以上あり、登っていくと煩悩がなくなると。なるほど。今考えてる煩悩といえば、おいしいものを食べるって気持ちか。果たしてなくなるかな。まあ、行ってみましょう。
本当に煩悩が消えていく
すぐに汗ばむ。上着を脱ぐ。たしかに大変だ。でも、悪くない。
まっすぐ生えた杉の木。石をくりぬいて造られた古い石像。何十メートルも垂直にそびえる苔の岩。景色に圧倒される。人は無力だ。でも、この空気感、好きだ。
とはいっても足は重くなる。景色を眺めていた目がだんだん坂を向くだけになる。ひたすら足を動かす。無心だ。あれ? 今、煩悩が減っているじゃないか。
頂きに着いた。
「おおー」
思わず声がもれる。
山にカラフルな絵の具を散らしたように色づいた山。谷間にぽつぽつと連なる家々。逆光に映える東屋。険しく連なる岩々。とにかく絵になる。これが映えってやつか。水墨画の作家が描いてそうなこの風景。
これからは、正しく生きよう。煩悩はなくなった。悩みは今左足が吊りそうなことぐらい。
ありがとう、おかげで清らかな心になった。さあ、このまま降りよう。
おかえり、煩悩
階段を降りる。硬貨が大量に挟まっている岩に手を合わせ、石碑の歴史に思いをはせる。山寺、いいところだったなあ。静謐な気持ちで足を運ぶ。
階段の入口に着いた。あとは駐車場に戻るだけだ。
「玉こんにゃくいかがですかー?」
ふと、耳に入った。しかし煩悩を捨てた身。ここはスルーだ。
と思ったら、友人が食べ始めた。それなら付き合いで買いますか。そう、これは自分のためじゃなくて友情のため。あと、こんにゃくはカロリーないからセーフですということで。
ほくほく湯気があふれる茶色いこんにゃく。ちょこんとそえられた黄色い辛子。どうなんだろう。
正直に言おう。こんにゃくはそこまでおいしいと思ったことはないし、辛子を自分から使うことはない。買ったはいいけど、これ本当においしいのかな。
くにゃり。歯を立てるとぷるんと口内に飛び込んでいく。
「うそだろ……」
声がもれた。奥までしみ込んだ醤油のうまみ。出来立てのアツアツ感。そしてプルプルの食感。すべてが調和し、ホワイトホールが生まれた。こんにゃくって、こんなにうまかったんだ。さらに単調になりがちなところに辛子の刺激が見事な色を添えてくれる。
山形、なめていたかもしれん。こんにゃく一つをここまでおいしいものに仕立て上げるとは。「おいしい山形」は本当だったんだ。
おかえり煩悩。山形の食べ物、もっといろいろ食べてみたいぞ。
山形の中心を観光しよう
山寺を離れる。次の目的は山形駅近く。
行った場所は「文翔館」に「旧済生館」。どちらも歴史のある建物で、内部が資料館になっている。しっかり山形の勉強ができた。
ここ山形は、主に明治時代から発展した街らしい。近代化のために西洋風の家を建てた結果、直接西洋技術を学ぶのではなく、西洋建築の真似をして造られた「擬洋風」の建物が生まれた。
ほえー、また一つ新しいことを知った。和洋折衷の建物は大好きだ。また一つ、好きな世界が広がった。
ここのスイーツもなかなかだった。プルーンジュースの濃厚さよ。
明日も楽しみ
泊まる予定のビジネスホテルに到着した。近くの蕎麦屋で夕食をすませる。ちなみにここのそばはいい意味で普通だった。普段食べないいいものばっかり食べてたから、慣れ親しんだ味に安心する。
ホテルに戻り地図を広げる。
実は明日、友人と別行動の予定になっている。せっかくだし100%自分の趣味で街歩きをしてみようかな。街歩きのテーマはどうしようかなあ。地図をながめどこに行くか考えるだけで時間がすぎていく。
これでまだ1泊目。全工程の五分の一。これからとんでもなく濃密な日々になりそうだ。明日はどんな食べ物と出会えるかなあ。
おやすみなさい。
(「2日目 辛味噌ラーメン」へ続く)
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