アニマルコミュニケーターを通して、16年一緒に暮らす猫と話してみた①

「もう、消えてなくなりたい」
毎日、こう思い、泣いた。
連続で眠れる日が、3時間という日が1年ほど続いていた時だった。

16年間一緒にいる猫が、夜に叫ぶ。
1回の時もあれば、3回の日もある。
熟睡している時に暴走族が近所を走り回るような迷惑さ、うるささ。

「毎日毎日夜中に叫ばれて、眠れません。獣医さんにも相談して一時は良くなったけれどまた叫び出して...。もう、一緒に暮らすのは難しいと思ってます」

「猫ちゃんは、お子さんが寝た後、あなたと2人だけで特別な時間を過ごしたいと言ってます。鳴くのは、腎臓の調子が良くなくて混乱しているからね」
動物と話せる、アニマルコミュニケーターからの回答はこうだった。

初めての子が産まれて半年。少し広い家に引っ越した。
2週間ほど経ったある深夜
「んなー！！！！！！　んなあああーーーー、うんんんああああーーー！」

思わず飛び起きた。
隣で寝ていた夫も起きた。
同じ部屋では、娘が寝ている。
ひそひそ声で

「何この音」
「わかんない」
「ドラミは？」

いつも私の横で寝ている猫がいない。
探しに行くと、リビングのテーブルに乗り、叫んでいた。

そんな日が、毎晩続いた。
夫は育休を利用して、3カ月集中のキャリアアップスクールへ通い始めた。朝から夜中まで帰って来ない。
寝不足のまま、赤ちゃんの面倒を見る毎日だった。

朝7時に起き、娘に授乳。夫のコーヒーを淹れる。ドラミに朝ごはんをあげ、夫は学校へ向かう。

その後洗濯をし、お昼ご飯の用意を始める。
歯が生えて来た娘は、離乳食を食べるようになった。
離乳食は野菜を蒸してピューレにしたりと工程が多く、作るのに1時間ほどかかってしまう。

「はい、あーん」
出来上がったフードを食べさせる。
彼女はまだスプーンを持つことが出来ないので、ひとさじずつ口に運んでいく。

出てきたものが気に入らないと、突然頭を振ったり手を振り回す娘。
小さいゴジラにしか見えない。
この日はスプーンが弾かれた。
部屋の中に飛び散るほうれん草のピューレ。
「うわあああん！」と泣き始める娘。
寝室で「んなあああーーーーーお」と叫び始める猫。
安心安全なはずの家が、工事現場のような騒音を出すとても嫌な場所に変わる。

うるさい。
うるさすぎる。
眠くて脳みそが思うように動かない中、緑色のしぶきが飛び現代アートのようになった壁や床を拭く。
私、何やってるんだろう。
何でこんなことしなきゃいけないんだろう。
泣きながら、離乳食を片付けた。

疲れ切って、
「今夜は眠れますように」と祈りながら眠りにつく。
そして、猫は毎晩叫んだ。

娘がお昼寝をしている合間に寝ようとしても、一睡も出来ない。
何に対しても、感情が湧かない。
娘に対しても、ドラミに対しても、夫に対しても。
ロボットってこんな感じなんだろうか。

ただただ、機械的におむつを替え、授乳し、家事をする。自分の食事を作る気力はなく、娘の余り物を食べた。おなかがすいたとも感じなかった。

この状況から逃げたい。
とにかく眠りたい。
それしか考えられなかった。

「帯状疱疹ですね。ストレスでなることが多いんだけど…。誰か育児を手伝ってくれる人はいる？安静にするのが一番なの」
背中に刺すような痛みを覚えて受診した皮膚科で、女医さんはそう言った。

「…誰もいません」

「旦那さんは？　この病気は痛いしちゃんと治さないと再発するわよ。お休み取ってもらって。とにかく休むこと。寝ないと治らないから」

薬局で薬を待っている間、夫に連絡をした。
「帯状疱疹っていう病気だった。安静にしないと治らないそうなので、今週休み取ってあの子の面倒見てくれない？　1日でいいから」
3時間ほど経って、送られてきた答えは
「卒業プロジェクトの詰めがあるから休めない」
だった。

どうしたらいいんだろう。私、死んだほうがマシなんじゃないか。
誰も助けてくれない。
もう、嫌だ。
育休から復帰した仕事にも集中出来ない。
16年間毎晩一緒に寝て、毎日「かわいい」と写真を撮っていた猫のことも、かわいいと思えなくなった。こいつが鳴くから眠れない。その思いしかなくて、ドラミが何か言ってきても無視していた。

動物の行動心理学を学んだ獣医さんのカウンセリングを受けたり、アメリカの猫専門家のYouTubeも見たし、本も読んだ。

すべての部屋に猫のフードと水を置く、爪とぎを設置する。ご飯を食べる前に遊ぶ。彼らが推奨したことはすべてやった。けれど、彼女は叫び続ける。

猫の譲渡を受け付けるNPOのサイトを見たり「誰か面倒見てくれないかな」と話したりして、手放す方向へ気持ちは動いていた。

続きます

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